トヨタ 新型クラウン vs メルセデス・ベンツ Eクラス どっちが買い!?徹底比較
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂 幸正
目次
国産高級セダン vs 輸入プレミアムセダン
2018年6月26日に、トヨタ クラウンがフルモデルチェンジを受けた。クラウンは初代モデルを1955年に発売した乗用車の最長寿モデルで、新型は15代目になる。
詳細は「トヨタ新型クラウン/最新情報」で述べているが、新型クラウンは変更点が多い。これまでの、豪華なロイヤルサルーン、スポーティなアスリート、ロングボディで後席が広いマジェスタという区分を撤廃して、1つのシリーズに統合させた。
エンジンもV型6気筒2.5リッターと3.5リッターのノーマルタイプは廃止され、新型クラウンでは直列4気筒2リッターターボ、直列4気筒2.5リッターハイブリッド、V型6気筒3.5リッターハイブリッドの3種類になる。
プラットフォームはレクサス LS/LCと基本部分を共通化した。つまり今後発売されるトヨタの後輪駆動乗用車は、ひとつのプラットフォームを使って開発される。
今はトヨタに限らず、電動化を含めた環境対応、自動運転まで視野に入れた安全や通信機能を開発する必要に迫られるから、さまざまな合理化を図るようになった。
そして新型クラウンには、ユーザーの平均年齢が65~70歳に達する高齢化に歯止めを掛け、メルセデス・ベンツやBMWといった欧州セダンのシェア拡大を食い止める役割も与えられている。
そこで新型クラウンを、輸入プレミアムセダンの筆頭とされるメルセデス・ベンツと比べたい。メルセデス・ベンツには複数のセダンが用意されるが、ここではEクラスを取り上げる。
Eクラスもクラウンと同様、メルセデス・ベンツでは伝統ある車種で、第二次世界大戦直後の1946年に生産を開始した170Vの流れを汲む。1980年代に入って190シリーズが加わるまでは「コンパクトメルセデス」と呼ばれ、Sクラスと併せてメルセデス・ベンツの双璧とされていた。
新型クラウン vs Eクラス|ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較
クラウンは新型になって印象が大幅に変わった。特にボディの後部は、リアウインドウを寝かせて、5ドアクーペと呼ばれるハッチバックのように見える。ボディ側面のウインドウは3分割されて「6ライト」スタイルにした。従来型のトランクフードをしっかりと見せるセダンの典型的なボディ形状に比べると、ユーザーによって好みが分かれそうだ。
一方、Eクラスは外観に丸みを持たせているが、セダンらしい外観に仕上げた。
ボディサイズは、新型クラウンの全長が4910mm、全幅は1800mm、全高は1455mmになる。EクラスのE250アバンギャルドスポーツは、全長4950mm、全幅1850mm、全高1455mmだ。ほぼ同じ大きさだが、新型クラウンは日本の交通環境に合わせて、全幅を1800mmに抑えたことが特徴になる。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、新型クラウンが2920mm、Eクラスが2940mmだ。クラウンは新型になってホイールベースを70mm拡大して、前輪を前方に押し出した。その結果、Eクラスと同様、ボンネットの長さが強調されてフロントまわりが似通っている。
最小回転半径は、2WDで見ると新型クラウンの16/17インチタイヤ装着車が5.3m、18インチタイヤ装着車が5.5mになる。Eクラスは19インチタイヤのE250アバンギャルドスポーツが5.4mで小回りが利く。
Lサイズセダンとあって、両車ともにサイドウインドウの下端は少し高いが、ボディ形状が水平基調だから、側方や後方の視界はさほど悪くない。取りまわし性は僅差だが、全幅を1800mmに設定したクラウンが馴染みやすい。
勝者:新型クラウン
新型クラウン vs Eクラス|内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較
