トヨタ ランドクルーザー70 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志/茂呂 幸正
変えない良さ
ではなぜ30年間にわたってフルモデルチェンジを行わずに造り続けているのか。理由の筆頭は、海外のユーザーが変化を好まないことだ。クルマ造りを刷新すると、当然に多くの機能が向上するが、削られる部分も生じる。フルモデルチェンジして走破力が低下しては困るから「変えない方が良い」という判断らしい。
また、パーツの供給が困難な地域も多く、限られたストックを使わなければならない。整備工場の乏しい地域では、自社にランクル70用の修理設備を持っている企業まである。このような使用条件では、フルモデルチェンジが行われると、修理設備からパーツまで新たにそろえねばならない。フルモデルチェンジを行わず、常に流用が利くようにした方が合理的なのだ。
ちなみにジープなどの軍用車では、車両同士でパーツを使い回せることが重視される。戦地で破損した複数の車両をバラして、1台の使えるクルマを造り上げるようなニーズがあるからだ。似たようなことがランクル70にも当てはまる。
なので悪路の走破力は抜群に高い。4WDは前後輪の回転数を調節する機能を持たないパートタイム式。舗装路は後輪駆動の2WDで走るが、機能が単純な分だけ走破力を高められる。
走破力と信頼性が何よりも重要
そしてランクル70が使われる地域では、生活圏内に激しい悪路がある。立ち往生したり故障すれば、生命にも危険がおよぶ。だから走破力と信頼性が何よりも重要なのだ。
一方、舗装路を走った印象は、基本的に25年前に試乗したランクル70と同じであった。コーナーでは細かな修正操舵を強いられ、少し素早いレーンチェンジなどを行えば、ボディが左右に大きく揺り返す。舗装路ではタイヤがグリップを失う速度も低い。
それでもランクル70にとっては問題ないのだ。悪路の走破が重要で、舗装路はその間の移動に過ぎない。走りの質が重視される乗用車とは、別世界のクルマだ。
とはいえ安全装備の横滑り防止装置などは欲しいところ。横滑り防止装置に備わる4輪のブレーキ圧を独立して高める機能は、悪路を走る時の制御にも役立つ。
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