ホンダ シビックタイプR VS ルノー メガーヌR.S.どっちが買い!?徹底比較

ニュルFF最速争いを繰り広げるウルトラホットハッチの2台を徹底比較

「スポーツはライバルがいるから楽しい」、それはクルマも同じである。見えない敵相手に戦うよりも、明確な目標があったほうが進化・熟成のスピードは確実に増す。

日本車を振り返ると、そんな宿命の対決が数多くあった。古くは「スバル インプレッサWRX vs 三菱 ランサーエボリューション」の2リッターAWDセダン最速対決や「ホンダ シビック vs トヨタ カローラレビン vs 三菱 ミラージュ」のテンロク最速対決などが有名だが、その流れは日本だけでなくワールドワイドとなった。2007年に登場した日産 GT-R(R35)によるニュルブルクリンク最速争い、そしてホンダ シビックタイプR vs ルノー メガーヌR.S.によるニュルFF最速争いである。

現在、10代目シビックがベースのタイプRが「7分43秒80」を記録、ニュルFF最速の称号を持っているが、ルノースポーツは「やられたらやり返す」と言うことで、4代目メガーヌがベースの「R.S.」が登場。まだニュルのタイムは未計測のようだがそのタイミングを虎視眈々と狙っている状態である。

今回はそんなウルトラホットハッチの2台を多角度から比較してみたいと思う。

>>あなたはシビックタイプRとメガーヌR.S.どっちが好み?写真で見比べてみる

シビックタイプR VS メガーヌR.S.|エクステリア・ボディサイズ対決

まずエクステリアだが、どちらもベース車に対して前後バンパーや空力デバイス、ワイドフェンダーなどの専用アイテムが奢られるが、シビックタイプRはエボリューションモデルのような解りやすいスポーツ、メガーヌR.S.は解る人に解る控えめなスポーツとアプローチが若干異なる。ホンダのエンジニアは「機能を形にしたらこうなった」、ルノースポールのエンジニアは「控えめでもエアロダイナミクスは全く問題ない」と語る。

ちなみにボディサイズはシビックタイプRが全長4560×全幅1875×全高1445mm、ホイールベース2700mmに対して、メガーヌRSは全長4410×全幅1875×全高1435mm、ホイールベース2670mmとどちらもほぼ同じだが、全長の差なのか(!?)パッと見の印象はシビックタイプRのほうが大きく見えるから不思議である。

シビックタイプR VS メガーヌR.S.|インテリア対決

インテリアはエクステリアに対して変更箇所は少なく、どちらもブラックを基調にレッドのワンポイントとスポーツモデル定番のコーディネイトにスポーツシート、ステアリング、シフトノブ、ペダルなど専用品が奢られる。シビックタイプRはレッドの比率が高くエクステリアと同様に解り易いスポーツ性、メガーヌR.S.はスポーツ性だけでなくシリーズのフラッグシップとしてのプレステージ性も備える。

シビックタイプR VS メガーヌR.S.|快適装備対決

どちらも快適装備も一通り用意、5ドアボディやベース車の進化や相まって後席/ラゲッジスペースも十分なスペースを備える。

ナビゲーションはどちらもディーラーオプションだが、現在のトレンドからするとシビックタイプR/メガーヌR.S.共に画面が小さすぎ。特にメガーヌR.S.は本国向けには大型モニターが用意されているのだが……。更にシビックタイプRは海外向けには設定のACCが日本向けにはOP設定すらないのも納得いかない部分だ。

シビックタイプR VS メガーヌR.S.|走行性能対決

パワートレイン

パワートレインは、シビックタイプRが先代モデル(FK2)から採用されている2リッター直噴VTECターボ(K20C)の改良版を搭載しており、320ps/400Nmのパフォーマンス。

メガーヌR.S.は先代の2リッターターボ(F4R)に変わりアライアンスパートナーの日産と共同開発された1.8リッター直噴ターボ(M5P)に刷新。排気量を200cc下げながらも273ps/360Nmから279ps/390Nmとパフォーマンスはアップしている。

ちなみにミドシップスポーツのA110も同エンジンが搭載されるが、メガーヌR.S.のほうが高出力仕様だ。

どちらも実用域の扱いやすさや、環境性能&燃費性能も考慮しながらも、吹け上がりの鋭さや7000rpmまでキッチリと回る特性で、回すほどに気持ち良さも感じられる“新世代”の高性能ターボである。

