フォルクスワーゲン イオス 試乗レポート

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フォルクスワーゲン伝統の4シーター・パッケージングを継承

フォルクスワーゲン社を代表するオープン・モデルといえばそれはゴルフ・カブリオレ――往年の“ビートル・カブリオレ”のポジションを受け継いだその初代モデルが誕生したのは1979年の事。そんな長いゴルフ・カブリオレの歴史をさらに受け継いで新たに独立したモデルとしてスタートをしたのが、ブランニュー・モデルの『イオス』というわけだ。

ロールオーバー・バー付きのボディにシンプルなソフトトップ式のルーフ・・・と、言わばそんな“古典的”なエレメントを用いる事が特徴であった歴代ゴルフ・カブリオレに対し、同じく4シーター・パッケージを採用するイオスが最も大きく異なるのは、やはりそのルーフ・システムがリトラクタブル式のハードトップである点。耐候性や防盗性に優れるといった実利面も踏まえ、特に欧米で最近人気の高いオープン・ルーフシステムが格納式のハードトップ。歴史ある“フォルクスワーゲン製のオープンカー”もそんな世の中の流れには逆らえなくなった、というのが本音だろう。

「フォルクスワーゲンのオープンカー・ラインナップ中には、すでにソフトトップを用いるビートル・カブリオレも存在しているから」というのもイオス開発の後押しの理由になったと聞く。昨今の市場動向を見据えた上でフォルクスワーゲン伝統の4シーター・パッケージングを継承したオープン・モデルがイオスというわけだ。

道行く人にも見せるデザイン

“ワッペングリル”を採用のフロントマスクやプレーンでシンプルなリアビューのデザインなど、イオスのエクステリア・デザインはどこから見ても明らかに“フォルクスワーゲンファミリー”の一員らしさをしっかりとアピール。そして、そんなイメージはインテリアにも共通する。オープン・モデルゆえにそこに用意をするカラーリングなどに「道行く人にも見せるデザイン」への意識も感じられはするものの、基本的にはまず機能性を最優先させたのがイオスのインテリアだ。

ルーフトップ部分を“3段重ね”にしてトランクルーム内へと格納するという凝った方法を採るお陰で、開放されるルーフ面積が大きいためウインドシールドの傾斜もさほどきつくはない。この種の4シーター・オープンカーとしては前席でもオープン時には強い開放感に浸れるのがこのモデルの大きな特徴だ。と同時に、ガラス式のサンルーフも用意をするのでクローズ時でも明るい室内を楽しめるのもイオスならでは。ただし、複雑な開閉動作のために“変身作業”には30秒近くを要するので「信号待ちで気軽にルーフを脱ぎ捨てて」とはなかなか行かないのは残念だ。後席スペースは4シーター・オープンカーの中では広い方。ただし中央寄りに座るために足元のトンネルの膨らみが少々鬱陶しい。

クローズ時の静粛性は特筆したいほどに高い

日本に導入されるイオスが搭載をするのは、ゴルフR32が積む最高250psを発する3.2リッターのV型6気筒、もしくはゴルフGTIが搭載する最高200psのターボ付き2リッター直列4気筒という2タイプのエンジン。2ペダル式を用意しないとユーザーを獲得しにくい現在の日本の市場性に合わせ、それらに組み合わされるトランスミッションはフォルクスワーゲンが“DSG”と呼ぶツインクラッチ制御の6速MTに限定をされる。

「システム全体で80kg」というルーフ・システムの採用や、より長いボディにオープン化に伴う補強策を投じているために、同エンジン搭載のゴルフよりも軽く100kg以上も重さを増したイオスの動力性能は、さすがに同エンジン搭載のゴルフほどには軽快とは言いがたい。それでも、絶対的な加速力は何の不足感も覚えないもの。中でも、6気筒エンジンを積む『V6』は加速の滑らかさやスポーティなサウンドが印象に残る。

クローズ時の静粛性は特筆したいほどに高い。しかしルーフを開くと、そのオープンカーとしてはまずまず高かったボディの剛性感が明確にダウンをしてしまう点は付け加えておきたい。ちなみに、後席部分に装着するウインドストッパーを使わなくても、4枚のサイドウインドウを上げれば100km/h程度まででの風の巻き込みはさほどひどくない。ウインドシールド上部には手動式のディフレクターが格納されるが、これはサンルーフを開いた際のバサバサ音を抑制するもので、オープン時に使うと巻き込みが逆効果だった。

ファミリーカーとしても大人4人のドライブでもOKな“欲張りな一台”

日常的にはゴルフ同様のファミリーカーとして使用が可能で、いざとなれば大人4人のドライブもさほど無理なくOK。そして、そのままスイッチひとつでフルオープンの状態にもなる・・・という“欲張りの1台”がこのフォルクスワーゲン発のニューモデルであるイオスだ。なるほどそれは、特に静粛性や空調の効きなどの快適性面ではソフトトップを用いるこれまでのゴルフ・カブリオレを大きく凌ぐ性能の持ち主。昨今、多くの人がリトラクタブル式ルーフの方を支持するのも当然ではありそうだ。

一方で、クローズ時のスタイリングは余りにもクーペ(ハードトップ)然としているために、「屋根を閉じた状態でのオープンカーならではの雰囲気」という“風情”はもはや楽しめそうにない。せっかく4人が乗れる居住空間を確保しながら、ルーフを開くとラゲッジスペースが極めて小さくなってしまうのも今後解決すべき課題だろう。それほど皆が“クーペ・カブリオレ”に熱中をするならば、ウチは敢えてソフトトップを復活させよう――あるいは近い将来、そんな事を考えるメーカーも現れるかも知れない。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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