日本にない日本車「北米トヨタ ハイブリッド車」編/桃田健史(3/3)
- 筆者: 桃田 健史
2月後半、筆者はロサンゼルス郊外で開催された、SAE(米自動車技術会)主催のハイブリッド車・EVの技術シンポジウムに出席した。
その席で、メーカー関係者は皆「カギは、ペイバック」と言っていた。「ペイバック」とは、元を取る、ということ。つまり、ガソリン車に比べて価格の高いハイブリッド車を購入し、その車両価格の差を何年で埋められるか、ということだ。
こうした考えは、当然日本にもある。しかし、アメリカ人は「ペイバック」に対して「物凄くシビア」という。
現在、アメリカでのレギュラーガソリン価格は、全米平均で1ガロン(3.785リッター)あたり約4ドル(400円弱)。これを基に、アメリカ人が年間使うガソリン代を考えると、当然クルマのサイズ・エンジンサイズにもよるが、約700ドル(7万円弱)という計算だ。また、各メーカーはEPA(米環境局)の規定により、燃費に基づく年間ガソリン代金の概算額を各新車向けに公表している。
こうして、年間のガソリン代と新車価格を真剣に“にらめっこ”する。これが、アメリカ人の特性だという。
一方、日本人の場合、燃費も当然気にはする。だが、日本におけるハイブリッド車の購入動機は、そうした実利面と同時に“感情”や“感性”に関わる面も大きい。
「ハイブリッド車って環境に優しくて、それを乗っているって、なんだか気持ちイイ」というような、一種の優越感だ。
ホンダの伊東孝紳社長は、今年2013年初頭に開催されたデトロイトモータショーで「日本のユーザーは、ハイブリッドをイメージ優先で買う傾向がある。それがアメリカでは、ガソリン価格の上昇とハイブリッド車の販売実績が面白いほど連動する」と指摘していた。
つまり、アメリカでハイブリッド車がブレイクする条件はひとつ。ガソリン代がもっともっと高くなることなのだ。
でも、これは日本での同じことでは?いや、そうはならないかもしれない。
ヴィッツの開発担当者が以前、こんなことを言っていた。
「日本でガソリン価格がリッター200円を超えたら、小型車も軽自動車もハイブリッド車も売れなくなる。人はクルマ自体を使わなくなり、クルマを買わなくなると思う」
ガソリン価格が上がり続けると、いつかハイブリッド車は「日本にいない日本車」になってしまうのかもしれない。
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