新型ヴェゼル好調だが…先行き不透明なホンダと好転の兆しが見える日産… 2021年6月の国内販売で不調な2メーカーの今後を占う

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:MOTA編集部・Honda・NISSAN・和田 清志・茂呂 幸正
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2021(令和3)年6月度の乗用車販売台数ランキングが、自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)から発表された。国内の自動車販売事情に精通するカーライフジャーナリストの渡辺 陽一郎氏が、販売が振るわない2つのメーカー「ホンダ」と「日産」の今後の販売状況について解説。復活の兆しが見える日産に対し、新型ヴェゼルが好調なホンダは、それ以外の好材料があまり見当たらないという。

>>日産とホンダ、2021年後半の見通しに明暗が別れた2社のニューモデルを写真で見る[画像44枚]

目次[開く][閉じる]
  1. 2021年6月、国内の販売台数が伸び悩む「日産」と「ホンダ」だが、先行きは2社で随分異なる
  2. 国内におけるホンダの現状からは好材料が見つからない
  3. 大丈夫!? 場当たり的で統制が取れていない国内のホンダ

2021年6月、国内の販売台数が伸び悩む「日産」と「ホンダ」だが、先行きは2社で随分異なる

前回は、前年に比べて5.3%増加した2021年6月の国内販売状況と、その中で安定した売れ行きを示すトヨタとダイハツ、そして前月5月に比べ台数を落としたスズキについて紹介した。

6月、同様に伸び悩みを見せているのが「日産]と「ホンダ」だ。2社の今後の動向について予測してみよう。

日産にはここから上向く材料がいくつもある

日産は徐々にではあるが、上向く可能性がある。日産の社内からも「これまでは国内市場に対して消極的過ぎた」という反省の話も聞かれる。

6月15日に発表したノート オーラ(発売は2021年秋)に続き、EV(電気自動車)のアリア(こちらも発売は2021年から2022年初旬といわれる)、2022年の初頭には新型エクストレイルも発売する。さらにその先、軽のEVも控えているようだ。

エクストレイルはもともと国内でも人気の高いSUVだ。フルモデルチェンジに伴い、圧縮比を走行状態に応じて変化させる直列3気筒1.5リッターターボエンジンを搭載する。この新開発パワーユニットに、ハイブリッドのe-BOXERを加えたタイプも併せて用意する見込みだ。

アリアや新型エクストレイルの発売で、日産車の国内販売が急増することはないが、新型車の発売が2年に1車種というここ最近の酷い状況からは脱する。そうなれば少しずつ国内販売も増えてくるだろう。

国内におけるホンダの現状からは好材料が見つからない

工場を閉鎖するから車種を廃止するという“本末転倒”

逆にホンダは心配だ。狭山工場の閉鎖に伴い、オデッセイ、レジェンド、クラリティを廃止する。工場はクルマを生産するために存在するので、車種を廃止したことで工場を閉めるなら理解できるが、工場の閉鎖によって車種を終了するのは本末転倒だ。

ホンダはシビックについても、一度国内販売を終了しながら、海外向けのシビックセダンを国内の寄居工場で新たに生産することになり、成り行き的に国内販売を復活させたことがある。

そのシビックセダンは、先ごろ改めて廃止され、5ドアハッチバックのみが2021年秋頃にフルモデルチェンジされる予定だ。

SUVブームの中でまったく売れていないCR-Vの惨状

CR-Vも一度国内販売を終えて「予想以上にSUVの人気が高まり、ヴェゼルだけでは足りない」という理由で復活させた。しかし内装の質が低い割に価格は高いのでまったく売れていない。

2018年にCR-Vを復活させた時、1か月の販売目標を1200台に設定したが、2021年の登録台数は1か月平均で400台前後だ。目標を大幅に下まわり、モデル末期のエクストレイルにすら負けてしまう有様だ。

新型ヴェゼルの好調ぶりは唯一の好材料のはずだが、生産が追いついていない点に不安が残る

2021年4月に一新されたヴェゼルは、納期が半年から1年に遅延している。先代型は狭山工場で生産したが、今は三重県の鈴鹿製作所だ。

鈴鹿はN-BOXを始めとする軽自動車のNシリーズとフィットを生産しており、以前から過密な状態だった。そこに狭山工場の閉鎖に伴ってヴェゼルまで加えたから、生産が影響を受けている面もある。

大丈夫!? 場当たり的で統制が取れていない国内のホンダ

高価格帯の割に売れているオデッセイを廃止するのは大きな判断ミスだ

このようにホンダの国内販売は、全般的に場当たり的で統制がとれていない。メーカーの販売順位も、2021年6月はスズキが下がったから3位だが、通常はトヨタ、スズキ、ダイハツに次ぐ4位になっている。

話をオデッセイに戻すと、ホンダ内部でも「オデッセイは中国製を輸入しても存続すべきではないか」という話が出ている。2020年のマイナーチェンジ後は、1か月に1700~1800台を登録しているので、売れ筋価格帯が350万円を超えるホンダ車では登録台数が最も多い。オデッセイは知名度も高いので、廃止する判断は間違いだ。

国内での積極姿勢を見せ始めた日産と、混沌とした状況のホンダ

結局のところ「日本のユーザーや市場に対する思い入れ」で、国内の売れ行きは変わる。

日産は2011年頃から国内を冷淡に見るようになり、売れ行きも下がった。国内販売ランキングも、従来の2位から5位に下がった。それを最近は改め始め、国内への新型車投入を続けるなど販売に力を入れ始めている。

ホンダは逆に、以前に比べると冷めてきた。目立って売れているのは国内専用の軽自動車N-BOXくらいだ。

メーカーが厳しい状況に置かれているのは理解できるが「どこの国のメーカーですか?」と問われた時、返答に窮するのは悲しいことだろう。ホンダの今後の展開に期待したい。

[筆者:渡辺 陽一郎(カーライフジャーナリスト)/撮影:MOTA編集部・Honda・NISSAN・和田 清志・茂呂 幸正]

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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