レクサスのおもてなし精神はタイヤにまで!? 新型NXにランフラットタイヤを採用したのは、ユーザーへの気配りの表れだった

  • 筆者: 今井 優杏
  • カメラマン:小林 岳夫・森山 良雄・LEXUS
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2021年11月よりいよいよ国内で販売を開始したレクサスのプレミアムSUV、新型NX。新開発のタフなTNGA GA-Kプラットフォームをベースに、新世代のスタイリングにも映える20インチの大径ホイール&ランフラットタイヤを採用したことでも話題を呼んでいる。

ランフラットタイヤとは、万が一パンクしても、所定のスピードで一定距離を走行可能とする技術を搭載した新世代タイヤ。タイヤのサイド部を強化したことで、空気圧ゼロの状態でも走行可能とするが、構造上乗り心地は固くなる傾向になる。それでもあえて採用した理由に、レクサスのおもてなしの精神が隠されていた! モータージャーナリスト今井 優杏さんのレポートでお届けする。

目次[開く][閉じる]
  1. 様々な新しい試みが盛り込まれたレクサス 新型NX、しかしランフラットタイヤの採用は正直なところ意外だった
  2. 現役レーサーによるレーシングスピードでの厳しいテスト評価の繰り返しに、新型NXの開発者も思わず「千本ノック状態でした」と告白
  3. スペアタイヤを載せない場合に搭載される「パンク修理キット」、ユーザーにとってはちょっと厄介な代物だった

様々な新しい試みが盛り込まれたレクサス 新型NX、しかしランフラットタイヤの採用は正直なところ意外だった

つい先日、レクサス 新型NXの試乗記事をMOTAにアップしたばかりの舌の根も乾かぬうちにもう一本、なのだが、書ききれなかった秘話もあるので公開しておこうと思う(まだその記事を読まれていない読者諸兄は、先にそちらを読んで頂くと理解が深まると思うので是非)。

さて、世界95カ国でヒットを飛ばしたレクサス NXの2代目だから、初代を超えるべく様々な新しい試みが注ぎ込まれているのは想像に易いはずだ。

そんな中で今回、なぜ? と感じたことがある。ランフラットタイヤの採用だ。

現役レーサーによるレーシングスピードでの厳しいテスト評価の繰り返しに、新型NXの開発者も思わず「千本ノック状態でした」と告白

レクサス 新型NXは豊田 章男氏(ドライバーネーム・モリゾウ氏)とともにモータースポーツを戦うチームメイト、佐々木 雅弘氏を開発に迎え、徹底的にレーシングスピードで走りを妥協なく鍛えたクルマだ。

実は筆者にとって佐々木 雅弘選手は付き合いの長い友人でもあるのだが、そんな彼が仕事以外のオフレコトークでもこのクルマをベタボメしていたことは、その開発の熟成が、ストイックな彼にとってもなお、満足の行くものだったのだろうというのは想像がついた。事実、開発主査である加藤 武明氏も、彼のテストドライブを『千本ノック』と表現しておられた。

厳しいレースの現場では、通常なら1年乗っても出てこないまさかのトラブルが瞬時に発生することも

実はモリゾウ氏本人によるモータースポーツへの参戦をきっかけに、トヨタ自動車では今、「アジャイル開発」というものが行われている。この用語はソフトウエアやシステム開発などで使われるモノだが、これが今、トヨタではレーシングカー含むクルマの開発に採用されている。

アジャイル、とは「素早い」とか「機敏な」という意味。極限までクルマのスペックを使って戦うモータースポーツの世界では、市販車が半年とか年単位で出すようなトラブルが、ほんの数分から数時間で噴出することがある。

レース現場から生まれた“アジャイル開発”の思想で、スピーディに改善を重ね誕生した新型NX

モリゾウ氏はこれまでのニュルブルクリンク24時間レースへの参戦でも「レースで出たトラブルを市販車の開発に活かすことこそがモータースポーツに参戦する意義」と繰り返し話していたが、今、さらにその考えは進化していて「トラブルが出た瞬間にその場で対処&改善する“開発”」が行われているのだという。

そんなアジャイル開発は、佐々木雅弘氏の「千本ノック」で遺憾なく発揮されたのだそうだ。走り込むごとに理想を追い、エンジニアが全力で対処し、高みに近づけたのだという。

スペアタイヤを載せない場合に搭載される「パンク修理キット」、ユーザーにとってはちょっと厄介な代物だった

…というエピソードを深堀りした上で、話しはいきなりタイヤに戻るが、そこまで走りを求めるならば、正直ランフラットは邪魔だったはずだ。しかし、新型NXはランフラットタイヤを敢えて採用してきた。なぜか。

ズバリ『パンク補修材を使いたくなかったから』だという。

タイヤメーカーと協力し、乗り心地が固くなる傾向にあるランフラットタイヤの特性をレクサス基準でチューニングし直して搭載

御存知の通り、現在、自動車にはスペアタイヤ、もしくはパンク補修材を搭載しなければいけない。軽量化、そしてエコの観点からも、近年の新車はスペアタイヤを廃止しパンク修理材を搭載するケースが増えている。

ただ新型NX開発陣は、ユーザーからの「使いづらい」「使い方がわからない」「タイヤが駄目になってしまう」などのパンク補修材キットに対する圧倒的不満の声を聞いていたのだという。しかし新型NXには、SUVとしての走破性は担保したい。

そこでスペアタイヤもパンク補修キットも搭載不要な、ランフラットタイヤを選択した。でありながら、NXらしいラグジュアリーかつスポーティな走りが実現されるよう、タイヤメーカーとのチューニングをしてきたのだそうだ。つまり、走りを徹底的に鍛えつつも、きちんとユーザーの顔を見て、使い勝手の面で最後は消費者にメリットがちゃんとあるように、クルマ開発をしてきたということだ。レクサスらしい気遣いだと思う。

開発者からこっそり聞いちゃった! 非ランフラットタイヤを選択するならPS4がオススメ

とはいえ、もしNXをさらに最高の走りに仕立て上げたいのであれば、ミシュランのパイロットスポーツ4とのマッチングがオススメなのだそうだ。そのマリアージュ、筆者も異存なし。かなりいい感じのラグジュアリーさが出ると思う。

その際にはパンク補修材キットを自分で用意することを忘れないで欲しい。

[筆者:今井 優杏(モータージャーナリスト)/撮影:小林 岳夫]

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168.5万円864.1万円

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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