トヨタもビックリ! 自動運転で自動車産業構造が根底から覆る危険性

トヨタもビックリ! 自動運転で自動車産業構造が根底から覆る危険性
画像処理で優れた演算能力を持つGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手であるNVIDIA(エヌビディア) 画像処理で優れた演算能力を持つGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手であるNVIDIA(エヌビディア) 画像処理で優れた演算能力を持つGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手であるNVIDIA(エヌビディア) NVIDIA(エヌビディア)がトヨタ向けに人工知能(AI)を活用した自動運転用のプラットフォーム(基盤)「DRIVE PX」を提供すると発表 自動運転の未来図 自動運転の未来図 自動運転の未来図 自動運転の未来図 HEREは2013年ごろから自動運転時代を見据えて、高精度三次元地図の生成用に数百台の車両を世界各地に配備 三次元(3D)地図を生成するには、レーザーレーダー(通称ライダー)を主体としたセンサーによって高い情報量によるデータ収集が必要 画像ギャラリーはこちら

シリコンバレーを震源のトヨタショック

画像処理で優れた演算能力を持つGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手であるNVIDIA(エヌビディア)画像処理で優れた演算能力を持つGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手であるNVIDIA(エヌビディア)

2017年5月、シリコンバレーを震源地として自動運転に関する地殻変動が起こった。

まず、世界最大の半導体メーカーのインテルが、自動運転の開発拠点をメディアに公開し、開発の最新動向について詳しく説明した。

インテルは2017年1月、車載用単眼カメラを使った画像認識技術の開発でシェアをほぼ独占しているイスラエルのモービルアイを約1兆7000億円あまりで買収する協議に入ったことで大きな話題となった。モ―ビルアイの技術は米GMやスウェーデンのボルボの他、日産プロパイロットやマツダi-ACTIVSENSEにも採用されている。そのため、モービルアイを丸買いしたインテルが、自動運転に対して今後どのような事業戦略を仕掛けてくるのか、自動車メーカー各社はその動向を戦々恐々と見守っている状況だ。

その翌週には、画像処理で優れた演算能力を持つGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手であるNVIDIA(エヌビディア)が開催した年次開発者会議の中で、トヨタ向けに人工知能(AI)を活用した自動運転用のプラットフォーム(基盤)「DRIVE PX」を提供すると発表した。

もともとエヌビディアは、ゲーム向けの画像処理でシェアを伸ばしたが、2010年代に入り独アウディや独BMWとの関係を深め、ディープラーニングと呼ばれる人工知能の技術で自動運転ビジネスに本格参入してきた。

今回、エヌビディアとトヨタの発表では、近年中の量産型自動運転を踏まえて「DRIVE PX」を活用した研究を進めるとした。このニュースは両社の株価へも影響を及ぼしたほどで、トヨタショックといえるサプライズであった。

さらに市場が驚いたのが、この発表の後、ソフトバンクがエヌビディアの第四位の大株主であることが判明し、一部報道ではソフトバンクがエヌビディアの株式の買い増しを検討していると伝えた。ソフトバンクとしては2016年7月、半導体大手の英ARMを3.3兆円で買収しており、今回のエヌビディアへの一件は、孫正義氏が進めているAI産業への積極的な投資の一環とみられる。

自動運転で半導体が注目される理由

三次元(3D)地図を生成するには、レーザーレーダー(通称ライダー)を主体としたセンサーによって高い情報量によるデータ収集が必要

では、どうしていま、自動車産業と半導体産業が急接近しているのか? そのきっかけとなったのが、前述の通り、自動運転である。

自動運転というコンセプトは、アメリカで1930年代から存在し、第二次世界大戦後の1950年代にはGMが実車による走行実験を行っている。また1980年代にはトヨタやメルセデスなどが自動運転に関する基礎研究を始めたが、乗用車による本格的な実験が実施されたのは2000年代に入ってからだ。さらに、近年の自動運転ブームは2012~2013年頃からと極めて歴史が浅い。

自動運転の開発が本格化した理由には、3つの技術的要素の急激な進化が挙げられる。

1つ目は、コンピュータの演算能力の向上だ。インテルやアップルがPC(パーソナルコンピュータ)向けに開発したCPUは、エヌビディアのGPUなどが、半導体の高性能化と小型化、そして低電力化を実現したからだ。

2つ目は、AI(人工知能)を活用した画像認識技術が発達し、モービルアイなどの新興企業が独自のアルゴリズムを開発した。

そして、3つ目は、『自動運転の日独戦、「ハノーバー宣言」で地図データの覇権争いに終止符か』と、本サイトで既報の通り、高精度三次元地図の実用化が進んだことだ。

つまり、AIを有効に実行するため、また高精度三次元地図に対するセンシングやデータ解析に対しても、半導体の高性能化が必然であるため、自動運転における半導体メーカーの立場が強固なものになったというわけだ。

既存のサプライチェーンは崩壊する!?

自動運転の未来図

こうして、半導体メーカーの存在感が急激に高まっている自動車産業では今後、サプライチェーンの大変革が起こる可能性が十分にある。

既存のサプライチェーンとは、最終組立産業としての自動車メーカーが最上位にいて、その下にティア1と呼ばれる大手部品メーカー、その下にティア2、ティア3、ティア4という”下請け体質”で構成されている。

半導体メーカーはこれまで、電装関連のティア1へ部品の納入するティア2に過ぎなかった。だが近年は、モービルアイやエヌビディアの事例のように、半導体メーカーが自動車メーカーと直接、技術的な交渉をすることが当たり前になってきた。また、半導体メーカーはクラウドビジネスへの関与も大きいため、データによる商流を考えると、半導体メーカーは自動車メーカーよりも上位にいる場合もあり得る。

つまり、自動車産業がこれまでの機械産業から、ビッグデータを活用するデータ産業への転換が求められている中、既存の自動車産業サプライチェーンは事実上、崩壊してしまうのだ。

こうした大変革の動きに対して、最も大きな危機感を持っているのがティア1である自動車部品大手だ。そのため、日系企業ではトヨタ系のデンソーやアイシン精機などがAI関連の研究施設の強化を打ち出している。

自動車産業にとって史上空前の大変革期へと本格突入したいま、既存の業界図式が崩れ、新たなるビジネスチャンスを狙い弱肉強食の戦いが始まった。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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