急転直下、三菱自の燃費不正報道から一転、日産の傘下へ ~前代未聞のドタバタ劇~(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:オートックワン編集部
前日の会見で見せた三菱自・益子CEOの「歯切れが悪い」に含まれた意味
5月11日(水)、霞が関の国土交通省5階の会見場。午後5時30分から始まった、三菱自動車工業(三菱自工)の記者会見は2時間に渡る長丁場となった。
同会見は、三菱自工が「燃費試験における不正行為に係わる報告」を国土交通省・自動車局に行なった後に開かれた。
会見が始まって1時間あたりまでは、軽自動車4車種の燃費不正に関して、または新たに「机上計算によるデータ算出」の疑いが浮上したRVRに関してなど、技術観点からの質疑応答が主体だった。その中には、三菱自工が「米国方式」と主張する走行抵抗値の計測方法「高速惰行法」についての、筆者の質問もある。
だが、会見が後半に移るにつれ、記者団からの質問は、不正について「具体的に誰が」「誰の指示で」「社内でどこまでのレベルの人が知っていて」といった「犯人探し」に終始するようになった。
それに対し、三菱自工側は「現在調査中で…」「(国土交通省への次回の報告期限である)5月18日までには…」と防戦するのに必死だった。
>>昨日の三菱自工が発表した国交省指示による調査結果と今後の対応
こうした2時間に及んだ、三菱自工と記者団とのやり取りのなかで、筆者がとても気になったことがある。
それが、益子CEOの態度と“言葉じり”だ。
そのなかでも、筆頭株主である三菱重工/三菱銀行/三菱商事による三菱グループ3社からの資金面や人材面での支援について、必要以上に抽象論で答えているように思えた。
そして、「三菱自工を今後どのように立て直すのか?」「燃費不正によって、日産との関係が今後、大きく崩れることはないのか」との質問について、優等生的で、正攻法な回答を続けた。
しまいには、益子CEOは「きょうの会見について、(我々の返答が)歯切れが悪いと思われるだろう」と、自虐的とも受け取れるような“奇妙な発言”をした。
こうした会見の後、国土交通省による本件事案におけるブリーフィングが約1時間続き、筆者が霞ヶ関を出たのは午後9時半を過ぎていた。
その翌日には“寝耳に水”の提携発表
翌12日、午前5時。起床してすぐに、昨日の三菱自工の会見に関するニュースをチェックすると、驚きのニュースが目に飛び込んできた。
NHKニュースWEB他で、「日産が三菱自工に巨額出資。事実上の傘下に」とあるではないか。
同日は午後3時15分から、日産自動車の2015年度決算報告会見があり、筆者も横浜にある日産グローバル本社に出向く予定だった。そうしたタイミングで、「寝耳に水」のニュースだった。
さらにNHKの昼のニュースでは、「2社の資本提携について、三菱自工は午前中の取締役会で決議され、日産はこのあと午後1時半から取締役会で決議の予定」と報じた。
そのため、午後1時半には日産本社に到着し、決算報告会見の開場の順番待ちの列に並んでいると、午後2時過ぎに、日産側から「午後4時から、(日産本社から徒歩10分ほど離れた貸ホールで)日産と三菱自工の共同記者会見」、「その実施に伴い、決算報告会は午後5時半に“後ろ倒し”」という案内が来た。
その通知を持って、メディアが大移動を始めるという、自動車関連の案件としては“前代未聞のドタバタ劇”となった。それほどまでに、今回の資本提携は、関係者のなかで「急展開」があったのだ。
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