フォルクスワーゲン ゴルフR32 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン
フォルクスワーゲン ゴルフR32 海外試乗レポート
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ゴルフに乗っている事を忘れさせるほどに上質な乗り味

R32の、コンパクトさが売り物のバンク角わずかに15度という狭角V6エンジンに火を入れる。と、わずかなクランキング後の完爆の瞬間に耳に届くGTIを含む4気筒のゴルフとは全く異質なサウンドに、早くもこの時点でこのモデルが「特別な一台」であるのをいやでも認識させられる。

前述2本のテールパイプから放たれるのは、ズ太くも乾いた上質な管楽器が奏でるかのような魅惑的なサウンド。聞けばこうしたサウンドに至るまでのチューニングには大いなる苦労があったとの事。その甲斐あって、R32のエキゾーストノートはぼくの知る限り「6気筒モデル中最上の部類」と報告が出来るものだ。些細なポイントと思われるかも知れないが、一方で「これはGTIに対する大きなアドバンテージ」と受け取る人も少なくないはずだ。

3.2Lという“大排気量”のお陰で、スタート時の力強さは十二分。プラス2気筒の心臓に加え4WDシステムを抱える事からGTIに対する重量差は180kgほどと小さくはないが、こうして低回転域から太いトルク感が味わえるのはやはり自然吸気エンジンならではと言っても良いだろう。ちなみにこの心臓の320Nmという最大トルク値は、GTI用エンジンの280Nmを大きく上回る。

今回のテストドライブはゴルフではすでにお馴染みのDSG車で行ったが、GTI/GTXという4気筒のターボ付きモデルでは時に意識をさせられた走り出しの一瞬のクラッチの唐突なつながり感が、このクルマではほとんど気にならなかった事も付け加えておこう。

そこから先、アクセルペダルのさらなる踏み込みと共に力強く、かつシームレスに続く息の長い加速感は、うっかりするとゴルフに乗っている事を忘れさせるほどに上質感に富んだもの。6気筒エンジンの優位性を特に感じさせられるのはこうした場面でもある。

225/40R18というサイズのタイヤを履く事もあり、低速域で路面凹凸を拾った際の上下Gはさすがにややきつめに感じられる。が、ある程度スピードが乗り制限速度が100km/hというドイツの郊外道路を流れるようなシーンになると、それは驚くほどにしなやかな印象へと変わってくれる。だから、アウトバーン上での快適性の高さは、際立つ直進性もあってゴルフ・シリーズの中でも圧倒的という感覚。高速クルージングは得意中の得意科目で、このまま燃料タンクが空になるまで疲れ知らずでどこまでも走り切れてしまいそうだ。

アクセル開度が小さな領域では先のエキゾーストノートも影を潜め、静粛性はなかなか。すなわち、ここでもR32は「ゴルフに乗っている事を忘れさせる」乗り味を提供してくれるわけだ。

今回はテスト時間等の関係から、ワインディング・ロードを心行くまで走らせるという経験は叶わなかった。が、撮影のためごくわずかな屈曲区間を往復した印象で言えば4輪の接地感はすこぶる高く、いわゆる“オン・ザ・レール”という感覚がとても強かった。

剛性感に富んだタッチのブレーキが瞬時に速度を落としてくれるのも素晴らしく、ここは生粋のスポーツカー的テイスト。「クルージングが得意科目」とは言っても、総合的にはなかなか骨太な走りの感覚の持ち主がこのR32でもあるのだ。

確かに、「ゴルフは4気筒の方がお似合い」という意見を持つ人も多いとは思う。そして、そんな人の気持ちはぼくもとても良く分かるつもりだ。一方で、こうしたゴルフらしくないゴルフにも独特の魅力があるのも事実。R32とは、そんな新しい時代に向けた“ゴルフの皮を被った狼”と紹介が出来る一台かも知れない。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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