発売前から話題独占のワゴンHV!プリウスワゴンとフィットシャトル/大谷達也(2/3)
- 筆者: 大谷 達也
- カメラマン:茂呂幸正/オートックワン編集部
フィットシャトルの強みはスペース効率が高い室内空間
けれども、モーターの違いはそれ以上に歴然としている。なぜか?
プリウスは、ハイブリッドのポテンシャルをフルに引き出そうとしたクルマだ。そのため、比較的パワフルなモーターを積み、ハイブリッドシステムが活躍するシーンをできるだけ広げようとしている。なぜなら、そのほうが燃費は向上するからだ。
いっぽうのフィットシャトルは、ホンダのハイブリッド車に共通のIMAというコンパクトなシステムを使っている。このため、燃費性能はプリウス程ではないものの、軽量なうえにスペース効率が高く、コストも低め、というメリットがある。
どちらがいいかは一概には決められないが、プリウスワゴンは燃費性能を徹底的に追求した高級ハイブリッド、フィットシャトルは燃費だけでなくクルマの総合性能にも気を配ったお手軽ハイブリッド、と覚えておけばいいだろう。
ここまで聞くと、なんだかフィットシャトルが安っぽいクルマに思えてくるかもしれないが、従来のフィットの仕上がりを見ていると、「安かろう悪かろう」のクルマでは決してないと予想される。
なかでも、既存のフィットハイブリッドは、ベースとなったフィットよりも乗り心地がしっとり落ち着いているうえに静粛性が高いので、1クラス上のモデルに乗っているような気にさせられるほどだ。
しかも、フィットシャトルでは、乗り心地の改善に効果がある高性能ダンパーを採用したほか、スプリングやブッシュなども細かく見直して改良を図っている。現行のフィットハイブリッドを上回る走りの質感を実現していたとしても、不思議ではない。
フィットシャトルの強みは、もうひとつある。
ホンダのコンパクトカーは、燃料タンクを座席の下に配置する独自の手法により、コンパクトなボディの内側に広々とした室内を確保している。
フィットはもちろんのこと、フィットシャトルもこのレイアウトを採用しているので、外寸の割にキャビンは広い。そのことは荷室の容量にも表れていて、フィットシャトルは床下収納をあわせると517リットルと、プリウスの535リットルに迫る値を実現している(いずれも5人乗りの状態)。
プリウスのほうが全長で20センチ以上、ホイールベースで28センチも長いことを考えると、フィットシャトルのスペース効率がいかに高いかがわかる。
また、プリウスとの比較で弱点とされた燃費に関しても、フィットシャトルでは改良の手が加えられている。エンジン自体の効率を高めたり、ブレーキの回転ロスを落としたりするなど地道な努力を重ねた結果、ベースモデルとなるフィットハイブリッドと同じ30km/Lの10・15モード燃費を達成したのだ。
なお、プリウスワゴンの燃費は未発表だが、通常のプリウスより車重は130kgほど重くなったので、燃費もプリウスの38.0km/リットルより下がっていても不思議ではない。つまり、両者の差は縮まっている可能性が高いのだ。
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