従来型クラウンのインパネは、ロイヤルサルーンに採用されていた強い光沢を伴う木目調に特徴があった。いかにも模造品的で悪口も聞かれたが、ひと目でクラウンと認識された。そこが新型では一般的な形状になり、違和感を抱く人は減ったと思われるが、クラウンらしさも薄れている。
逆にEクラスで最上級のエクスクルーシブには、純粋な本木目パネルが使われ、むしろクラウン的に見える。
質感はEクラスの方が高いが、ATレバーやスイッチ類は、クラウンのデザインがオーソドックスで扱いやすい。メーターの視認性は互角だ。
勝者:新型クラウン
新型クラウン vs Eクラス|前後席の居住性比較
クラウンは新型になってホイールベースを70mm伸ばしたが、前輪を前方へ移したから、拡大されたのは前席と前輪の間隔だ。前席と後席の間隔、つまり居住空間はほとんど広がっていない。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は、新旧クラウンともに握りコブシ2つ半だ。Eクラスにも同程度の余裕があり、車内の広さはほぼ等しい。
そうなると居住性の優劣を決めるのはシートの座り心地だ。前席は新型クラウンもサイズに余裕があり、肩の周辺までしっかりと支える。腰を包むような形状でサポート性も良いが、Eクラスは背中から腰への支え方がさらに絶妙だ。従って長距離を快適に移動できるのはEクラスになる。
後席も同様だが、クラウンは柔軟に感じられて、Eクラスに比べると拘束感が弱いために着座姿勢を変えやすい。長距離移動に適するのはEクラスだが、短距離の移動ではクラウンの方がリラックスできる場合もある。
勝者:Eクラス
新型クラウン vs Eクラス|動力性能&エンジンフィーリング比較
エンジンの種類は、新型クラウンは直列4気筒2リッターターボ、直列4気筒2.5リッターハイブリッド、V型6気筒3.5リッターハイブリッドの3種類だ。EクラスはAMGも含めて多岐にわたり、チューニングの違いまで含めると7種類におよぶ。
従って一概には比べにくいが、直列4気筒2リッターターボの新型クラウンと、EクラスのE250アバンギャルドスポーツは同程度の性能だ。トランスミッションはクラウンが8速AT、Eクラスは9速ATになる。
新型クラウンの2リッターターボは、先代型ではターボのクセが強めで、ATの変速も滑らかさを欠いた。そのためにスポーティなアスリートだけに搭載され、快適性が重視されるロイヤルサルーンには、V型6気筒2.5リッターのノーマルエンジンを組み合わせた。新型では改善を加えたので、ラグジュアリー指向のGでもターボを選べる。
ただしEクラスのE250アバンギャルドスポーツが搭載する2リッターターボは、クラウン以上にターボの特性を抑え、自然吸気の3.5リッターエンジンに近いから運転がしやすい。
新型クラウンの直列4気筒2.5リッターハイブリッドに相当するのは、EクラスではE220dアバンギャルドの2リッタークリーンディーゼルターボか、E350eアバンギャルドスポーツが搭載する2リッターガソリンターボをベースにしたハイブリッドになる。
新型クラウンの2.5リッターハイブリッドは、特徴が乏しい代わりに運転感覚が親しみやすい。対するE220dアバンギャルドのクリーンディーゼルターボは、実用回転域の駆動力が高く、高回転域の吹き上がりも滑らかで魅力的だ。E350eアバンギャルドスポーツは、モーター駆動を終えてエンジンが始動した時の印象が粗く、洗練度に欠ける。
新型クラウンのV型6気筒3.5リッターハイブリッドは、突出したユニットに位置付けられる。動力性能を自然吸気のノーマルガソリンエンジンに当てはめると4.5リッター並みで、Eクラスであれば、E400・4マチックエクスクルーシブが搭載する3.5リッターツインターボに相当する。
直接比較はしにくいが、売れ筋になる2リッターガソリンターボ同士、あるいはクラウンの2.5リッターハイブリッドとEクラスの2リッタークリーンディーゼルターボの比較で考えると、Eクラスの魅力が強い。
勝者:Eクラス
新型クラウン vs Eクラス|走行安定性比較
クラウンは新型になってプラットフォームを刷新して、走行安定性が大幅に向上した。比較的小さな舵角から車両が正確に反応して、進行方向を内側に向けやすい。その上で直進時、旋回時ともに後輪の接地性が優れており、軽快感と高い安心感を両立させた。軽快に曲がる感覚は、クラウンに限らず、日本車全体のドイツ車に対する個性でもある。
