懲役刑に免許取り消しも! 2020年“あおり運転”厳罰化でどうなる!? 道交法改正を徹底解説
- 筆者: 渡辺 陽一郎
2019年のクルマ関連ニュースを振り返ると、“あおり運転”に関する話題が多く扱われた1年だった。2020年には道路交通法の改正案が国会に提出される見込みで、あおり運転に関する法整備も一気に進むようだ。あおり運転厳罰化の詳細について、カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎氏が解説する。
>>大阪府警の「ユニーク過ぎるあおり運転防止キャンペーン」とは[画像で見る]
2020年も注目される“あおり運転”に関する動向
2019年は、例年にも増してクルマに関するニュースが多かった。高齢ドライバーによる交通事故、あおり運転の末に発生した暴行事件など、暗い話題も少なくない。ドライバーが注意深く運転することはもちろん大切だが、車両の安全装備を充実させたり、事故の発生しにくい道路/交差点の形状に改めるなど、多角的な対策が求められる。
これらのクルマに関する話題の中で、特に問題視されたのが“あおり運転”だ。
過失が原因の交通事故とは異なり、あおり運転は故意に基づいた“犯罪行為”だ
交通事故は基本的に過失に基づいて発生するが(高齢ドライバーの交通事故は蓋然性[がいぜんせい:確実性の度合い]が高いとはいえるが)、あおり運転は完全な故意に基づく。過失では発生しない。
2017年には東名高速道路上において、あおり運転による痛ましい死亡事故が発生した。加害者があおり運転を繰り返した後、追い越し車線上で被害車両の前側に割り込んで停車し、乗員に暴行を加えた。この後に大型トラックが被害車両に追突し、乗員2名が死亡、2名は負傷している。また2019年8月には常磐自動車道であおり運転を繰り返し、相手車両を停車させてドライバーに暴行を加える傷害事件が発生した。同年9月には、東名高速道路を走行中、相手車両にエアガンを発射する事件もあった。
あおり運転、2020年1月現在の法律ではどう裁かれる!?
現在の法律では、あおり運転によって相手を死傷させた時には危険運転致死傷罪などを適用できるが、あおり運転自体を対象とする規定はない。そのために東名高速道路を走行中にエアガンを発射した事件でも、逮捕された時の容疑は車両に関する器物損壊罪であった。書類送検する段階で、道路における危険行為(道路上の人や車両等を損傷させる行為)も加えたが、あおり運転をしただけでは取り締まりが難しい。
強いて挙げれば“車間距離保持義務違反”がある。同一の進路を走るほかの車両の直後を走行する時は、直前の車両が急停車した時でも、追突を回避できる距離を保たねばならない主旨だ。あおり運転をする時は先行車に接近するから、この違反を適用できるが、軽微な部類に入る。違反点数と反則金は、一般道路が1点/6000円、高速道路でも2点/9000円にとどまる(普通車)。車間距離保持義務違反が想定するのは、過失に基づく先行車への接近だから、恐怖心を与えるためのあおり運転とは本質的に違う。危険性も大幅に異なる。
警察庁では悪質なケースでは“運転免許の停止処分”についての言及も
なお警察庁のWebサイトではあおり運転について、上記の車間距離保持義務違反のほか、進路変更禁止違反、急ブレーキ禁止違反等の道路交通法違反、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)や刑法の暴行罪に該当することがあるとしている。さらに「“自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき”には、危険性帯有者として、点数制度による処分に至らない場合であっても運転免許の停止処分が行われます。」とも記している。
懲役刑に免許取り消しも! いよいよ2020年に道交法にあおり運転の規定を追加する方針へ
これらあおり運転の事例を受けて、警察庁は道路交通法に「あおり運転」を新たに規定する方針を固めた。具体的な罰則はまだ決まっていないが、2~3年の懲役刑を想定している。違反点数も15点以上になりそうだ。
従ってあおり運転をしただけで、運転免許が即座に取り消される。運転免許を再び取得できるまでの欠格期間も、1年以上は設けるという。2020年の通常国会に、道路交通法の改正案を提出することになりそうだ。
余談だが、大阪府警があおり運転の防止を呼びかける動画(https://youtu.be/RyzBbMTw8Yg)を作製したが、その内容はアオリイカが「あおり(運転は)イカん!」と怒っている低俗なもの。あおり運転は死亡事故を誘発する危険な犯罪だから、ダジャレは不謹慎に思える。
大阪府警の“啓蒙”動画より
あおり運転の立証には証拠が不可欠! ドラレコ装着は基本中の基本だ
あおり運転を対象とした法律の運用では、あおり運転の発生を立証することも不可欠だ。先に述べた通り罰則も重いため、取り締まりを行う警察車両やヘリコプターなどから、動画で撮影する必要も生じるだろう。
またあおり運転は、相手車両に対する加害性を伴う犯罪だから、単独の速度違反などとは異なり常に被害者が存在する。ドライブレコーダーの映像などを証拠として、被害者が犯罪の発生を申告可能にする必要もあるだろう。そうしないと、あおり運転の被害に遭い、恐怖を感じたドライバーや乗員を救済できない。
証拠とするには、相応の能力を備えたドライブレコーダーも求められる。エスカレートすると、ドライバー同士が互いの運転を監視し合うような状態にもなりそうだ。
そもそも大事なのは“あおられない運転”と道路行政の根本的な見直しにある
円滑な交通のためには法定速度の基準もさらなる見直しが必要
最も大切なことは、安全意識の向上にある。すべてのドライバーが事故に結び付く危険を排除しようと考えれば、あおり運転も必然的に消滅する。そのためには、道路行政から見直す必要があるだろう。
例えば高速道路を走っていると、交通の流れと照らし合わせて、制限速度が極端に低い区間もある。最高速度60km/h規制区間などがそれだ。制限速度は守らねばならないが、実際の平均速度と格差がありすぎると、無視するのが当たり前になってしまう。現実的な速度を設定して、なおかつ道路環境に応じて細かく速度を変化させ、遵法意識を高める工夫も必要だ。
あおり運転されないためにドライバーが意識すべき重要なこと
またあおり運転が犯罪なのは当然だが、我々ドライバー側にも防ぐ手段は多岐にわたる。
高速道路の右側車線は追い越し車線だ。追い越しを済ませたら、左側の走行車線に速やかに戻るのは当然のこと。そんな当然のルールもあまり守られているようには思えない。追い越し車線にいつまでも居座ること自体、“通行帯違反”として取り締まりの対象になるのをお忘れだろうか。違反云々の前に、後ろからさらに追い越したい車両の交通を妨げ、自ら“あおられる”対象となってしまうかもしれない。
あおり運転の厳罰化は有効だと思われるが、根本的な解決方法ではない。「あおりたい」欲求を根絶することを考えたい。
[筆者:渡辺 陽一郎]
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「海外でも、あおり運転は社会問題になっているのか?」
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