autoc-one.jp 記事・レポート 特集 自動車評論家コラム メルセデス・ベンツのような立体エンブレムは、なぜ少なくなったのか?

自動車評論家コラム 2018/7/2 11:08

メルセデス・ベンツのような立体エンブレムは、なぜ少なくなったのか?

メルセデス・マイバッハ
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メーカーやクルマの個性を出すために必要な「エンブレム」

クルマのメーカーは幾百、そして車種は幾千幾万…?ご存知の通り膨大な数があります。

その中でメーカーの個性を出したり、クルマの見分けをさせることが必要です。そのためには全体のデザインも含めてヘッドライトやグリルなどの「顔」が特に大きな役割を果たしています。

そして顔を構成するパーツでとっても重要なのがエンブレム。

メーカーごとのエンブレムを顔に貼り付けることでどこのメーカーで作っているのかを示し、場合によっては車種ごとのデザインを採用することで、それぞれのクルマに込められた特徴を出すことができます。

>>シボレーは飛行機の立体エンブレム!様々なエンブレムの画像を見る

かつてのクルマには立体的なエンブレムやマスコットが多かった

ヴォワザン C28
シボレー ベルエア

メーカーごとに「顔」の個性を出そうと模索が始まった時期は古く、概ね早くも1910年代~20年代にはグリルやエンブレムに様々な意匠が見られるようになったのではないかと思います。そしてその頃からグリルやボンネットの上に立つ立体的なエンブレム、もしくはメーカーを象徴するシンボルを象ったマスコットが少しずつ姿を現し、それらの多くが、グリルの先端にあるラジエターキャップの装飾が発展していったものです。

立体エンブレム・マスコットのデザインには趣向が凝らされ、サイズも次第に大きなものに。女性や鳥、虫などから果ては伝説の人物や生物までもがモチーフとなって全盛期を迎えました。

クルマの外観から独立したフェンダーが消えた1950年代でも、大衆車から高級車まで、車体のデザインに取り込まれたようなデザインやSFチックなデザインの立体エンブレムやマスコットがたくさん見られました。

特にこの頃のアメリカ車のそれは飛行機の翼や流線型をイメージしたものが多く、エンブレム・マスコットにも科学への夢が感じられます。そんな魅力的なエンブレムは、コレクターもいるほどです。

その後、クルマのデザインの近代化に伴って、グリルが車体に埋め込まれたり時代にそぐわなくなったりしたために、立体のエンブレム・マスコットは消えていきます。

しかし、その中でも幾つかのメーカーや車種は立体エンブレムを継続して採用を続けました。

国産車でも日産 シーマやセドリックなどにも装着されていた

日産 シーマ(Y31)日産 セドリック(Y34)

日本車でもトヨタ クラウンや日産セドリック/グロリア、シーマ、プレジデントなどのボンネット先端に、キラリと光る立体エンブレムがあったことを覚えている方も多いと思います。

特に日産は、2000年代まで純正で装着されていました。セドリック/グロリアの最後を飾る、モダンなデザインが賛否両論を呼んだY34型にさえ、立体エンブレム装着車があったのは今考えると意外です。

立体エンブレムが姿を消した理由とは?

ところが最近では、立体的なエンブレムはすっかり姿を消したように思います。メルセデス・ベンツやロールスロイスなどは、今なお立体エンブレムを使用していますが、ほとんどのクルマから立体エンブレムがなくなった理由は、ズバリ「突起物」だからです。

不幸にも対人、対自転車、対バイクの事故が起きてしまった場合、ボンネットに生えたエンブレムが人を傷つけてしまう恐れがあり、日本ではいわゆる外部突起規制と呼ばれる法律(道路運送車両法、乗用車の外部突起に係わる協定規則 第26号)が2001年9月から導入されたことによって、各メーカーは立体エンブレムの使用をやめてしまったのです。

これは日本だけの話ではなく世界的な流れで、この法律自体が国際基準調和の一環だったのです。そのため、同時期にはアメリカのキャデラックなどからも立体エンブレムが姿を消しました。

メルセデス・ベンツやロールスロイスはなぜOKなのか?

メルセデス・ベンツ Sクラス
ロールスロイス ファントム

でもそうなると疑問なのが、現行車種の一部で採用が見られるメルセデス・ベンツの立体エンブレムやロールスロイスの立体マスコット。

これは突起物には当たらないの?ということになりますが、例えばメルセデス・ベンツのエンブレムは押すと倒れるようになっているため、突起物規制の対象外となっているのでした。

さらにすごいのはロールスロイス。1911年から同社のクルマのボンネットに輝く“フライング・レディ”とも呼ばれるマスコットの根元は固定されていないのですが、現在のモデルでは「触れると一瞬でマスコットが車体内に格納される」ギミックが搭載されています。

これはマスコットだけで数十万円(!)ともいわれるマスコットの盗難防止にも役立っているようです。

最近のエンブレムは以前より大きくなった

ルノー カジャーマツダ CX-5

このように様々な理由からボンネット上のエンブレムやマスコットが消えた現在ですが、冒頭で述べたようにエンブレムが大切なことは全く変わっていません。むしろ、設計要件が厳しく外観が画一化しつつあるクルマのデザインでは、メーカーの個性を訴えるためのエンブレムはますます重要な存在になってきました。

そのため、各メーカーともに、フロントグリル中央のよりエンブレムを強調する傾向が強くなっているように感じます。例えば日産やルノーのグリルのエンブレムって、以前より随分大きくなったような気がしませんか?

最近ではエンブレムに安全運転支援システム用のミリ波レーダー装置が仕込まれていることも多く、それもエンブレムが以前よりも大きくなっている理由の一つなのかもしれません。エンブレムが持つ役割も時代に合わせて変わっていくのですね。

[TEXT:遠藤イヅル]

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