ただし走りのバランスが良いのは、直列4気筒2リッターターボと、2.5リッターハイブリッド搭載車だ。V型6気筒3.5リッターハイブリッドは、硬めの足まわりを備えたRSアドバンスでも、高い動力性能と1870kgの車両重量を十分には受け止められない。新型クラウンのシャシーでは、自然吸気エンジンでいえば4リッター弱までが許容範囲だ。3.5リッターハイブリッドには4.5リッター並みの性能と重さがあるから、持て余し気味になってしまう。
その点でEクラスは、5.5リッターくらいまで許容する。また今日のEクラスはAMGも含めて、E400以上には4WDを搭載する。最大トルクが102kg-mに達するV型12気筒6リッターツインターボに、後輪駆動の2WDを(無理矢理)組み合わせるのは、SLクラスのAMG・SL65くらいになった。
勝者:Eクラス
新型クラウン vs Eクラス|乗り心地比較
新型クラウンの場合、17インチタイヤを装着したSやGの乗り心地は柔軟だが、18インチタイヤ専用のRSは硬めに感じる。RSにはショックアブソーバーの減衰力を可変させるAVSも備わり、ドライブモードをコンフォートにすると柔らかい設定になるが、カーブを曲がる時の車両の動きが落ち着かなくなる。
シャシーと足まわりの性能はEクラスが高く、走行安定性と同様、乗り心地でも新型クラウンを上まわる。
勝者:Eクラス
新型クラウン vs Eクラス|安全装備&運転支援機能比較
安全装備、運転支援機能ともに、新型クラウンも充実している。
その上でEクラスでは、アクティブステアリングアシスト作動中に方向指示機を作動させると、車線変更をアシストする機能も備わる。また作動中に両手がハンドルから離れた時は、警告が行われ、ドライバーが反応しないと自動的に停止する。
勝者:Eクラス
新型クラウン vs Eクラス|燃費性能比較
燃費性能の直接比較が可能なのは、2リッターターボになる。JC08モード燃費は、新型クラウンが12.8km/L、EクラスのE250アバンギャルドスポーツが14.9km/Lだ。JC08モード燃費は日本の測定方法だが、ドイツ車のEクラスが勝る。
勝者:Eクラス
新型クラウン vs Eクラス|価格の割安感比較
2リッターターボを搭載する新型クラウンRSアドバンスは、車両価格が559万4400円。EクラスのE250アバンギャルドスポーツが788万円だ。
Eクラスが229万円高いが、装備も充実しており、その金額を補正すると180万円くらいに縮まる。それでも機能や装備と価格のバランスでいえば、クラウンが割安になる。
勝者:新型クラウン
新型クラウン vs Eクラス|総合評価
従来型のクラウンは、高速走行時の安定性などはEクラスに大きく劣ったが、時速100km以下で巡航する時はとても安楽だった。すべての機能が柔らかく、軽く造られ、日本での使われ方に適していた。だからこそ、60年以上にわたり、基本路線を変えずにフルモデルチェンジを繰り返してきた。
しかし、そこに一種の甘えがあったのかも知れない。ユーザーが次第に高齢化してきた。またクラウンの属するセダンのカテゴリーは、海外指向を強めて日本での存在感を薄れさせた。クラウンは売れ行きが唯一堅調な高級セダンだが、セダン全般がここまで売れなくなると、クラウンにも良くない影響を与えてしまう。
そこに隙ができて、メルセデス・ベンツなどの輸入セダンがシェアを拡大してきたから、クラウンも路線を変えてEクラスに対抗している。走行性能は互角に近づき、安全装備も進化したが、クラウンの個性は薄まってきた。
それでも新型クラウンの2リッターターボRS、2.5リッターハイブリッドのS・Cパッケージは、高級セダンとして買い得だ。価格が600万円以下を条件にするなら、クラウンの推奨度が高い。
逆に予算枠を750~800万円まで拡大する時は、Eクラスを積極的に検討するのが良いだろう。つまりクラウンとEクラスでは、依然としてセダンの中での位置付けが異なるわけだ。
勝者:新型クラウン
[TEXT:渡辺 陽一郎/PHOTO:茂呂 幸正]
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