アルファ ロメオ ジュリエッタ Ken Okuyama Speciale ミニ試乗レポート／今井優杏(3/3)

コックピットは“少年の遊び場”風

さて、乗り込んでみるとそこにはアルファロメオの持つ濃厚な世界観に出会うことが出来る。インテリアはノーマルモデルと共通しているが、個人的にアルファの良さはこの内装にこそあるような気もする。ドライバーコンシャスでありながら、どことなく“少年の遊び場”風の、抜け感漂うコクピットには滑り込むたびにワクワクさせられてしまうのだ。

「熟成された安定感」を醸し出すAlfa TCT

1.4リッターターボのマルチエアエンジンは今乗っても全く古さを感じさせないパワフルなトルクを生む。生き馬の目を抜く近年の新車の進化スピードはすさまじく、ちょっと前のクルマなら古く感じてしまうのも常だが、この1.4リッターターボの印象は初めて試乗した3年前と寸分のズレがなく、そのことにまず驚いてしまった。なんと面白いエンジンを作るんだろう。その錆びなさがアルファロメオの面白いところでもある。

乾式クラッチディスクを2組備えたツインクラッチTCTとの相性だって設計の旧さを感じるものではない。むしろ熟成されたことから安定感すら醸し出す。

キュンキュンと前に飛び出すような加速

アルファロメオといえばシフトノブ上部に据えられたD.N.A.システムなるスイッチだが、この味付けのハッキリきっぱりした差の付け方も、いかにもイタリア人が好みそうな極端さで、改めて愉快だった。

これはドライビングダイナミクスをワンアクションで変えられるものなのだが、dは「ダイナミック」、nは「ナチュラル」、aは「オールウェザー」と、笑点並みに上手な語呂合わせになっている。aは雪道や悪天候時など、グリップが下がったときの緊急時モード。普段そんなに頻繁に使いはしないが、このボタンがあることを覚えておけばいざというときに慌てる度合いが一段階くらいは下がりそうだ。

もっともオススメなのがもちろんdモードで、ステアリングやアクセルのレスポンスが高まり、シフトチェンジのタイミングを早めてくれるもの。今入っているよりも一段下のギアをチョイスしてくれるので、かなりキュンキュンとしたマニュアルライクな走行が楽しめるのだ。もちろん一段低いギアだからこそ、ただでさえ野太めのサウンドが過剰に演出されているようにすら感じられる。このキュンキュンと前に飛び出すような加速感は、外観のヤンチャさにも似合うものだと思う。

対してブレーキはやや鷹揚なので気を付けたい。かっ飛ばして止まれなかったら笑い事じゃない。これだけ派手なルックスなんだから、取り回しはジェントルにしたほうが洒落ているのじゃないだろうか。

久しぶりに試乗して、改めてこのクルマの魅力を味わった気がする。じゃじゃ馬感をふんだんに漂わせた見た目の期待を裏切らぬ、本気の小悪魔っぷりは健在だった。