レクサス GS 試乗レポート

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アリストの後継であり、後継ではない

GSは、アメリカでは16年、日本ではいよいよ今年からスタートとなった「レクサス」のブランドにおける「走り最重点の4ドア・セダン」というキャラクターの持ち主。本来であればLSとISという“レクサスセダン3兄弟”の中核を成すモデルでありつつも、LSのモデルチェンジを来年に控えた現状では、日本市場ではさしあたりレクサス・チャンネルのフラッグシップとしての位置づけを担うモデルと言う事にもなる。高級でありながらもスポーティなセダン――そんなクルマづくりのスタンスは海外では従来型のGS、日本ではこれまでのアリストの延長線上に位置するもの。もっとも、日本でのアリストはこれまでは“怒涛のターボパワー”で売ってもきたモデル。ところが今度のモデルはこれまでの海外版GSと同様に8気筒エンジン車がトップモデルとなる。そうした面では「これまでのアリストのお客さんを“捨てる”決心が出来たからこそスタートが可能になった」のが、日本でのレクサスGSという事になるのかも知れない。

血統書付の新型車

レクサスGSがどうしても「アリストの後継モデル」と認識をされてしまうのは、やはりそのスタイリングに原因があると言えるだろう。従来型アリストの全長 ×全幅とほぼ変わらないサイズのボディは、大胆に後方まで引かれたルーフラインやリアエンドで独特のグラフィックを描くサイドウインドウに、やはりアリストからの血の繋がりを感じさせる。マッシブなボディのリアエンドの造形は、グッと外側一杯に張り出したリアタイヤのレイアウトとあいまって確かに"走りのセダン"をアピールする部分。一方で、そんなリアビューに比べると、ヘッドライトがやや小型化をしたようにも見えるフロントマスクの表情は「もう少し迫力があっても良かったのでは…」とも思わせる部分ではある。

インテリアはさすがに上質感がタップリ。T字型ベースのダッシュボードと高いコンソールで左右席を明確に分割するデザイン手法には、このクルマをあくまでも"ドライバーズカー"に設えたいという強い意図が感じられる。

8気筒と6気筒、おもしろいのは6気筒

走りの個性がキラリと光るのは、実はより排気量の小さなGS350の方。実際このGSシリーズの場合、最高出力という点ではGS430用の4.3L 8気筒ユニットに大きく差をつけるのが、GS350用の3.5L 6気筒ユニットなのである。

確かに、『高級車』らしく常に静粛で、強力ながらも滑らかな加速感を味わえるのはGS430。しかし、より積極的にアクセルペダルを踏み込んだ際には、それにしっかりと応えてくれる感覚を味わえるのはGS350だ。こちらの心臓は6600rpmに設定されたレッドラインまで、何の頭打ち感もないままにゴキゲンなサウンドと共にパワフルに回り切る。「これならMTとの組み合わせで乗ってみたいナ」と思わずそんな事を感じさせてくれるこのエンジンは、最近の日本製ユニットでは稀有な存在だ。

4輪の接地感は常にしっかりと感じられるが、全般的なフットワークの印象は率直なところさほどスポーティという感触ではない。GS430にオプション設定の"アクティブ・スタビライザー"を選択した場合、標準のランフラット・タイヤゆえの脚の硬さが難点だ 。

アメリカでの成功、さて日本では。

これからのレクサスの販売予測を尋ねると「およそ6割の台数をアメリカ市場でさばきたい」というコメントがその回答として返ってくる。日本での営業がスタートを切り、ヨーロッパ市場でもこれまで以上に力を注ぎたいとは言え、やはり『レクサス』はアメリカを軸足としたプログラムである事に変わりはないのだ。

それゆえに、今度のGSもまずは"アメリカで好まれるクルマづくり"となったのは容易に想像が出来るところ。ボディのサイズやエンジン排気量の決定などからしても、まずはそうした考え方の下に決定されたと解釈をすべき一台がこのGSという事になる。

そうした一方でレクサスのブランドを名乗るモデルは、基本的に販売仕向け地による仕様の差を設けないのが特徴とも言う。「世界で通用するものとなってこそ真のプレミアム・モデル」というレクサスの考え方は、それも確かに本質を突いていると言えるだろう。

そんなクルマづくりのスタンスの中で生まれてきたGSが日本でどのような評価を受けるかは、だから大いに興味のあるところ。この後にIS、そしてLSと登場をし、それらを含めて再び全シリーズが次回のモデルチェンジを受ける頃になって、"日本のレクサス"が成功をしたのか否かという解答がようやく得られるはずだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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