トヨタ ラウム 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:佐藤靖彦
人にやさしいユバーサルデザイン」を世界で初めてクルマに具現化
最近よく耳にするユバーサルデザインとは、性別や年齢、障害などの身体的能力にかかわらず、多くの人々が快適に使用でき、豊かで充実した体験が得られるモノや場所のデザイン、さらにはサービスの提供を意味する。すでに建物や文房具の世界ではあたり前になっているが、クルマに取り入れたのは2代目ラウムが初の試みだ。開発のポイントは、180項目にわたる人間工学の視点と30項目のクルマの使われ方について評価基準を設定したこと。そしてユーザーと密着した対話をフィードバックしたことだ。ラウムが実現した「人にやさしいユニバーサルデザイン」は、乗降・空間・運転・快適という4つのキーワードに凝縮されている。
センターピラー内蔵のパノラマオープンドアを助手席側に採用
ユニバーサルデザインの象徴ともいえるのが、助手席側のパノラマオープンドア。開口幅1500mmが生む乗り降りのしやすさには本当に驚かされる。センターピラーが内蔵されているため、開閉はちょっと重めだけど、先に発売されたエレメントと違ってフロント/リアドアの開閉順序を強いられないのが使いやすい。さらに、スイッチで開閉できるパワースライドドア、キーが不要なスマートドアロックも標準装備されている。
新型ラウムのボディサイズは、旧型に比べて全幅が5mm拡大されただけで全長&全高は同じ。けれども室内空間はグンと拡大されている。効率のいいパッケージングが採用されたおかげだ。343リットルの容量のラゲッジも、フロア地上高を120mm下げることで使いやすさを向上させている。バックドアの開閉方式は、8割以上のユーザーの希望により横開きが踏襲されたそうだ。助手席は、標準仕様がワンタッチで前方に折り畳める新発想のタンブルシート。後席への乗り降り、チャイルドシートの取り付けが楽にできる。6万5千円で回転式のフレンドリーシートが選べるのも魅力といっていい。
楕円ステアリングとわかりやすい説明付ウォーニングがやさしい
ユニバーサルデザインのもうひとつの特徴が、別体型ウォーニングインジケーターだ。これまでのウォーニングはトラブルが発生してもわかりづらく、対処法もわからないのが実情だった。そこでラウムは、メーター内に音と点滅で異常を知らせる警告灯を設定。同時に、運転席前にも説明付シンボルマークと対処方法を表示している。何かあったときに、ラウムの優しさがわかる機能と言える。
センターメーターの視認性を高め、サイドウォークスルーと乗降性に貢献するアイデアが楕円ステアリングだ。楕円と聞くと操作しづらい印象を持つかもしれないが、見た目にも、触っても左右が少し長くなっていることには気がつかない。実際に走ってみても違和感はまったくなかった。
この他にも、IR(赤外線)&UV(紫外線)カットガラス、敏感な肌にやさしいフレシール加工を施したシート表皮をGパッケージに採用するなど、細部にわたる気配りが行き届いている。
パワーユニットは1.5リットルDOHC+4速AT。排出ガスは三ツ星を取得した環境対応型だ
ラウムの“走り”に関してはあまり期待していなかった。というのもユニバーサルデザインを取り入れた開発は、走行性能よりも使い勝手を重視しているように感じたからだ。「可もなく不可もない」、そんなフィーリングを予想して街中と高速道路を走ってみた。確かに加速感にしても走行フィールにしても、ワクワク感や気持ちの良さは味わえない。
けれども低中速トルク重視のエンジンは極めて扱いやすく、駐車時の超微低速からアクセルをグンと踏み込む追い越し加速時まで必要十分以上の実力を見せてくれたのだ。スムーズな変速、クルージングの静粛性、バランスのいい乗り味……。ラウムの仕上がりは、トータルバランスに優れたトヨタらしい優等生派と言える。ただGパッケージは、低速域で多少路面のギャップを拾うきらいがあった。装着タイヤが異なるSパッケージは、すべての場面で快適な乗り心地が得られた。
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