熟成が進みオンロードで輝く新型GT-R|日産 GT-R 2020年モデル 基準車 試乗レポート(2/3)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:佐藤 正巳
大人の振る舞いを演じるノーマルモード
そんな“ノーマル”のGT-Rをオープンロードで走らせると、実に心地良い瞬間が得られる。重厚なボディを土台に、ガッシリとしたステアリング周りの剛性感とシートのシッカリ感がミックスされ、自分がGT-Rを運転していることを強く意識させられる。
MY20モデルに進化する上ではそのサスペンションにもリセッティングが行われたが、それはMY14モデルで得たしなやかさを損なうものではなかった。減衰力の立ち上がりが素早くなったことで初期のロールスピードが抑えられ、なおかつ路面からの入力をきちんといなしながら、ハンドルを切り込むほどに車体の動きをわかりやすく乗り手に伝えてくれるのである。
惜しいのはこのしなやかな足回りに対して、タイヤの剛性が少し高過ぎること。GT-Rの性能を安全性と共に担保するためにはこうしたタイヤのしっかり感が必要なのだろうが、高額なロードゴーイングカーとしては、もう少し上質なダンピング特性が欲しいと感じた。
追従性の高いシャシーに対して、エンジンもリニアな反応を見せる。アクセルの踏み始めから過給が素早く立ち上がり、なおかつギクシャク感なしに加速してくれるのは、アブレダブルシールの恩恵か。どこまでも気持ち良く伸びて行く加速には高級感さえ感じられ、少なくとも公道では、570PS/637Nmの数値に不満など抱かない。
Rモードではアグレッシブに
そんな“大人の振るまい”を演じるGT-Rも、シャシーの制御を「R」モードに入れると、その本性を少しだけ覗かせてくれる。ダンパーは減衰力をさらに高め、操舵に対し車体が素早く反応するようになる。サーキットで感じられる慣性重量の大きさも、公道では意識されない。むしろグイグイと、その鼻先を内側へネジ込んで行く圧倒的なグリップ感が支配的になる。
シフトスケジュールの先鋭化は公道の方がよりアグレッシブに感じられる。クラッチのつながりはダイレクトになり、ブレーキングからのオートブリップで減速感を楽しみながら、素早く加速体勢に転じることができる。
その痛快極まりないターボパワーを公道で解き放つことはモラルとしてできないが、それでも日常領域から感じる分厚いトルク感や、エンジンブレーキを効かせた際のシフトダウンレスポンス、追い越し車線へ出るときのタイムラグのない加速によって、VR38ユニットの存在感は大いに楽しめた。
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