トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」新型車解説/渡辺陽一郎(2/2)

トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」新型車解説/渡辺陽一郎
トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」 画像ギャラリーはこちら

エンジンを搭載せず充電設備も不要なFCVは、まさに“日本に適した”エコカー

FCVはEV(電気自動車)と違って、充電の必要がないこともメリットだ。

日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住み、自宅に充電設備を持ちにくい。走行段階で排気ガスや二酸化炭素を排出しないEVが欲しくても、住宅事情によって買えないユーザーが多い。

トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」

その点、燃料電池車であればエンジンを搭載せず、なおかつ充電設備も不要だ。日本の住宅事情に適した先進のエコカーでもあるだろう。

そしてMIRAIが1回の水素充填によって走れる距離は、JC08モードで約「650km」。充填に要する時間は約「3分」と短い。

EVのリーフは航続可能距離が228km、充電に要する時間は急速充電器を使って約30分だ。リーフも短距離移動用のセカンドカーとして使えばまったく問題ないが、従来のエンジンを積んだクルマと同じ実用性は求められない。

その点、燃料電池車のMIRAIは、エンジンを積んだクルマと同じように使える。マンションに住み、1台のクルマしか所有できないユーザーにも適している。

水素ステーション数は増加目標を掲げているものの・・・

水素ステーション イメージFCV(燃料電池自動車)水素を補給中

ただし便利に使うためには、水素をガソリンや軽油と同じように手軽に充填できなければならない。

この点はどうだろう。水素ステーションの数は、今は全国に20箇所以下だ。燃料電池車が少ない現状で、水素ステーションが豊富に設置されるハズはないが、今後の整備がMIRAIの使い勝手と普及を左右する。

将来、水素ステーションがどの程度増えるかは未知数だが、自民党は2015年中に100箇所、2020年に150箇所、2030年に1000箇所という目標を明らかにした。

東京都は2020年に開催されるオリンピックも視野に入れ、2025年には都内に80箇所を設けたいという。それでも給油所(ガソリンスタンド)は、全国に3万4000箇所以上が稼働している。水素ステーションが給油所の10%としても3400箇所は必要で、燃料電池車の普及には、本格的な整備が欠かせない。

水素ステーションを増やすには、建設費用の低減も重要だ。現状では1箇所当たり4~6億円で、給油所の6~10倍に達する。補助金の交付も受けられるが、合理的に建設することで費用を引き下げたい。

ユーザーにとっては水素の価格も重要だ。特にEVやハイブリッド車の場合、環境性能が優れ、なおかつ走行コストを安く抑えられるから購入するケースも多い。「エコなクルマは燃費も優れ、低コストで使える」という図式に収まらないと普及させにくい。

今の工業用水素は価格が高く、MIRAIの走行コストをレギュラーガソリンエンジン車の燃費に換算すれば8~10km/Lになる。そこで岩谷産業が、1kgあたり1100円の低価格を打ち出した。この価格なら、燃費は14~16km/Lのガソリンエンジン車と同程度。エコカーとしての範囲に収まる。

ただし現在の水素の相場と照合すれば大幅に安く、水素精製のコストダウンが進むまで、相応の補助が求められそうだ。

トヨタ 燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」

MIRAIは先進的な燃料電池車で、しかも機能/装備/補助金を差し引いた価格のバランスは、すでに売られているハイブリッド車とほとんど変わらない。なので今後解決すべき課題は、水素の価格を妥当な水準に抑え、供給する水素ステーションを整備することだ。

MIRAIを開発したトヨタと同等の、あるいはそれ以上の意気込みがインフラの整備に求められている。今までの日本が経験したことのない、クルマ社会の壮大なプロジェクトが始まった。

トヨタ MIRAI(ミライ)主要諸元

全長×全幅×全高(mm):4,890×1,815×1,535/ホイールベース(mm):2,780/トレッド フロント/リア(mm):1,535/1,545/最低地上高(mm):130/室内長×室内幅×室内高(mm):2,040×1,465×1,185/車両重量(kg):1,850/乗車定員:4名/価格:723万6千円(消費税込)

トヨタフューエルセルシステム(TFCS)主要諸元

【FCスタック】種類:固体高分子形/出力密度:3.1kW/L/最高出力:114kW(155PS)/加湿方法:内部循環方式(加湿器レス)

【高圧水素タンク】本数:2本/圧力:70MPa(約700気圧)/貯蔵性能:5.7wt%/容量:122.4L(前方60.0L/後方62.4L)

【モーター】種類:交流同期型/最高出力:113kW(154PS)/最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)

【駆動用バッテリー】ニッケル水素

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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