【試乗】トヨタ 新型 プロボックス・サクシード[2014年ビッグ・マイチェンモデル] 試乗レポート/渡辺陽一郎(5/5)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
ATやプラットフォームも一新し、もはやフルモデルチェンジの域
燃費性能の向上を目的にエンジンとATを刷新した関係で、マイナーチェンジとしては異例となる、プラットフォームの前側と中央部を造り替える大改造を受けた。いっぽうで後部プラットフォームは荷室を維持するため(変える必要がないため)に継承している。そのため、見た目にはフロント周りのデザイン以外に大きな変化はないように思えるが、中身はもはやフルモデルチェンジ規模の改変を行っているのである。トヨタとしては、ボディのウワモノ自体を大きく変更はしていないので、フルモデルチェンジとは呼ばないそうだ。
前側と中央のプラットフォームはヴィッツなどと共通。フロントスタビライザーのサイズを拡大してショックアブソーバーの減衰力とブッシュの硬度を下げたから、前輪側の足まわりの動きはしなやかになった。その分だけ荷物を積んでいない状態では後輪側の突っ張り感が目立つが、荷室に100kgのウエイトを積んで走ってみると気にならない。このあたりは貨物の積載を前提としたバンモデルらしいセッティングを感じさせる。
横滑り防止装置も加わり、満足出来る水準に仕上がった
足まわりの設定とタイヤは1.3/1.5リッターともに共通。試乗車が装着していたタイヤは14インチ(155/80R14)で、銘柄はトーヨーH11であった。指定空気圧は前後輪ともに220kPaなので、極端に高くはない。
パワーステアリングは油圧式から電動式になった。反力が若干乏しいが、不自然ではない。ハンドルをいっぱいに回したロック・トゥ・ロックは3.4回転。従来型と同等だが、同じプラットフォームを使うヴィッツなどは約3回転なので、10%少々はスローだ。開発者は「積載時にレーンチェンジなどを行った時、車両の挙動が不安定になるのを防ぐためにスローな設定とした」と言う。
サスペンションも後輪の接地性を重視したタイプ。積極的に走れば旋回軌跡を拡大させやすいが、可能な範囲で走行安定性を高めた。新たに横滑り防止装置のVSCも標準装着され、商用車のハンドリングとしてはバランスが良い。荷物を積まない状態で走った時の後輪側の硬さは少し気になったが、総じて走行性能は満足できる水準に達している。
まさに「働く人を元気にするクルマ」
1.3リッターと1.5リッターエンジンの価格差は、プロボックスのGL同士で比較すると11万9782円。「100cc当たり2万円」の相場に照らし合わせると割高だが、登坂路の多い地域では1.5リッターを選ぶ価値もあるだろう。さらに燃費性能も1.5リッターが勝る。一方、静粛性などは1.3リッターが魅力だ。なお4WDモデルはプロボックス/サクシードともに1.5リッターのみの設定となる。このあたりはニーズに応じて選びたい。
オプション装備も充実して、ルームミラー内蔵型のバックモニターも装着できる。もっとも、デザイン性を重視したイマドキの乗用車と比べると、機能性第一でデザインされたプロボックス/サクシードの視界は抜群に良い。ボンネットが視野に入り、前後左右ともにウインドーの下端が低めだし、側面の窓も四角く垂直に近い。縦列駐車や車庫入れも容易だ。最小回転半径も4.9mでヴィッツと同程度。ホイールベースが2550mmであれば満足できる。
この優れた視界と取りまわし性は、乗用車も見習うべきだろう。バックモニターなどに頼らず、直接ドライバーの視覚で周囲を確認できることが安全運転の第一歩になるからだ。
インパネなどの内装も同様だと思う。見栄えの良さも大切だが、使い込んで良し悪しが分かるのは機能にほかならない。
トヨタ 新型 プロボックス バン「1.5 GL」[FF] 主要諸元
全長x全幅x全高:4245x1690x1525mm/ホイールベース:2550mm/乗車定員:2/5名/車両重量:1090kg/駆動方式:前輪駆動(FF)/エンジン種類:直列4気筒 DOHC「1NZ-FE」型 VVT-i ガソリンエンジン/総排気量:1496cc/最高出力:109ps(80kW)/6000rpm/最大トルク:13.9kg-m(136N・m)/4800rpm/トランスミッション:自動無段変速機(CVT)/燃料消費率:18.2km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:155/80R14 88/86N LTタイヤ/メーカー希望小売価格:1,545,382円[消費税込]
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