三菱 アウトランダー PHEV vs トヨタ プリウス PHV どっちが買い!?徹底比較(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
【三菱 アウトランダー PHEV vs トヨタ プリウス PHV ~総合評価~】
次は価格設定。アウトランダーPHEVのベストグレードは、先に述べたように24Gセーフティパッケージ(366.4万円)。実用装備を充実させた上で、衝突被害軽減ブレーキや車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールを装着する。
これに相当するプリウスPHVは、G(340万円)にプリクラッシュセーフティシステム(14.7万円)を加えた仕様で、総額は354.7万円。プリウスPHVが11.7万円安いが、アウトランダーPHEVは前後輪にモーターを備えた4WD。走行状態に合わせて4輪の駆動力やブレーキを最適に制御するS-AWCも備える。機能の違いを踏まえると、アウトランダーPHEVの方が割安になるだろう。
つまり燃費性能ではプリウスPHV、価格の割安感ならアウトランダーPHEVだ。
ユーザーとしては、ベース車のプリウスとプリウスPHV、アウトランダーとアウトランダーPHEVで選択に悩むことも多いだろう。この点にも触れておきたい。
損得勘定に大きな影響を与えるのは、先に述べたリチウムイオン電池の総電力量になる。プリウスPHVは4.4kWh、アウトランダーPHEVは12kWhだから、充電された電力で走れる航続可能距離も、JC08モード走行でプリウスPHVは26.4kmだが、アウトランダーPHEVなら60.2kmまで伸びる。
当然ながら充電された電力で走った方が走行コストは安く、EV走行による距離が伸びる分だけトクをする。
ならばどの程度の距離を走れば、ベース車との差額を埋められるのか。
プラグインハイブリッドの場合、経済産業省の補助金を利用して買うのが一般的だ。補助金も踏まえて、ノーマルエンジン車とプラグインハイブリッドの損得勘定を考えたい。
まずはアウトランダー。アウトランダーとアウトランダーPHEVの価格差は、Gセーフティパッケージ同士の比較で87.7万円だ。ただしアウトランダーPHEVにはアウトランダーに8.4万円でオプション設定されるS-AWCが標準装着される。このオプション価格を差し引くと、差額は79.3万円に縮まる。そして経済産業省の補助金額は30万円(急速充電機能付きは35万円)だから、これを加味すれば差額は49.3万円だ。
さらにエコカー減税も絡み、アウトランダーは50%の減税だが、同PHEVは免税(100%の軽減)だから、最終的な実質差額は約42万円になる。
この42万円の差額を走行コストでいかに埋めるかだが、モーター駆動のみで走った時の「電力消費率」、ハイブリッドで走った時の「ハイブリッド燃料消費率」は、実用性を考慮して双方ともにJC08モード数値の85%として計算。ガソリン代は1リッター当たり150円、電気代は1kWh当たり18.9円とする。
アウトランダーPHEVが充電された電力のみで走ったと仮定すると、実用電費は5km/kWhで、1km当たり3.8円。一方、ベース車のガソリン代は、1km当たり12.3円だ。1km当たりPHEVは8.5円安く、約4.9万kmを走れば42万円の実質差額が埋まる。
逆にアウトランダーPHEVが充電を一切行わず、ハイブリッド状態のみで走ったとすれば、1km当たりの走行単価は9.5円になり、PHEVが2.8円安い。15万kmを走って42万円の実質差額が埋まる。
EV/ハイブリッド走行の比率はユーザーによってさまざまだが、アウトランダーPHEVのEV走行可能距離はJC08モードで60.2km。85%としても50kmに達するから、全走行距離の50%をEV走行でまかなうことも可能だろう。となれば8万kmを走ったあたりで42万円の実質差額が埋まる。愛車を手放す頃になれば、負担額の違いを走行コストの差額で取り戻すことができるだろう。なので1年間に2万km前後を走るユーザーなら、アウトランダーPHEVの買い得度が際立つ。
対するプリウスPHVはどうか。前述のGにプリクラッシュセーフティシステムを加えた仕様で、プリウスに対して同PHVは88万円高い。ここから補助金額の33万円を差し引くと、実質差額は55万円になる。エコカー減税は両車ともに免税だから差は生じない。
プリウスPHVの場合、1回の充電で走れる距離は、JC08モード数値の85%とすれば22.4km。アウトランダーPHEVの半分以下と短いが、1km当たりの走行単価は約2.6円だ。一方、ベース車のプリウスのガソリン代は、前述の計算式で1km当たり5.8円。差額は3.2円になり、ガソリンを一切使わずに走っても、17万kmを走行しないと差額が埋まらない。
ならば充電をしないで走った場合はどうか。プリウスPHVの「ハイブリッド燃料消費率」はJC08モードで31.6km/L。プリウスの30.4km/Lより少し勝るが、85%の実用燃費で計算してプリウスPHVは1km当たりの走行コストが5.6円だ。ベース車との違いは0.2円に過ぎず、差額を埋めるには275万kmを走る必要がある。
ガソリンを一切使わずに17万kmという算出結果からも分かるように、プリウスPHVとプリウスの価格差を、購入後の走行コストで埋めるのは不可能だ。
結論をいえば、アウトランダーを買うならPHEVを選ぶべき。ベースのアウトランダーが普通のガソリンエンジンを積んだSUVだから、燃料代の差額が際立つ。自宅が集合住宅で充電設備を持てず、外出先での充電に限られたとしても、選ぶ価値はあるだろう。7.4万円弱で急速充電機能を装着すれば、販売店や市役所などで短時間の充電が行える。
プリウスについてはPHVは避けたい。少なくとも損得勘定では選ぶメリットがない。プリウスPHVが割高というより、ベース車のプリウスが低燃費で低価格だから、相対的にPHVを選ぶメリットが薄れた。
そして「アウトランダーPHEV対プリウスPHV」の勝負も同様。ベース車に対する損得勘定だけでなく、高コストなリチウムイオン電池の容量、4WDの採用といった機能面まで含めて、アウトランダーPHEVが買い得だ。リーフやiミーブと比較しても、アウトランダーPHEVは、充電機能を備えた日本車の中では価格が際立って安い。本格的なモーター駆動のエコカーを、手軽に楽しませてくれる。
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