フランクフルトMS 2009“私の注目車種はこれだ!”/河村康彦
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:菊池一弥/メーカー各社
プジョー bb1
近未来での実現の可能性を匂わせるものから夢物語に過ぎないと思わせるものまで、“玉石混淆”のコンセプトカーに多数の量販予定車と、予想を上回る豊作ぶりを見せた今回のフランクフルトモーターショー。
そうした中にあっても異彩を放ったのが、事前情報ナシのサプライズ出展となったこの1台。
前後オーバーハングが殆どゼロで全長2.5mというデザインは、スマートに対するプジョーからの対抗馬!?と思ったら、何とこのモデルは「4輪なのにクルマじゃない」んだとか。
実際、キャビン内に用意されたのは、シートではなくてまるでモーターサイクルのような左右2列の“タンデム・サドル”。
ステアリング・ホイールの代わりにバーハンドルが用意されるので、すなわち運転者もドライバーではなくて“ライダー”というノリ。
「4輪のモーターサイクルだから、シートベルトも敢えて付けないのかな?」と思ったら、インテリア写真を良く見てみると、ラップベルトだけは用意されているらしく。でも、舞台上で乗り降りのデモンストレーションを繰り返すモデルさんたちは、そんなものは装着していなかったけれど。
というわけで、もちろん市販化については何のコメントもないものの、これは「絶対にスマートの真似はしない!」という強烈なメッセージが感じられるプジョーの意欲作。そんなこのモデルは実はEV・・・という話題を抜きにしても、単純に面白いじゃない!
フォルクスワーゲン ポロ ブルーモーション
VWブースの主役は、実は電気自動車なんかではなくてディーゼル・エンジン・・・というのは別コラムでも紹介した通り。
それを肌身に感じさせたのが今回のポロ、ゴルフ、パサートという基幹モデルにおいて発売が発表された、最新の“ブルーモーション”シリーズ。
中でも、その目玉的存在がポロのブルーモーション。
欧州モードでのCO2排出量は87g/kmに過ぎず、これはスマート(800ccターボディーゼル)の88g/kmやプリウスの89g/kmというデータを破って、現在のところの世界チャンピオン!
当然、燃費も素晴らしく、その値は30.3km/L。すなわちヨーロッパ式表記では3.3リッター/100kmとなり、ひと昔前には夢物語と思われた“3リッターカー”を何とごく一般的なベーシックカーで実現してしまった事になる。
もちろん、そんな優れた通信簿の獲得には秘密があって、新開発の最高75psを発する1.2リッターのターボ付き3気筒コモンレール・ディーゼルエンジンにはアイドリング・ストップシステムや回生ブレーキが加えられ、各部に専用のリファインが図られた“エアロボディ”も採用。
いずれにしても、現在のVWがBMWやホンダもかくやという“エンジン屋”になった事を証明する1つの実例が、このモデルという事だ。
ジャガー XJ
これはコンセプトカーでも参考出品でもなく、言うなれば単純なモデルチェンジ車というネタ。
が、「大型高級車の世界に新たなる概念を持ち込みたい」というエネルギーの強さでは大注目に値するもの。デザイン総責任者のイアン・カラム氏は「従来のジャガー車ユーザーを失う恐怖は全く感じていない」とインタビューの場で強気のコメントを聞かせてはくれたが、それでも現在“再生中”のジャガー社にとっては、まさに社運を掛けた大提案であるはず。
実際、フランクフルトモーターショーの舞台を飾った漆黒色のXJは、何とも妖艶かつ斬新なルックスで、「Sクラスや7シリーズこそが高級車」というイメージを持つ人に絶大なインパクトを投げ掛けた。
奇しくも、そんなモデルを前に「何かジャガーらしくない・・・」という日本人カップルの会話を耳にしたが、そう言わせる事こそがジャガーの人々の“本望”であるはずだ。
そんなエクステリアに合わせるようにインテリアのデザインも新鮮で、ここでもまた「今までに見た事無い」という感覚を味わわせてくれた新型XJ。そんなこのモデルが、これまでの保守的な高級車の世界に対して一矢を報いる事になるのか、ここは大注目だ。
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