トヨタ クラウン 試乗レポート

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日本にはやはりこの車が似合う

クラウン―それは、日本車を代表する歴史と伝統あるブランド。

何しろ、初代モデルが誕生したのは1955年と今から軽く半世紀以上も前の事。以来、今度の新型で実に「13代目」を数えるのが、トヨタのクラウンというブランドなのだ。

クラウンデザインを塗り替えるのは、クラウンだけ

新型のエクステリア・デザインは、「いかにもクラウン」らしいもの。人によってはそれを「代り映えがしない」と表現してしまいそうでもある。けれども、歴代モデルが培ってきたアイデンティティをしっかりと継承した新型のルックスが、何とも“安心”して目に出来るのもまた事実。基本的には同じボディを採用しながら、細部のデザイン変更や走りのテイストのチューニング違いでシリーズ全体を『ロイヤル』と『アスリート』の2つに大別するのは従来通り。前者には2.5Lと3L、後者には2.5Lと3.5LのV型6気筒エンジンを搭載するというバリエーションの展開も、従来の“ゼロ・クラウン”の場合と同様となる。

「最近では中国などを中心とした海外での販売台数もかなり増えてきた」とはいうものの、これまでは常に“日本市場ベスト”という姿勢で開発が行われてきたクウラン。そして、その特徴は、もちろん今回も踏襲されている。それを如実に示すのがボディサイズ。新型も「従来の大きさをなるべく超えないように、設計当初から配慮してきた」という。

それでも厳密には全長で30mm、全幅で10mmと大きくなった新型。ただし、前者には万一の衝突時に脚部を保護するため、厳しさを増した歩行者保護基準に対応する25mmのフロント・オーバーハングの増加分が含まれる一方で、何より今回も全幅が1.8mを超えなかった点に、“日本ベスト”の姿勢が感じられる。優れた視界確保への拘りや、小さな最小回転半径を実現する事なども含め、まずは日本での使い勝手を尊重した結果、仕上げられたのが新しいクラウンのデザインなのだ。

「ロイヤル」がショーファー・ドリブンとして使われる際の後席快適性も重視したチューニングの持ち主であるのに対し、「アスリート」はどちらかといえばドライバーズ・シートこそが最も特等席、というスタンスから開発されたのは従来型同様。そして、そのいずれも走りのポテンシャルは大きくアップしている。ボディ、シャシー、パワートレイン・・・と、「全てのハードウェアを一新」したのが従来型“ゼロ・クラウン”の売り物だったが、新型はそれらを引き続き使用しなければならないという“制約”を逆手にとり、徹底的な熟成に成功したという印象だ。

新しい3.5Lアスリート、飛躍した2.5Lエンジン搭載のロイヤル

まず圧巻なのが、3.5Lエンジンを搭載したアスリートの走り。それはまさに「当代一流」と表現するのが過言ではない仕上がりで、軽く300psをオーバーするエンジンが生み出す一級スポーツカーばりの加速能力と、凹凸路面に遭遇しても「クラウン」の名に恥じない快適性を保ちつつ一方で路面をしなやかに捉え続けるフットワークの実力が、「ベンツ/ビーエム、何するものゾ!」という際立つ運動性能を実現させている。

実はこのモデルは“VDIM”(車両統合制御)や“VGRS”(車速感応式ギア比可変ステアリング)、“AVS”(可変減衰力ダンパー)など、最新の電子制御システムを標準装備。だが、実際の走りではそれらの介入を意識させない、自然なテイストが心地良い。キックバックを見事に遮断しつつも、自然な操舵感をサポートする電動パワーステの仕上がりもまた素晴らしい。速くて、快適で、ハンドリングの感覚も自在で自然・・・と、まさに何拍子も揃っているのが、この新しい3.5Lアスリートの走りなのである。

一方、今回も売れ筋になるであろう2.5Lエンジン搭載のロイヤル・ナビ・パッケージ付きモデルへと乗り換えると、率直なところ感激のレベルは3.5Lのアスリートには及ばない。だが、それでもこちらの走りも従来型からレベルを大きく上げている。特にそうした感触は、雨のワインディング・ロードをロイヤル・シリーズには少々似つかわしくないほどのペースで走行した際に、基本となるシャシーの能力が相当に高い事を知らされた時点で納得出来た。このモデルには“VDIM”がやはり標準装備。しかし、基本のシャシー能力が高いために少々アップテンポな走りを試みた程度では、そんな電子ディバイスの助けを必要とするような状況にはなかなか陥らないのだ。

“新型クラウン”再びの脅威である

今回もクラウンが「日本のためのクルマ」という事実は、ナビゲーション・システムとの協調シフトや、協調サスペンション・コントロールの採用によって証明されている。例えば、高速道路本線への流出入の際に、加速力やエンジンブレーキ力を補助する変速動作を行ったり、一度走行した高速道路上の段差情報をナビの地図情報上に記憶しておき、次回の走行の際にはそのデータを元にダンパー減衰力の最適化を行って快適性の向上を図るなどといった制御がそうしたものだ。

このあたりは、まさにクラウンが“日本車”である事のメリットを最大限に生かした象徴的部分。現代の日本車の多くが、より多くの数を販売する海外市場への適合を図った結果に、日本での適性はむしろ退歩させつつある例が目立つ中で、「日本のための日本のクルマ」という誇りを持つクラウンがその仕上がりレベルを大幅に向上。その事実は、多くの日本の自動車メーカー、エンジニアに対しても無視の出来ない反省材料を突き付けたと言っても良いかも知れない。

「クラウン」と聞くと、率直なところ“走りは二の次のオジさん車”という印象を抱いてしまう人は、今でも少なくないかも知れない。しかし、今度の新型はそんな古いイメージを一瞬で払拭してしまうくらいの、真に優れた走りのポテンシャルの持ち主なのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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