トヨタ 最新の安全技術を公開 -トヨタ 東富士研究所 現地レポート-(4/9)
- 筆者: マリオ 二等兵
ダミー人形(THAMS/サムス)
トヨタの東富士研究所内には、280m×190mの広大な衝突実験棟が設けられており、本社と合わせると年に1600回も衝突実験を行っています。
クルマ同士の衝突(様々な角度からの正面オフセット/側面など)やバリア(コンクリートの塊)衝突、転倒、池への転落など、実際に起こりうる様々な衝突を想定した実験が行われていますが、そこで重要な役割を果たすのが衝突実験用ダミー人形。
トヨタは1997年からサムス(THUMS/Total HUman Model for Safety)と呼ばれる実際の事故に近いシミュレーションをコンピューター解析できるバーチャル人体モデルを開発し、大きな成果を挙げてきました。
サムスは骨格・靭帯・腱などを人体に近い状態で再現し、各部位にセンサーを装備。
衝突事故における乗員や歩行者の傷害のメカニズムを解析しています。実験で得られたデータは、側面衝突時のエアバッグや、追突された時のむち打ち傷害を低減するシート(WILコンセプトシート)の開発などに活用されてきました。
標準的な日本人男性の体型から小柄な女性、6~10歳までの子供、妊婦や欧米の男性まで、サイズや体格を分けると21種類が用意され、東富士研究所だけでも約70体、本社も合わせると約200体のダミーを所有しているとのこと。
現在では他の自動車メーカーや研究機関に有償提供され、世界各地で活用されているようです。
2009年に開発されたバージョン4では肺や心臓、肝臓などの内臓器官、さらには脳や眼球などへの衝撃も詳細に解析できるようになりました。38チャンネルの普及型でも一体1500万円、200チャンネルの最新型では一体2億円もするとのことで、まさに最先端の解析技術の結晶のような存在です。
衝突の実験に使うのがもったいないほどの高額人形ですね。 サムス君たちは今後も改良を重ねてより人間に近くなっていき、我々人間のために日々模擬事故に遭ってくれるのですが、そのうち「痛み」や「感情」までリアルに再現されてしまうと、実験現場は壮絶な雰囲気になりそう・・・。
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