アウディ R8スパイダーに試乗|過激なのに扱いやすいオープンスーパースポーツ(1/2)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂 幸正/和田 清志
2代目R8に遅れて登場したスパイダーにいよいよ試乗
アウディのフラッグシップスポーツ「R8」の2世代目となる現行モデルは、2016年のクーペに次いで、2017年にスパイダーが登場した。初代スパイダーが日本には2010年より導入されたので、7年目のモデルチェンジとなる。
スタイリングはクーペと同じく初代のキープコンセプトであるのは見てのとおりだが、37個ものLEDを備えたマトリックスヘッドライトや、ミッドシップであることを視覚的もアピールするエアインテーク部のサイドブレードなどは、クーペと同様に新鮮味がある。LEDリアコンビライトの間にはハニカムグリルが配されていて、クーペとは異なる表情を見せている。
ヘッドレストには専用のスピーカーが内蔵され、オープンドライブも快適
ドライバーを包み込むかのように設計されたスタイリッシュなコクピットは、あまり攻めすぎたデザインになっていないあたりもアウディらしい。メーターパネル内の12.3インチTFTディスプレイカーナビゲーションをはじめさまざまな情報を表示できる先進的なバーチャルコクピットを備えるのはもちろん、ヘッドレストにスピーカーを内蔵し、オープンカーであるこのクルマのために音場特性をチューニングしたBang &Olfsenのサウンドシステムも用意されている。
油圧電動式ソフトトップについても進化している。コンパートメントカバーはCFRP製で、フレームにアルミニウムと鋳造マグネシウムを採用して約44 kgと軽量に仕上がっている。この部分の重量というのはオープンカーにとっては非常に重要で、軽ければそれだけ走りへの影響も小さいのはいうまでもない。開閉に要する時間は約20秒。50km/h以下であれば走行中の操作も可能で、開けると後方まで何もなくなるので、解放感は絶大だ。一方で、閉じると遮音性に優れるクロスのおかげで固定式ルーフのように外界と隔離された感覚となる。
8700rpmのトップエンドまで猛々しく吹け上がるV10エンジン
目に見えない部分も全面的に刷新されて大きく進化している。アルミとCFRPを組み合わせた新世代の「ASF(アウディ スペース フレーム)」の総重量はわずか208kg。ねじれ剛性は初代に比べて50%も向上している。
R8はアウディ傘下にあるランボルギーニのウラカンと共通性が高いことはご存知のことだろうが、エンジンについてはこれにポルシェも含め、それぞれグループ内で担当する領域があり、R8に搭載される自然吸気の5.2リッターV10FSIはランボルギーニ製となる。ただし、スパイダーは540ps版のみの設定で、クーペにある610ps版の「プラス」は選べず、また初代のクーペにはあったV8も、将来的にはどうなるかわからないが、いまのところ設定はない。
そのV10ユニットは、優等生イメージのアウディとしては異例なほどの猛々しいエンジンフィールが持ち味だ。最高許容回転数は8700rpmと高く、実際の性格もかなり高回転型で、その醍醐味を7速DCT「Sトロニック」がシームレスにつないであますところなく引き出してくれるのがうれしい。いまや貴重な大排気量の自然吸気エンジンは、右足の動きとダイレクトにリンクしたかのような鋭いレスポンスも超一級品だ。
そして、迫力あるエキゾーストサウンドとともに勢いを衰えさせることなくトップエンドまで吹け上がる圧倒的なパワーフィールを味わわせてくれる。とはいえ決して派手すぎないところもまたアウディらしい。一方で、こうしたクルマでありながら低負荷時にエンジンの片バンクを休止させる「COD(シリンダー オンデマンド)」や、アクセルオフ時にエンジンを駆動系から切り離して燃費を稼ぐコースティングモードを採用しているあたりも時代を感じさせる。
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