“4周目の改革”三菱の燃費不正問題は本当にこれで終わるのか

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僅か1年で大きく様変わりした三菱自

「改めてお詫び申し上げます」

2017年4月13日、東京・田町の三菱自動車工業(以下、三菱自)本社に集まった報道陣へ向かって頭を下げたのは、日産の技術担当副社長から転じた取締役・副社長の山下光彦氏だ。

あれから、ほぼ1年。まさか、こんな結末が待っているとは、私を含めた報道陣の誰もが予想できなかった。

昨年の4月20日、自動車業界に激震が走った。

三菱自が岡山県水島工場で生産している「eKワゴン」「eKスペース」(ともにカスタムを含む)、そして日産へOEM供給(相手先ブランド供給)している「デイズ」「デイズ・ルークス」の4車種に関する燃費不正問題が発覚。燃費を算出するために国の技術調査機関へ提出するデータを改ざんするという、極めて悪質な事案だった。

それからは、霞が関にある国土交通省・4階で三菱自の会見が毎週のように開かれ、立ち見が出るほどの熱気のなか私を含めた記者たちと三菱自との間で激しい議論が交わされた。

その後はスズキでも燃費不正の事案が公開され、2017年4~5月はメディアによる「燃費不正フィーバー」の様相を呈していた。筆者は、記者会見後の帰路の途中で「いったい、いつまでこんな状態が続くのか」と、霞が関の夜空を見上げて思わずつぶやいたのを思い出す。

そのフィーバーに終止符を打つような出来事が、突然起こった。日産の三菱自に対する資本参加だ。

日産の決算報告会が急遽、実施時間を後ろ倒しするという“ウルトラC”で、ゴーン氏と益子修会長の合同会見が開かれた。日産の傘下となった後、技術部門の立て直し役としてゴーン氏の右腕であった山下氏が三菱自の改革に乗り出したのだ。

4周目の改革は果たして成功するのか?

今回の会見での質疑応答で、ある記者から「三菱は過去に何度も様々な不正が起こったが、結局何も変わらなかった。その原因は何か?」という質問に対して、山下氏は「社内では、今回で“4周目の改革”と言われている。これまでの改革では掛け声ばかりで、対策の具体化がなされてこなかった。(実際)3周目の改革の結果が現時点で残っていない。今回は(改革を明確に)ルール化して対応する」と説明した。

今回公表された、社内改革の柱は大きくふたつある。ひとつは、「再発防止策31項目への対応」。もうひとつが「PRev(パフォーマンス・レボリューション)活動の推進」だ。

前者の再発防止策31項目への対応については、組織に関してが8項目、仕組みで10項目、風土・人事で9項目、そして経営の関与のあり方が4項目で合計31項目となる。

その中から、一例として紹介されたのが、PX(プロダクト・エグゼクティブ)制度の見直しだ。

これまでは、商品開発についてPXを頂点とし、各方面でのプロジェクトマネージャーが補佐する形式だった。これを今後は、PD (収益責任)、CPS(商品力確保)、そしてCVE(開発QTC)の三領域が相互補完する制度へと転換し、PXへの権限と負荷を軽減する。また、社内の上位階層では階層のフラット化を行い、山下氏が務める副社長を筆頭に4人の役員が担当する本部長を直轄下に置く。

仕組みについては、4月1日から先行技術開発部を新設して商品企画をじっくりと練り、またサプライヤーの選定の早期化を行う。

また、燃費不正で問題となった惰行法の測定については、走行抵抗の測定データ処理自動化システムの導入を導入した。これは日産が導入しているシステムではなく、三菱自が独自に開発したものという。

そして、経営の関与のあり方では認証部を副社長の直下に置いた。

会見の最後、山下氏は三菱自の印象について「クルマ好きが多いので、クルマ造りの新しい考え方はしっかりと社内に浸透するはずだ」と、4周目の改革に向けた抱負を述べた。

燃費不正については、1991年から25年間にもわたり是正させれてこなかったという社風が、日産主導の改革によって本当に変わるのか?

これからも、三菱自の動向を注視していきたい。

[TEXT・PHOTO:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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