トヨタ 新型ヴォクシーZS 試乗レポート|デビュー4年目のマイナーチェンジでどこが変わった!?(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
マイナーチェンジで乗り心地や快適性が向上した新型ヴォクシー
新型ヴォクシーZSの乗り心地を確認すると、上下に揺すられる印象が伴い、路面の段差を乗り越えるとショックを相応に伝える。それでも以前の路上の細かなデコボコを拾うような粗さは抑えた。改善の効果はそれなりに分かる。スライドドアにシールを追加した効果もあり、タイヤが路上を転がる時に発するノイズが車内に伝わりにくくなった。乗り心地を含めて快適性が向上している。
走行安定性は以前と同程度だが、全高が1800mmを上まわるミニバンとしては満足できる。日産セレナに比べると、ハンドルを切った時の鈍さを抑え、車両がおおむね自然な印象で向きを変える。峠道では少し曲がりにくく感じるが、旋回軌跡が外側へ大きく膨らむ性格ではない。ミニバンでは走行性能はあまり重視されないが、走行安定性や操舵感と乗り心地のバランスは大切だ。動きが鈍いと運転中の気分が冴えないだけでなく、運転の仕方までルーズになりやすく、危険を誘う心配もある。だからといって反応の緩さを払拭させると、3列目シートに座る同乗者の揺れが拡大して不快感を生じかねない。
現行ヴォクシー/ノア/エスクァイアは床面地上高を360mmに抑え、ステップワゴンよりも若干低い。セレナに比べると80mm程度は下まわる。そのためにフラットフロア構造のミニバンでは重心が低く、安定性と乗り心地のバランスを向上させやすい。乗り心地はもう少し改善の余地を残すが、標準ボディの15インチ装着車は、ヴォクシーZSの16インチよりも柔軟な印象だ。快適性を重視するなら、販売店の試乗車を乗り比べた上で15インチを選ぶ手もある。
マイナーチェンジではエンジン性能に変更なし
新型ヴォクシーのエンジン性能は、マイナーチェンジ以前と変わらない。2リッターの自然吸気エンジンに車両重量が1600kgのボディを組み合わせたから、十分な性能とはいえないがミニバンの平均水準には位置する。ノイズの伝わり方は、改良を受けて少しマイルドになった。
ヴォクシーで注目されるのは、前述の低く抑えられた床面だ。重心を下げるだけでなく、乗降性も向上させた。また床を低く抑えたことで、3列目シートに座っても、床と座面の間隔が十分に確保されて腰が落ち込みにくい。現行型のヴォクシーは全長の拡大によって足元空間の狭さも解消され、3列目にスライド機能を装着したセレナに近い居住性を備える。ただし試乗車のヴォクシーZSのシート生地は少し滑りやすいので、もう少しサポート性を高めると良いだろう。
自動ブレーキ「トヨタセーフティセンスC」にも歩行者検知機能が欲しい
いくつかの不満点もあるが、それでもヴォクシーは、ミドルサイズミニバンとして機能が総じて高いクルマだ。冒頭で述べた好調な売れ行きも納得できる。そうなると緊急自動ブレーキを作動できる安全装備のToyota Safety Sense C(トヨタセーフティセンスC)が、歩行者を検知できないのは困る。大量に売れるクルマにこそ最先端の安全装備を与え、交通事故の発生を積極的に抑制する必要があるからだ。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:小林岳夫]
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