子供が嫌がるからチャイルドシートしない?ジェットコースターに乗せる時でも同じことできますか?

チャイルドシートの装着は、基本中の基本!

夏休みが終わっても、まだまだレジャーシーズンは終わらない。9月・10月には連休があり、暑さもやわらいで美味しい農作物も実りの時期と、レジャーを楽しむにはむしろうってつけのシーズンを迎えている。子どもたちにせがまれて、ぶどう狩りなどに出かけるファミリーも多いことだろう。 そこで今回はいま一度、子どもを乗せてドライブする時の基本中の基本、チャイルドシートの重要性について一緒に考えて欲しいと思う。

>>この笑顔を、この寝顔をあなたは危険にさらせますか(画像22枚)

想像していますか?それは大惨事につながる行為ですよ

夏の間、前を走る車内で子どもがウロウロと歩くシルエットがみられたり、運転席と助手席の間から子どもが顔を覗かせたまま走っているミニバンなどを見かけ、胸が痛んだ。あの瞬間もし、後ろから追突されたり、何か障害物があって急ブレーキを踏んだりしたら、あの子どもは吹き飛ばされてフロントガラスに激突し、大怪我を負ったことだろう。最悪の場合はガラスを突き破って車外に放り出され、ほかのクルマに轢かれるなどの大惨事になっていたかもしれない。

大人にはシートベルト、子どもにはチャイルドシートが命を守る

「スピードを出していなければ大丈夫だろう」などという考えは甘い。

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)のトレーニングでは、大人が赤ちゃんを抱っこしたまま後席に座り、10km/hの低速で走るクルマが急ブレーキを踏んだらどうなるかを体験してもらうコーナーがあるが、ほぼ全員がブレーキの衝撃で赤ちゃんを落としたり、放り出してしまう。もちろん赤ちゃんはダミー人形を使用しているが、皆一様に「もし人形ではなく本当に自分の子どもだったら」と考えてゾッとした表情をしている。

これが40km/hの速度になると、壁などに衝突したときには体重の約30倍の衝撃が発生する。体重60kgの大人なら約1.8t、体重10kgの子どもでも約300kgだ。これではとても自分の腕の力で支えられるはずがないことは明白。吹き飛ばされてフロントガラスを突き破る、という状況もあり得ると想像できるのではないだろうか。

だからこそ、大人にはシートベルト、子どもにはそれに代わるチャイルドシートが命を守る重要な役目を果たすことになる。にもかかわらず、チャイルドシート使用率は未だ66.2%にとどまっている(警察庁・JAF合同調査/2018年)。6歳未満の子どもには道路交通法でチャイルドシートの着用が義務付けられているが、年齢層別では1歳未満が84.4%と高いものの、1歳を過ぎると4歳までが67.9%と急落し、5歳では44.1%とさらに下がる。

ジェットコースターに子どもを乗せる時にも、安全ベルトなしで乗せますか?

なぜ使わないのか? その理由は「子どもが嫌がるから」「ちょっとそこまでだから」「高価だから」「取り付けが面倒だから」という声が多く聞かれる。

でもそんな保護者の皆さんに問いたいのは、「では、遊園地でジェットコースターに子どもを乗せる時にも、そんな理由で安全ベルトなしで乗せますか?」ということだ。

遊園地のスタッフに「子どもが嫌がるからベルトしなくていいですか?」なんて話は通用しない。「2分くらいですぐ戻ってくるんだから、しなくていいでしょ」なんて言う親もまずいないだろう。ジェットコースターはスピードが出るから危険、というのがわかりやすいからみんなベルトを締める。

でも実は、クルマに乗る時もそれと同じ状況なのだと認識して欲しい。高速道路に入ればスピードだってジェットコースターより速い。そんな乗り物にチャイルドシートなしで子どもを乗せるなんて、もはや殺人未遂に等しいと言っても過言ではないと私は考える。

また、1歳を過ぎるとチャイルドシート使用率が大幅に下がる理由について、0歳の頃から比べたら、1歳児は自分でおすわりができ、歩くこともできるようになるため、「もうしっかりしてきたから、大人用のシートベルトだけでも大丈夫だろう」という安易な判断があるのではないかと思う。でもそれは大きな間違いだ。

大人用シートベルトは身長140~145cm以下では安全が担保されない

3点式シートベルトを発明し、今も安全性を最優先するクルマづくりに定評のあるスウェーデンの自動車メーカー、ボルボが発表した研究結果では、第一に子どもの骨格のもろさを挙げている。

例えば成人男性の頭の重さは全体重のわずか6%だが、生後9ヶ月の赤ちゃんでは25%にもなる。その重い頭を支えなければならない頸部(けいぶ=首の部分)は非常に貧弱な状態で、とくに頚椎(けいつい)の軟骨部は、生後3年をかけて徐々に骨化し、強化されるには思春期までかかる。首の筋肉と靭帯の発達にも長い時間がかかるという。そんな状態の1歳児を、大人用シートベルトで衝突の負荷から守ることは難しい。

さらに、大人用シートベルトは身長140~145cm以下では安全が担保されないと記載されている車両もある。つまり5歳、6歳になっても身長がそれより低ければ、シートベルトの性能は発揮できないということ。この場合はチャイルドシートの中でも身長100cm/体重15kgを超えたあたりからの子どもが使用することを前提とした、ジュニアシートを使用したい。

本当の親の愛情とは

スピードを出さなくても、ちょっとそこまでの距離でも、子どもの命を守りたいならばチャイルドシートは絶対に必要だ。

手間がかかると言っても、装着時間なんてほんの2~3分のこと。子どもが嫌がって泣いたとしても、命を落とす悲しみを思えばそんなことはガマンできるのではないだろうか。子どもが泣くからとチャイルドシートに乗せないのは、親の愛情なんかではない。

泣いても嫌がっても、子どもを守るために心を鬼にしてチャイルドシートに乗せ、休憩をこまめに取りながら子どもの負担を減らしてあげることを考えるのが、本当の親の愛情だと私は思う。

[筆者:まるも 亜希子]

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まるも 亜希子
筆者まるも 亜希子

大学卒業後、編集プロダクション株式会社エディトリアル・クリッパーに就職、自動車雑誌「ティーポ(Tipo )」の編集者として6年間勤務。2003年にフリーランスとして独立。現在は雑誌やウェブサイトの自動車関連記事に出演・寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

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