日本にない日本車/トヨタ タンドラ(3/3)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史
(エピソード1)
「タンドラ」が登場する前まで、アメリカ人はよくこんなことを言っていた。
「日本のピックアップトラックはダメだ、だってV8がないんだから」
それまで北米トヨタのピックアップトラックは、「T100」のV6エンジンが最大サイズだった。
では、何故V8がないとダメなのか。
それは、実用としてトーイング・ケーパビリティ(牽引能力)では「V8」がベターであり、ステイタスシンボルとして「V8」の方が「V6」よりカッコいいとアメリカ人は思ってきたからだ。
ところが、最近になって「V6」信仰のアメリカ人が増え始めた。今年1月に新たに投入されたフォード「F150」V6モデルの売り上げが好調。ガソリン高による節約効果が第一の理由となる。
「タンドラ」でも、「V6強化策」が検討されるだろう。
(エピソード2)
テキサス州の、とあるトヨタディーラー。
そのショールームに「タンドラ」が展示されている。しかし、展示といってもボディがない。プラットフォーム(車体)+パワートレインだけなのだ。
しかも、ライバルのフォード「F150」、シボレー「シルバラード」、ダッジ「ラム」も、「タンドラ」同様にボディがない状態で並んでいるのだ。
そしてこの展示では、「いかにタンドラの各部が頑丈に出来ているか」を説明している。
サスペンションの接合部分、ステアリングギアボックス周辺など、ピンポイントで「タンドラが最もタフな造りだ!」と強調している。
フルサイズピックアップトラックの商品選び、決め手は「タフネス」なのだ。
(エピソード3)
「タンドラ」の製造工場は、テキサス州南部のサンアントニオ。
同地は温暖な気候で、観光地としても知られている。市内中心部のホテルは運河でつながり、そのほとりにはレストランがひしめいている。そのため、製造業は盛んではない。
トヨタが同地郊外に「タンドラ」用の組み立て工場の建設を決めた際、課題は組立工の教育だった。
組立工として応募してきたほぼ100%の人が、製造業未経験者だったのだ。前職はホテル従業員、不動産業、飲食業などサービス業ばかり。
そこでトヨタが行ったのが、「おもちゃの車の組立て練習」だ。それを、研修というイメージではなく、ゲーム感覚で行ったのだ。
グループ毎に分かれ、ヨーイドン!で作業開始。最初はどのグループもあたふた、どたばたしていた。だがシロート集団でも、毎日の反復練習で徐々に上達。見事に規定タイムをクリアしたグループはハイファイブ(お互いが手を高い位置で叩いて喜ぶこと)で満面の笑顔。
いまでは、同工場もトヨタ品質をしっかり保持し「タンドラ」の生産を続けている。
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