メルセデス・ベンツ 新型CLS 試乗|7年ぶりのフルモデルチェンジで魅せた贅沢な乗り心地
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:和田 清志
7年ぶりのフルモデルチェンジを果たした新型CLSを試す!
Eクラスでは退屈だけれど、Sクラスにはまだ早い。そんな贅沢な悩みを持つあなたにとって、最高のメルセデスが遂に日本に上陸した。7年ぶりのフルモデルチェンジを果たした「CLSクーペ」である。
ご存じの通りこのモデルは、「4ドア・クーペ」という矛盾だらけなジャンルの開拓者であり、成功者。年を追うごとに肥大化して行くボディサイズを巧み使い、4ドアサルーンの利便性と、クーペとしてのエレガンスを両得した欲張りなカテゴリーが、多くの追従者を生み出したのはご存じの通りである。
ちなみにそのスリーサイズは今回試乗した「CLS 220d Sports」で、全長×全幅×全高:5000×2070(ミラー含む)×1430mmと、じつにゆとりのある内容となっている。
そんなCLSのベースとなるのは、SクラスではなくEクラスだ。ちなみにEクラスのスリーサイズは全長×全幅×全高が4930×1850×1455mm、ホイルベースが2940mmだから、CLSはかなりのロー&ワイドぶりだと言える。
そしてまさにここが今回の、筆者なりの注目ポイントだった。簡潔に述べればまさにEクラスとSクラスの中間に位置するCSLが、どれほどのプレミアム性を得ているのか。果たしてその答えは、かなり興味深いものだった。
新型CLS 220d Sportsは生活感が見え隠れ!?
今回の試乗はメルセデス・ベンツ日本のある品川を出発点に、箱根は強羅にあるリゾートホテルで折り返す、片道およそ100km強のミドルドライブ。これを筆者は往路に「CLS 220d Sports」、帰路に「CLS 450 4MATIC Sports」の順番で試した。
最初にステアリングを握った「CLS 220d Sports」は、2リッターの直列4気筒・直噴ディーゼルターボ(194ps/400Nm)を搭載するモデルだ。
正直このユニットは実直に過ぎ、Eクラスよりも大きなCLSのプレミアム性を存分に引き出すには、残念ながらそこかしこにちょっとした生活感が見え隠れしてしまう。
具体的に言うとシャシー側の遮音性はかなり高いのだが、それでも直列4気筒特有のメカニカルノイズが微かにステアリングから伝わるし、アクセルをじわりと踏み込んだときのノック音と小さなバイブレーションを完全に消し去れてはいない。
また加速時は割と勇ましいサウンドと共に、400Nmのトルクで必要にして十分なダッシュを披露してくれるものの、ディーゼルゆえに高回転の伸びやかさに欠け、やはりパワーとしては194psの数字が物足りない。
別に普段から飛ばすわけじゃない。そつなく走れば十分イケる。けれど「いざ」というときの底力が望めないのは、こうしたカッコ付けモデルにとって、面目や面白みにやや欠けるのだ。
CLS 220d Sportsの乗り味は“Eクラス以上Sクラスに迫る”実力!
ではそんなCLS 220d Sportsの、何が魅力的なのか?それはひとえに、贅沢な乗り心地である。
CLSはその足下に、連続可変ダンパーのみならずマルチチャンバー式のエアサスペンションをも組み込んでおり、この絶対的な違いが、Eクラスとの差別化を図りなおかつSクラスに車格を近づける。まったりとしながらも不要なバウンスの起こらないダンピング制御。その乗り味を、かなりのG領域まで快適に支えるサスペンションのエアスプリングレート。
なんとシューズにはダンロップのスポーティタイヤである「SP SPORT MAXX」が奢られていたのだが、ランフラットではないこともありロードノイズ以外はむしろEクラスよりも乗り心地が良い。
このタイヤ選択はスポーティなハンドリングを得るためというよりも、CLSが持つエレガントドライブを高次元域まで維持するためのものなのだろう。かくしてCLS 220d Sportsは、“Eクラス以上Sクラスに迫る”乗り味を手に入れた。それと同時に、あのEクラスのシャシーが、エアサスを投入しタイヤを換えるだけで、これほどしっとりとした乗り味を実現できる実力を秘めていたということに、改めて気づかされた。
続いてCLS 450 4MATIC Sportsに試乗!
