トヨタ 新型クラウン(プロトタイプ)試乗&解説|自ら”茨の道”を選んだトヨタの意図とは(1/3)

トヨタの象徴、「クラウン」が大変革

今の国産乗用車は160車種前後に達するが、従来の流れを振り返ると、中心に位置付けられてきたのはトヨタ クラウンだ。初代モデルは1955年に発売され、乗用車では最長寿の車種となる(ランドクルーザーは1954年にトヨタ ジープからランドクルーザーに改名されたが当時は商用車だった)。

このクラウンが2018年6月26日にフルモデルチェンジを受けて15代目に刷新される。クローズドコースでプロトタイプを試乗したので、その印象をお伝えしたい。

なおクラウンを扱うトヨタ店では、2018年4月下旬から車両の概要を明らかにして、予約受注も受け付けている。今回のプロトタイプ報道試乗会では、車両の詳細は明されなかったが、販売店で得た情報も含めてガイドする。

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新型クラウンでは「アスリート」と「ロイヤルサルーン」を廃止

新型クラウンで注目されるのは、バリエーションを大幅に変えることだ。

先代型は豪華志向のロイヤルサルーン、スポーティなアスリート、この2タイプに比べて全長とホイールベースを75mm拡大したロングボディのマジェスタを用意していたが、新型はボディが1種類に集約される。また、グレード名も見直され、標準ボディとスポーティなRSに大別される。

エンジンは3種類

エンジンは直列4気筒2リッターのターボ(先代型の改善版)、直列4気筒2.5リッターのハイブリッド(カムリと同じ設計の新しいシステム)、V型6気筒3.5リッターのマルチステージハイブリッド(レクサス LSとLCが搭載する設計の新しいシステム)になる。先代ロイヤルサルーンが搭載したV型6気筒2.5リッター、先代アスリートのV型6気筒3.5リッターは廃止され、2種類のハイブリッドと2リッターターボの組み合わせだ。

グレード構成は大きく2種類、伝統の名称を廃し新たに”RS”を採用

標準ボディには、価格が最も安いB(2リッターターボのみ)、買い得なS(3つのエンジンに設定)と、安全装備を割安に標準装着したS・Cパッケージ(2リッターターボと2.5リッターハイブリッド)、豪華指向のG(2リッターターボと2.5リッターハイブリッド)、Gエグゼクティブ(3.5リッターハイブリッド)がある。

スポーティ指向はRS(2リッターターボと2.5リッターハイブリッド)と上級のRSアドバンス(3つのエンジンに設定)という組み合わせだ。

なお廃止されたロイヤルサルーンは、1974年に5代目のセダンに設定されて以来、クラウンの代表グレードとして愛用されてきた。新型では標準ボディがロイヤルサルーンの後継、RSがアスリートの後継ともいえるが、40年以上にわたる伝統のグレードを廃止した変化は大きい。

新型クラウンのボディサイズとデザイン

ボディサイズはあまり変えないものの、デザインはほぼ別物

フロントマスクは、先代型と同様にフロントグリルが大きいが、デザインはシンプルだ。ボディの後部はリヤウインドウを大きく寝かせ、トランクスペースを短く見せている。サイドウインドウが3分割された「6ライト」と呼ばれるボディ形状にも特徴がある。

そのために真横から見た時のデザインは、BMW 4シリーズのグランクーペ、アウディ A5スポーツバックのようなリヤゲートを備えた5ドアクーペに似ている。新型クラウンはトランク開口部が短いので、フードにダンパーを装着して垂直に効率良く開く方式にした。

ボディサイズは全長が4910mm、全幅が1800mm、全高は1455mmだ。先代ロイヤル&アスリートと比較するとほぼ同サイズで、全長が15mm伸びただけに止まる。

ただしホイールベースは2920mmだから、先代型に比べると70mm長く、ロングボディだったマジェスタの2925mmに迫る。ホイールベースの拡大で、4輪がボディの四隅に踏ん張るデザインとなった。

なおプラットフォームはレクサス LSやLCと共通だが、全幅はLSが1900mm、クラウンは1800mmだから変更された部分も多い。

それでもプラットフォームの開発は、共通化を前提に進められた。クラウンからLSまで、後輪駆動の乗用車はプラットフォームを集約することで、開発と製造のコストを合理化している。

運転席からの視界は良好、ドライバーズカーとしての性能も考慮

クラウンマジェスタでは、ホイールベースの拡大分を後席の足元空間に費やしたが、新型クラウンは、運転席のペダルと前輪との間隔を広げた。要は前輪を前方に押し出している。

従って後席の居住空間は先代型と変わらないが、外観ではフロントドアと前輪の間隔が広がり、後輪駆動らしいボンネットの長さが強調された。ロングノーズ&ショートデッキと呼ばれる形状で、ボディの前側は伸びやかに、後方には引き締まり感を持たせた。

運転席に座ると、セダンらしくボンネットが相応に見えて前方視界も良い。側方と後方もさほど悪くない。サイドウインドウの下端が後方まで水平に伸びて、6ライトデザインにしたことでウインドウの面積も拡大されたからだ。

最近のセダンとハッチバックでは、日本車、欧州車ともにサイドウインドウの下端を後ろに向けて持ち上げる形状が流行して、後方視界の悪い車種が増えた。トヨタ車ではプリウスやレクサス ISなどが当てはまるが、クラウンはこの悪しき流行に乗っていない。

新型クラウンの内装デザインと居住性

内装のデザインはグレードによって異なるが、クラウンだから基本的に質感は高い。インパネやドアの内張りには柔らかいパッドが使われ、最近流行しているステッチ(縫い目)も各部にあしらった。インパネの上端部分が少し低く感じられ、開放感が伴う。

先代型と異なるのは、運転席と助手席の間に置かれたセンターアームレストの高さを20~30mm低くしたことだ。先代型では車庫入れなどで後ろを向きながらハンドルをたくさん回す時など、ドライバーの左肘がセンターアームレストに干渉したが、新型では解消された。

ちなみに先代型の大きなセンターアームレストは、背もたれを大きく寝かせて左肘をアームレストに乗せ、ハンドルを右手だけで操るルーズな運転を視野に入れていた。安全を考えると、開発の前提から間違っていたのだ。

前後席の居住性は良好、後席の満足度も高い

前席は設計の新しい車種とあって、肩まわりまでサポートする。背もたれから座面にかけて、ドライバーの着座姿勢に沿った形状だから、座り心地が快適で着座姿勢も乱れにくい。体がシートに包まれた感覚になる。

後席は乗員の体が適度に沈んだところで支える。欧州のセダンには後席の座り心地が硬く感じる車種が多いが、クラウンは伝統を守って適度に柔軟だ。後席にオーナーが座る場合も満足できる。着座位置の高さは適度で、サイズに余裕があり、座面の前側を少し持ち上げたから大腿部のサポート性も良い。背もたれの下側が適度に硬く、長距離を快適に移動できる。

身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半だ。この余裕は先代型と同じだが、セダンでは余裕のある部類に入る。先代型に比べると、後席に座った乗員の足が前席の下に収まりやすく、大人4名の乗車も快適だ。

乗降性もおおむね良い。天井はあまり高くないが、頭を下げて乗り込むほどではない。後席の足元に余裕があるから、乗降時の足の取りまわし性も良い。さらに新型はドアの開閉音にもこだわり、低い音を響かせて閉まる。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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