トヨタ ist 試乗レポート

  • 筆者: 竹岡 圭
  • カメラマン:原田淳
トヨタ ist 試乗レポート
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見た目だけではない、コンパクトカーを超える基本性能

ヴィッツ兄弟のひとつとしてデビューした先代イスト。ベーシックコンパクトカーのヴィッツよりもちょっと上級装備で、そして個性を打ち出しやすいSUV風ルックスをまとってデビューした。ようはプレミアムコンパクトカーという立場が強かったと言っていい。ターゲットユーザーも目論みとしては、オシャレに敏感で自立している都会の女性であった。

さて2代目になり、パッと見はずいぶんとSUV色が増したという感じを受ける。こちらもひと回り大きくなってしまったRAV4の代役かと思ったほどだ。それプラス、先代も北米でサイオンXDという名前で販売されていたし、今回もサイオンXDという名前で(1.8LのATと5MTのみ)この8月から販売されているので、大きめのクルマを欲しがる北米ニーズに則ってサイズアップしたSUV色を強めたものになったのかな?と思っていたが、実はそうではないらしい。2BOXとSUVのクロスオーバーを狙って16インチタイヤを履かせたためにサイズアップしたというのが実情ということなのだ。

あえて車名を踏襲したのは、個性的、スタイル重視、先進的というのが、初代イストのコンセプトと同じだからということなのである。しかし見た目だけではなく、クルマの基本性能的にもきちんとコンパクトカーを超えるものとなっているのだ。

普通のコンパクトカーには飽き足らないユーザーにはピッタリ

全長3930×全幅1725×全高1525(mm)というのがイストのボディサイズである。日本で言うところの5ナンバーサイズの枠を超えた、少々大きめモデルとなったのだ。しかし初代のエアロ装着モデルからは5mmしか大きくなっていない。ノーマルの先代モデルからも全長75mm、全幅50mm。全高に至っては、真ん中を落としたルーフデザインにより、実は5mmほど低くなっているのだ。

しかし16インチタイヤを履かせるために、ベースのヴィッツよりも15mmずつトレッドアウトした外へ張り出したフェンダーにより、下半身がドッシリした逞しいSUVテイストのラインのおかげで、ガッチリした大きなクルマに見えるのである。逆にベルトラインより上は、空力を意識したギュッと絞ったデザインになっているのが特徴的なのだ。

そのため室内は開放感があるというほどではないが、大人4名が十分に座れるスペースは確保されている。特に後席の膝周りは、ドアの内側がえぐられていることもあって広々としている。また外観に合わせてインテリアもユニークで、特にメーターとメータークラスターはヨーロッパのデザイナーが担当したかなり斬新なものが採用されている。普通のコンパクトカーには飽き足らないユーザーにはピッタリだ。

安定感が高く、ハンドリングもキビキビ

シートリフター、テレスコピックステアリングも装備されているので、ドライビングポジションはバッチリ決まるが、キャビンをギュッと絞ったデザインのため、視認性はまぁ満足といったところだ。シートのサイズは私の体格でピッタリという感じなので、北米男性には少々小さく感じるかもしれない。しかしこのシート、外から見ると全高は低めに見えるが、実際に座るとアイポイントが高くSUVっぽい感覚をもたらしてくれるのだ。

ところが、実際のクルマの動きはSUVっぽくないのである。感覚的な全高よりもロールが抑えられているので安定感が高く、ハンドリングもキビキビと元気いっぱいなクルマなのである。見た目からは1.5Lモデルだと重くて走らなそうな印象を受けるが、まったくそんなことはなく街乗り+αなら十分である。乗り心地も快適でなかなかバランスが取れているのだ。

逆に1.8Lモデルは少々固められた足回りのせいか路面によってはゴツゴツ感と若干跳ねる傾向がある。乗り心地的には1.5Lのほうがラグジュアリーだろう。しかし余裕のあるエンジンパワーとATとの組み合わせで出足もスムーズ。全体的なゆとり感が違うので、ちょっとリッチなテイストが楽しむらならばこちらだろう。

コンパクトカーを凌駕したいという意気込み

イストには4WDモデルもラインアップされているが、この4WDがちょっと凝っているのだ。一般的にコンパクトカーの4WDモデルというと、ビスカスカップリング等のスタンバイ4WDが採用されることが多いのだが、イストの4WDシステムはRAV4と同じアクティブトルクコントロール4WDシステムが奢られているのである。ABSの車輪速センサーを使って路面によって0~50%までリアに力を配分してくれるタイプなのである。しかもこの4WDのラインアップは、今のところ日本だけなのだ。この辺りにも先進的なスタイルだけで終わりたくないという、クルマの基本性能的にコンパクトカーを凌駕したいという意気込みが感じられるのである。

また、シートアレンジにも新しいモノが採用されているのもポイントのひとつだ。後席の背もたれの調整ノブと、前後のスライドノブが、シートの肩付近に並んで付いているので、アレンジが非常にわかりやすくカンタンで操作しやすいのである。前席を1番前まで出してから操作すると、チルトダウンする感じでフルフラットなスペースが作り出せるというシステムは、限られたコンパクトカーというスペースの中ではかなり工夫されたパッケージングと言える(4WDは通常のダブルフォールディングタイプ)。使い勝手の面でも一般的なコンパクトカーを超えているということなのだろう。

あとは日本でも北米でも普通のコンパクトカーでは飽き足らなくなっている30代男性の心にどれくらい響くかが、ヒットの鍵になりそうだ。

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竹岡 圭
筆者竹岡 圭

OLを経て、自動車専門誌を皮切りに、モータージャーナリスト活動を開始。国内外のレース、ラリーなど自らモータースポーツ活動に関わりながら、海外のモーターショーを精力的に回るなど、なにごとにも積極的に取り組んできた結果、近年は一般誌、女性誌、Web媒体、新聞、TV、ラジオなど、その活動はとても多彩なジャンルに広がっている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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