復路で乗った「CLS 450 4MATIC Sports」は、CLS 220d Sportsの歯がゆさを見事に払拭した、実にメルセデス・ベンツらしい一台だった。
既にEクラスで高い評価を得ている3リッターの「M256」直列6気筒ツインターボは、「能ある鷹」が持つに相応しいユニットだ。
エンジン単体では367ps/500Nmのパワー&トルクを潜在しながら、街中でのスタート時や、クルージング領域といったアクセルを大きく踏み込まない領域ではトランスミッションとエンジンの間に挟まれたISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)の出力(約22ps/250Nm)を活用して、エンジンをほぼ回さずにサイレントドライブを可能としてくれる。
いわゆるマイルドハイブリッドなのだが、その様子をメーター内のインジケーターで確認しながらこれを走らせるのは、結構面白い。スロットルを一定に走るとタコメーターは静かなまま、速度だけがスルスルと伸びて行く。そしてEQゲージのパワーグラフが目減りしてゼロになると、タコメーターが“ぴょん!”と跳ねる。アクセルをオフにすれば回生ブレーキが作動し、またリチウムイオンバッテリーに電気は素早くチャージされる。
将来的にはこのチャージ量がどんどん増えて行き、より多くの距離を快適なEVモードで走れるようになるのだろう。だが、それまでの時間稼ぎとしてもこのシステムを使ってなるべくエンジンを回さぬように走るのはとても面白い。
そしていざアクセルを踏み込むと、このストレートシックスは鋭い爪を出す。気持ち良い回転上昇感と共にエンジンを回しきり、そのゴージャスな乗り味に相応しい胸の空く加速を披露してくれる。プレミアムスポーティセダンの走りは、正直こうでなくては!と思う。
コーナーでノーズの重さをまったく意識させないのは、電動化による恩恵か。メルセデスいわく従来エンジン回転を動力源としていたエアコンやウォーターポンプ類が電動化したことでベルト類が不要となり、その全長はよりコンパクトになったという。
とはいえ今の時代、こうした軽量化が表立ってハンドリングに現れることはまずない。実際限りなく400psに近い出力を支えるべくその駆動方式には4MATICが採用されていたが、そのハンドリングは実にFR然とした自然なもの。長いホイルベースで安定性を保ちながらも、ハンドルを切れば狙い通りにフロントタイヤをトレースしてくれる。
プレミアムと実用性の狭間で絶妙なバランスを取る4ドアクーペ
つまり前述したサスペンションの実力や、もちろん直6のコンパクト化、4MATICの4輪トルク制御、そしてクーペスタイルの低重心といった全ての要素が重なり合って、この素直なハンドリングを実現しているのだと思う。
結論としては1038万円(税込み)というプライスも、S400より上位パワーユニットを搭載するという部分を含めてお買い得だと思う(本当はISGなしでもっと安くてもよいというのも本音だが)。
クーペ一族を表す逆スラントの攻撃的なノーズに対してキャラクターラインの少ないボディはノッペリとアンバランスな気もするが、クーペらしさを強調する上ではその違和感もひとつの個性か。アンビエントライトがインパネのみならずタービンシェイプのエアコン吹き出し口の内側をも照らすギミックには子供だましを感じながらも萌えさせられるし、今回から5名乗車となったリアシートはこうした浮き世離れ感に実用性をうまくミックスしている。
まさにプレミアムと実用性の狭間で、絶妙なバランスを取る4ドアクーペ。新型CLSはその価格も含めて、ファミリーを持ちながらもまだまだ若さを忘れない、多くのミドルエイジ達のハートを鷲づかみにすると思う。
[Text:山田 弘樹/Photo:和田 清志]
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