「福島屋」を後にした一行は、秩父伝統の工芸品を作り続け、伝え続けている資料館・工房の「ちちぶ銘仙館」を目指して移動を開始した。山あいに位置する福島屋からちちぶ銘仙館への道は、アップダウンが激しくカーブの多い道。
ドライバーを交代し、運転を担当するのは壱城さんだ。土地勘の無い道路に険しい峠道。しかも山の天気は変わりやすい。晴れたり雨が降ったりと頻繁に変わりゆく空の下、所々雨で濡れた路面は、ドライブをする壱城さんにとっては厳しい状況と言える。
「V90 Cross Countryを初めて見た時、おっきいクルマだなぁと思ったんです。運転席も助手席も広いし、ラゲッジスペースも大きくてたくさん荷物が積めたのでこんなおっきなクルマ運転できるかなぁって。でも、いざ自分で運転してみると不思議と大きさを感じないんです! ハンドルを切るとイメージ通りに曲がるし、ブレーキも踏み込んだだけしっかりと止まります。なによりディーゼルのエンジンがすごくパワフルで、“ここ!”っていう時に踏み込んだ分だけ加速をしてくれるので、思いのままって感じに運転することができます。
到着した「ちちぶ銘仙館」は、国の伝統工芸品に指定されている織物である秩父銘仙を後世に伝えるべく設置された、資料館であり工房でもある建物だ。本館や実際に染織体験ができる工場棟などは、1930年に建造された旧埼玉県秩父工業試験場がそのまま利用されており、2001年10月に国の登録有形文化財に登録された、昭和初期の建造物の面影がそのままの姿で保たれている。まず本館に入ると、ちちぶ銘仙館広報担当の関川さんが館内を案内してくれた。
本館から展示資料室まで続く廊下は、大谷石積みの外観や昭和初期を彷彿とさせる装飾が特徴のアーチ型の廊下が続く。
展示資料室を抜けると、今回のお目当てである織体験室へ到着した。ここでは、高機(たかはた)という織物専用の機器を使って、本格的な手織りによるオリジナルのコースターを作る体験ができる。
思い思いの色の糸を選んだ2人は、その糸を高機にセットし編み込んでゆく。ここで意外な才能を見せたのは鳳翔さんだ。コースターを織るスピードは壱城さんのほぼ倍で、壱城さんが半分織り終わるころには仕上げてしまっていた。壱城さんが一枚織り終わるのを待てずに、二枚目に取り掛かる鳳翔さん。二枚目となるともうお手の物で、本当に織物体験が初めてなのかと思ってしまうほどだ。おふたりが作った世界でひとつだけのコースターは、こちらの写真の通り美しい出来栄えだ。
織物体験の後は、本館にある展示直売所へ。こちらでは、小さいものはコースターから、大きなものは着物まで、ありとあらゆる秩父銘仙を購入することができる。そのなかに、ひときわ目を惹く日本らしからぬ着物を見つけた。
藍色と青鈍をベースに、青白磁のスワンとどこかもの悲しい木々が散りばめられた着物だ。着物の事を関川さんに尋ねてみると、この着物はスウェーデン織を学んだ職人さんによる、秩父銘仙にスウェディッシュデザインを取り入れた作品とのこと。
じっくり見ていると、この濃い青はVOLVOが生まれたスウェーデン、ヨーテボリにあるデルション湖の夕暮れの風景が心に浮かぶ。一羽ぽつんと佇むスワンと、葉の少ない木々が北欧デルション湖のイメージとピッタリと合う。
この着物を織った職人さんのことまでは聞くことができなかったが、きっとヨーテボリの美しい風景を大好きな秩父銘仙で表現することで、双方の素晴らしさを多くの人に伝えようとしたのではないだろうか。
そして、ふと横目に見えるV90 Cross
Countryを見ていると、このクルマをデザインした人も、織物職人さんと同じ思いを抱きながらデザインのペンを走らせたのではないだろうかと思えてくる。
秩父からスウェーデンまでの距離はおよそ8千キロ。海で隔たれ、全く違う環境で過ごしてきていたとしても、美しいものを美しいと感じるわたしたちの感性は同じだ。伝統を重んじ、美しいものを広く後世に伝え続けたい。この想いに国境は存在しないのだ。
TEXT:松田 タクヤ(オートックワン) PHOTO:渡 健介
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