トヨタが込める強い「想い」/新型 86(ハチロク・2016年7月マイナーチェンジ・後期型) 発表会レポート
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:和田清志・トヨタ自動車
マイナーチェンジでは異例の発表会開催に、その強い「想い」を感じる
スバルとの共同開発で誕生したトヨタのFRスポーツカー「86」(ハチロク)。2012年のデビュー以来、年を追うごとに様々な改良を加え、走りの性能を進化させてきた。そして5年目に突入した今年2016年、いよいよ大規模なマイナーチェンジを実施。そのお披露目が富士スピードウェイで行われた。
通常ならマイナーチェンジモデルでわざわざ発表会をやる機会は少ない。トヨタがいかにハチロクに対し特別な想いを持っているか、改めて実感させられる。
デビュー前からずっとニュルで鍛えられ続けてきた「ハチロク」
ハチロクはデビュー以来、いやデビュー前からニュルにこだわってきた。耐久レース、しかも世界一過酷なサーキットでの参戦で、年々鍛え上げられていった「TOYOTA GAZOO Racing 86」86号車は、2014年に見事激戦区のSP3クラス優勝を成し遂げた。
多田CEはこの86号車について『完成度高く、意のままに操れる理想のFR』だと評価。これを市販モデルへ昇華すればユーザーに驚きとともに喜んでもらえると確信したという。
そして、ニュル仕様の思想・技術をそのまま市販モデルへ落とし込んだ究極の86とも言うべき「86 GRMN」を限定100台で発売。瞬く間に完売させたのだった。
いっぽうで多田CEは、通常の86についても同様に思想・技術を落とし込んだ。それこそが今回発表の新型86ということになる。
ただの進化ではなく、ただの年次改良でもない!
新型の狙いは3つ。
1.走りの深化/2.空力デザインの深化/3.対話の深化だ。進化ではなく「深化」。その改良は多岐に渡る。
詳細については既に公開済みの新型車解説記事と、近日公開予定の試乗レポートに譲りたいが、何より注目したのが、多田CEがプレゼン中しきりに口にした「後期型」という表現。
今回のモデルが単なる年次改良ではなく、きっちりと「深化」し生まれ変わった新生86に対する、アツい決意表明と受け取った。
続いて行われたトークセッションでは、新型に関わる多彩なゲストが登壇し、トヨタが目指す「もっといいクルマづくり」について語った。
86のレースマシンでニュルに参戦したTOYOTA GAZOO Racing ドライバー 影山 正彦氏は、参戦直前のテストで2014年モデルのニュル86号車にトヨタの豊田章男社長自らがステアリングを握った際『これいいね。話が出来るね。』と、ドライバーの意のままに走るマシンの応答性の良さについて、独特の表現で褒められたという。
そんなニュル86号車の開発に携わり、同時に新型86のチューニング、いわば「味付け」に関わったトヨタ自動車 凄腕技能養成部 大阪 晃弘氏は『ボディ骨格を鍛えキャパを上げた結果、走る楽しさをスポイルせずに乗り心地や質感に振り分けることが出来た』と話す。
世界に20万台が普及した「86」と「BRZ」、そのフォロワーたちの誕生にも期待
いよいよ発表された新型86。『後期型の登場で、前期型の中古車が市場に増える。かつてのAE86(カローラレビン/スプリンタートレノ)がブレイクしたのと同じ状況だ』と、多田CEはまた別の視点で期待をかける。
これを受け、SUPER GT GT500 レクサスチームルマンワコーズ 監督の脇坂 寿一氏も『より手に入れやすい中古車をきっかけに、若者たちとモータースポーツが楽しめると嬉しい』と歓迎する。
86はデビューから丸4年が経過し、全世界で16万台を販売した。スバルのBRZと合わせれば既に20万台に達している。
今後発生していく中古車も含め、86のファン層の裾野が拡がりスポーツカー市場が活性化すれば・・・他社もこの市場を見逃せなくなってくるかもしれない。次に参戦してくるのはどのメーカーか。そしてライバルが現れれば、86の深化もさらに深みを増していくはずだ。想像するだけでワクワクするそんな近未来にも、大いに期待したい。
[レポート:トクダ トオル(オートックワン編集部)/Photo:和田清志・トヨタ自動車]
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