シビックタイプRは絶対的なパワフルさ、メガーヌR.S.は高回転まで段付きないフラットなトルク特性が特長だ。

トランスミッション

トランスミッションはシビックタイプRが6速MT、メガーヌR.S.が2ペダルのデュアルクラッチ式6速EDCを搭載。ホンダは「ドライバーに操る楽しさを味わってほしい」と言うことからMTにこだわるが、変速時にエンジン回転を自動調整する「レブマッチシステム」をプラスなど、ドライビングミスを最小限に留める配慮も忘れていない。

逆にメガーヌR.S.はCセグメントスポーツハッチ市場の82%が2ペダルモデルなのを考慮した設定だが、ダイレクト感やシフトスピードは言うまでもなく、MTのように“飛ばしシフト”が可能な「マルチダウンシフト」を採用するなどドライビングファンも忘れていない。ただ、メガーヌR.S.は本国に6速MTの設定があり日本にも追加導入されるはず。

シャシー

シャシーはシビックタイプRがグローバルプラットフォーム、メガーヌR.S.はルノー日産アライアンスで共同開発のCMF(コモン・モジュール・ファミリー)をベースにしているが、どちらも基本素性に優れるためノーマルとホワイトボディは大きな差はない。特にシビックタイプRはタイプR初となる「ノーマルと並行開発」によりボディ補強は必要最小限だと言う。

サスペンション

サスペンションはフロントがどちらもトルクステア低減とタイヤの接地性を高める効果のある「2つの軸を持つストラット」を採用するが、リアはシビックタイプRがマルチリンク、メガーヌRSがトーションビーム+4輪操舵「4コントロール」と大きく異なる。

その上、シビックタイプRは「ZFザックス製電子制御ダンパー」と245/30R20サイズの「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト6」、メガーヌRSはダンパー・イン・ダンパーがバンプラバーと同じ効果を持つ「KYB製HCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)」と245/35R19サイズの「ブリヂストンポテンザS001」を採用。

興味深いのはフットワークのアイテムを日本メーカーのホンダは欧州サプライヤー、欧州メーカーのルノースポールは日本のサプライヤーとタッグを組んでいる点だ。どちらもいい物を作るために“従来の枠”に囚われない手法を選んだのが面白い。ただし、ブレーキはどちらもフロントにブレンボ製モノブロックキャリパーを採用している。

ハンドリング

ハンドリングはどうか? どちらも街乗り領域はスポーツハッチとは思えない快適性と穏やかな特性だが、AWDと錯覚してしまうくらいのスタビリティの高さと、FFとは思えない回頭性の良さ、路面を問わずタイヤが路面から離れる気配は一切なく手足のごとくしなやかに路面を捉える足の動き、ステアリングの正確性や懐の高いコントロール性の高さなどを備わっている。

ただ、2台を比べると味付けや考え方の差が明確で、シビックタイプRはどちらかと言うと空力操安も含めたドシッとした安定性の高さを重視しているのに対し、メガーヌR.S.は「FFでも楽しいでしょ?」と言わんばかりのヒラヒラと舞うような感覚と4輪で曲がっている感覚が強い。例えるならば、シビックタイプRはWRX的、メガーヌR.S.はランエボ的と言ったらいいだろうか!? ワインディングで乗る限りはメガーヌRSがシビックタイプRよりもステアリング操舵量は確実に少ないが、このステージがサーキットに変わるとどうなるのか? 気になる所である。

シビックタイプR VS メガーヌR.S.|総合評価

恐らく絶対的な速さに関しては、現時点ではシビックタイプRが勝ちだが、それ以外に関しては甲乙つけがたい。なので、見た目の好みや直感で選んでもらっていい。

ただ、現在日本に導入されているメガーヌR.S.はオールラウンダーな「シャシースポール」で、本国にはより走りに特化した「シャシーカップ」もラインアップされる。更には高出力版(300ps)の「トロフィ」の追加も公言。ニュルのタイムも含めて、最終的な結論はもう少し待ちたい。

シビックタイプR、メガーヌR.S.共に従来の硬派路線を知る人からすれば、「どちらも時代に流された……」と感じる人もいるかもしれないが、実際は甘口になったのではなく「多様性」を増したのと走りの「懐が深くなった」と言うのが正しいと思う。

価格はシビックタイプRが450万360円、メガーヌR.S.は440万円とほぼ同等。「もはや、シビックは庶民のクルマではなくなった」と言う人もいるが、昔のチューニングカー並みのパフォーマンスをメーカー保証付きで手に入れられることを考えたら、むしろお買い得である。

[Text:山本シンヤ/Photo:茂呂幸正]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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