いったい何が!?日本が焦る完全自動運転の実用化、国家戦略「7年前倒し」の舞台裏(2/3)
- 筆者: 桃田 健史
まさかの「7年、前倒し!」
2016年上半期の時点でレベル2については、トヨタ「セーフティセンス」や、ホンダ「センシング」などの量産が本格化してきた。また、自動レーン変更では、テスラやダイムラーが2016年中に製品が完成しているなど、「ロードマップ2015」で描いたイメージよりも量産のペースが1年ほど早い印象だ。
そのため「ロードマップ2016」では、そうした市場の実情を盛り込んで、レベル2を「市場化済」と記載し、自動レーン変更は2017年には各メーカーから量産品が出揃うという解釈を示した。そして、レベル3は「2020年を目途」として、「ロードマップ2015」を継承するに止めた。
ところが驚いたことが起こった。レベル3のさらにその先、レベル4に対する大規模な表記改定が行われたのだ。
まず、完全自動運転を「無人自動走行移動サービス」と「完全自動走行システム」の2つの領域に分けた。
無人自動走行移動サービスとは、日本では「ロボットタクシー」、アメリカでは「グーグルカー」を指す。これらは、無人走行車を遠隔操作で管理するか、または専用の空間(地域)での走行を想定している。
そして、無人自動走行移動サービスの市場化を「限定地域・2020年までに」と明記した。つまり、「ロードマップ2015」で都市部の一般路での想定「2027~2030年」から、一気に7年以上も前倒しになったのだ。
また、遠隔操作による管理を行わない、一般車による完全自動運転システムについても「ロードマップ2015」では、高速道路で「2025~2028年」としていたものを、場所を限定せずに「2025年目途」という事実上の前倒しとなった。
前倒しの原因は、アメリカの動き
では、どうして国はここへきて、完全自動運転の実用化に対していきなり積極的になったのか?その理由について、SIP関係者の多くは、2015年11月5日の安倍晋三総理の発言を引き合いに出す。
これは、第二回「未来投資に向けた官民対話」で、「2020年オリンピック・パラリンピックでの無人自動走行による移動サービスや、高速道路での自動運転を可能にする」としたもの。
これによって、2017年までに実証試験のための制度やインフラ整備を進めるとした。この発言は当然、官僚が書いたシナリオである。そのシナリオを作るに至った原因とは、アメリカで急速に進み出した自動運転に関する事実上の標準化(デファクトスタンダード)の動きだ。
最初は水面下で進んでいた、こうしたアメリカでの動き。これが今年に入って加速した。
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