ポンプ車(消防車)
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火事の火を消化するためにもっとも大事な消防車“ポンプ車”
放水開始!牛込消防署の主力車両「ポンプ車」であります。
ポンプ車とは文字通り、消火のための水を汲み上げるポンプの役割を果たす車両で、消火栓や防火水槽の水を毎分2000ℓ以上、地上30mの高さまで放出する性能を持つ高圧ポンプを内蔵しています。
ベース車両は日野レンジャーで、搭載されるエンジンの排気量は6403cc、直列5気筒のディーゼルターボ。NOxとPM値は新長期排出ガス規制値-10%を達成し、低燃費と低公害を両立させた新世代のユニットです。といっても普通乗用車のような低燃費ではないですが。
ボディサイズは全長6.6m、全幅2.3m、全高2.8mで、車重は7.870kg。消防車としては中級サイズですが、これは消防署が置かれる周辺地域の特性に合わせたもの。牛込消防署の周辺は、比較的狭い路地が多いため、小回りの良さが重視されます。
燃料タンクの容量は100ℓ(例:乗用ミニバンが約60ℓ)と意外に小さめですが、都心部の消防署に配備される消防車の場合は遠距離を走ることは滅多にないので、この容量で十分なのです。燃料は、移動のために使用されるよりも、現場でポンプを稼働させるためなどに使われる分のほうが多い場合があります。
ちなみに、牛込消防署には燃料補給用のスタンドが備わっているので、常に満タン状態で出動可能です。
狭い路地でもスイスイ!長いホースを運ぶEVホースカー
牛込消防署では、このポンプ車に4名からなる第一小隊員が搭乗しますが、火事の現場のすぐ近くに消火栓や防火水槽があるとは限らないので、基本的には5名からなる第二小隊員が搭乗する「水槽付きポンプ車」とのペアで出動し、現場で連携させて消火作業にあたります。
ポンプ車のみだと、火事現場の周辺に消火栓があったとしても、汲み上げやポンプ内の空気を抜く作業などにより、若干時間がかかってしまいますが、水槽付きポンプ車との連携状態ならば、現場に到着してからすぐに消火作業を開始できるというメリットがあります。水槽付きポンプ車には1000~2000ℓの消火水が搭載可能で、この消火水を使っている間に、足りない分を消火栓や防火水槽から水を汲み上げるのです。通常では、火事現場の近くにあるいくつかの消防署から最低5~6小隊は現場に出動するそうです。
ポンプ車の給水口、放水口は両サイドに備えられ、1つあたり毎分500ℓの水を給/放水できます。ポンプ車の後部には「ホースカー」が装備され、このホースカーによって約280mのホースを火事現場の付近まで延ばせます。ホースカーは電動スクーターのように操作します。満充電状態で、連続1時間程度の稼働が可能です。
ポンプ類はコンピューターによって緻密に制御され、操作方法も人間工学に基づいたものになっており、万が一にもミスがでないように配慮された設計となっています。
常に準備は怠りません!隊員は毎日が消防訓練です!
この牛込消防署で消防車が災害出動するのは、1日に数回程度(冬場は多いというイメージがありますが、必ずしもそうではないようです)ですが、当然ながら消防署員は火事がない日でも毎日訓練を行います。隊員たちは日々の訓練により、各部の操作について熟練し尽くしているので、そもそも人為的なミスは非常に起こりにくい状況にあるといえるでしょう。
万が一にも故障などのトラブルがあってはならないため、手入れや整備についても、「これ以上入念に行うのは不可能」という高いレベルで励行されております。今回撮影したポンプ車は平成20年式ですが、全身はおろしたての新車のようにピッカピカ。ボディの隅々はおろか、ホイールやタイヤの細部にいたるまで徹底的に磨き込まれており、どんな些細なトラブルも未然に防ごうとする姿勢が現れていました。金属部分も、専用のクリーナーで入念に磨き込まれております。
運転席まわりは、同系統のトラックと大差なく、特殊な装備はありませんが、出動時の情報を入力するコンピューターが備わっております。消防車のミッションは、MT車のイメージがあったのですが、実は東京消防庁内の消防車は、平成3年頃にはおおむね全車AT化されたとのこと。キャビンは、隊員たちの防具や酸素ボンベを搭載するため、居住空間はゆったりとしたものでありました。
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