レクサス IS F 試乗レポート
- 筆者: 日下部 保雄
- カメラマン:山口敏尚
さりげない凄みがIS Fのデザイン
BBS製19インチ鍛造ホイールに履いた大径タイヤをカバーするために張り出したフロントフェンダー、5Lエンジンを冷却するために開けられた、ISの3倍に達する大きなフロントアウトレットなど、さりげない凄みがIS Fのデザイン上の特徴だ。
エンジンはV8の5L、基本的にはLS600hの5Lエンジンをベースとしているが、別物と言って良いほど手を加えられ、スポーツ系エンジンにつけられる2UR-Gの名称がつけられている。ブレーキもフロントは6ポッドのブレンボ製で、約1700㎏の重量をしっかりと受け止める。ホイールから覗くブレンボブレーキもさりげない迫力がある。
インテリアの最大の違いは5シーターから4シーターへ割り切ったことだろう。それぞれのシートはサポートと乗降性をバランスさせたスポーツシートだ。腰のすわりもよく、ドライビングに専念できる良いシートだ。計器類で目を引くのは300キロまでのスピードメーター。タコメーターは6800回転からレッドゾーン、そのほかにもISにはない電圧計、油温系が追加されている。
トランスミッションは8速の2ペダル。ちょっとおさらいしておくと、これはLS460にも使われているトルコンの8速だが、IS Fでは更に進化させて2速以上をフルロックアップとすることでマニュアルと同じ感覚でシフトできる。もちろんパドルシフトで自動変速を制御して回転リミッターに当たりっぱなしにすることも出来るし、Dレンジであればまったくのオートマチックとしてイージードライブが可能だ。現状のツインクラッチの弱点である発進時のもたつきはトルコンのこのシステムでは無用だ。
V8 5Lの高貴な佇まい
V8エンジンはV6とは明らかに違う重々しさがある。エンジンは静かに走る時にはおとなしく、4000回転を超えると乾いた力強い音に変わるのだ。サウンドチューンはワクワクするほどだ。さらに高回転域では一段と音が高くなるのだが、ノイズではなくノートとしてチューニングされている。エンジン特性はもちろん分厚いトルクに支えられていつでも豊かな走りが出来るが、回転の上昇に従ってストレートにパワーが上がっていくところはいかにもスポーツ系のエンジンである。
日常走行でのDレンジはいかにも使いやすい。滑らかな変速は粘り強く力強いエンジンとの相性も良いし、パドルシフトでもエンジンブレーキなど自在に使えてスポーツセダンの片鱗を見せる。もちろんスポーツVDIMをスポーツにすると獰猛なIS Fに変身させることが出来る。スポーツモードは心して選ぶべきだろう。
さて乗り心地だが、オリジナルのISはもともとリアからの突き上げは強い方だ。特にウルトラハイパワーのIS Fでは当然固められたサスペンションを持っており、この点が心配されたが、意外にもマイルド。大きな段差を通過すると潜在的なバンプストロークの不足があるので、さすがに跳ね上げられるが、日常性ではまったく問題はない。静かなキャビン、ダンピングの効いた乗り心地はロングドライブでも快適で心地よく、改めて良いクルマだと思わせてくれた。
知的モンスターの味わい
こだわりを持って作られたIS F、よくまとまっているが更に付け加えると空力特性もある。小さなリップスポイラーだが前後のリフトは抑えられ、高速直進安定性は素晴らしい。また、6ポッドブレーキの強力な制動力もIS Fへの信頼感を抱かせてくれるが、ただ制動力が大きいだけでなく、ペダル剛性もドライバーの感性にあってコントロールもしやすい。
IS Fはプレミアムスポーツセダンとして完成度が高い。このところ元気の良いクルマが続々と誕生してクルマファンに嬉しい限りだが、その中にあってFRのドライビングプレジャー、4ドアの利便性、そしてインテリジェントのあるエクステリアなど、IS Fの独特の世界を持っている。
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