これがトヨタの最先端!今後採用される安全技術を探る/渡辺陽一郎(3/3)

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:オートックワン編集部/トヨタ自動車株式会社
これがトヨタの最先端!今後採用される安全技術を探る/渡辺陽一郎
(左)自動運転研究実験車(主に一般道)(右)新型自動運転実験車 自動運転研究実験車(主に一般道) 自動運転研究実験車(主に一般道) 自動運転研究実験車(主に一般道) 自動運転研究実験車(主に一般道) 自動運転研究実験車(主に一般道) 新型自動運転実験車 新型自動運転実験車 LEDアレイAHS LEDアレイAHS/室内に設置された起動ボタン LEDアレイAHS/メーター内、グリーンの照射マークとAUTOの文字のロゴが光っていることで「LEDアレイAHS」が作動していることを表す 画像ギャラリーはこちら

ITSを利用した運転支援システムも2015年内に導入

将来的な成果が期待される安全システムとしては、2015年に導入されるITS専用周波数を利用した協調型運転支援システムも公開された。

最も大きな効果を発揮するのは、事故の発生頻度が高い交差点の安全確保だ。交差点に設置されたセンサーと車両をITSで結び、ドライバーから見えない危険も知らせてくれる。

例えば大きな交差点で右折する時、自車の前にも対向する右折車両が停車していると、対向車線を直進してくるクルマやモーターサイクルが見えにくい。これを交差点に設置されたセンサーが検知して、ドライバーに画像やアラームで警報を発する仕組みだ。歩道上の歩行者、自転車などの見落としによる事故も防止できる。

通信利用型レーダークルーズコントロール(車車間通信を活用)

車両同士での通信も可能とした。現状でも車両のカメラやミリ波レーダーなどで衝突の回避を支援する機能はあるが、ITSで車両同士が通信すれば、例えばドライバーがブレーキペダルを踏んだ段階で、後続車両に減速の開始を通知できる。衝突回避の支援機能を素早く作動させることが可能だ。

この機能が進化すれば、ブラインドコーナーの先で停車している車両の存在を後続車に教えたり、横滑り防止装置が作動した時は、危険な路面状態になっていることも通知できる。車両同士が互いに情報を交換し、共有しながら安全性を高められるわけだ。

クルマを運転する事は決して公平ではない・・・そこに自動運転を実現させる意義が

以上のように、今回示されたトヨタの安全機能は、進化したヘッドランプを含めた個々の車両による衝突回避の支援、車両と交差点などに設置されたセンサー、ならびに車両同士の通信機能に基づく安全の確保に大別される。

自動運転研究実験車(主に一般道)自動運転研究実験車(主に一般道)

この2つを基礎として、さらに大きな成果をねらうのが自動運転だ。トヨタでは世界各地で実験を重ね、2~3年以内に実用化したいという。自動運転は、クルマにとって究極の完成形だ。「事故ゼロ」が前提だから、安全性能は100%達成される。

ユーザーが目的地をインプットして、途中のルートは官制システムに任せるのであれば、エネルギー効率が最も優れた道路を走るからエコも究極的に高まる。事故が生じなければ衝突安全ボディやエアバッグなどは不要で、軽量化も大幅に進むだろう。

そして自動車は交通事故、化石燃料の消費、地球温暖化といった課題のほかに「不公平」というきわめて大きな欠点も抱える。盲目のユーザー、上半身と下半身の両方に障害を持つユーザー、知的障害のあるユーザーは、すべて自分でクルマを運転して外出することができない。

また仮に現時点でクルマを自由に使えても、高齢になり、自宅付近の坂道を徒歩で登るのが辛くなった頃に、「そろそろ運転免許を返納されてはいかがですか」などと言われる。甚大な不公平を抱える現時点のクルマは、きわめて未熟な、初歩的な商品に過ぎない。

これが自動運転になれば、すべての人が公平に、安全に、快適に、効率良く自由に移動できる。盲目の人が他人に頼らずクルマで移動できることだけを考えても、自動運転を実現させる価値があるだろう。

自動運転の実現は、一朝一夕では進まない

新型自動運転実験車新型自動運転実験車

「自動車」と呼ばれる以上、進化の終着点だ。ただし実現は容易ではない。例えば車道を走行しているクルマの直前に人が飛び出したら、自動運転でも即座に停止するのは不可能。クルマは人に衝突して「事故ゼロ」を達成できない。

この場合、現在の判例であれば、車道に飛び出した歩行者に80%前後、車両のドライバーに20%前後の過失が適用され、交通事故として決着する。

ところが自動運転ではどうなるか。自動運転である以上はドライバーに過失を問えず、車両にも責任能力はない。誰も責任を取れなくなってしまう。つまり自動運転を成就させて事故ゼロを達成するには、車道と歩道を完全に分離して、「事故が生じた時は車道に入った歩行者が悪い」というコンセンサスを確立させねばならない。

要は公共の交通機関、独立軌道による鉄道と同じ考え方だ。鉄道の場合、重過失がない限り、運転者が事故時の責任を負うことはない。なので東京都の「ゆりかもめ」など、新交通システムでは自動運転も実現された。

となれば自動運転時代に人と動いているクルマが交わるのは、徐行している乗降時などに限られる。クルマにとって自動運転は究極の姿。いつの日か必ず実現されるが、車道と歩道の完全分離が条件となれば、一朝一夕には進まない。

この点をトヨタの開発者に尋ねると、「市街地で実験しているグーグルなどは、あくまでも可能性を示したにとどまる。自動運転は、まずは歩行者が入り込まない高速道路など、限られた条件の中で実現させていく。それでも安全性と効率化を高める効果は大きい。そして人/クルマ/道路という、三位一体の取り組みが不可欠だ」とのことであった。

クルマの最大の欠点は交通事故。これを防ぐ安全技術は、クルマのさまざまな機能も進化させ、欠点を払拭させていく。自動車にとって、最も大切な開発分野だと思う。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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