新ジャンルクロスオーバー”トヨタ C-HR”が改めて問う、クルマ本来の愉しさ(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
プリウスより少し重いが不満のない走りをみせるハイブリッド
トヨタはC-HRの開発にあたり「重視したのは何よりも走りとデザイン」と主張する。まずは売れ筋とされるハイブリッドの”走り”、動力性能について述べたい。
ハイブリッドシステムやプラットフォームは、基本的にトヨタ プリウスと共通だ。プリウスに続き、”TNGA”(Toyota New Global Architecture)という新しい開発概念を取り入れたとトヨタでは主張する。
C-HRの車両重量はプリウスに対し80kgほど重いが、力不足は感じない。C-HRが最終減速比をプリウスよりもローギヤード化した効果もあるだろう。モーターの駆動力にも比較的余裕があり、高速道路を巡航中にアクセルペダルを踏み増した時などは、即座に滑らかな加速を開始した。加速性能はプリウスと同等で、パワフルとはいえないが、満足できる水準に達している。
ノイズも抑えた。モーター駆動を併用するハイブリッドとあって、複数の音が聞こえるが音量は小さい。モーター駆動のみで発進して、エンジンが始動した時も騒々しい違和感は生じない。
”走り”をウリにするにはちょっと物足りない1.2ターボ
いっぽう、1.2リッターのガソリンターボは、実用的に不満はないものの「走りを重視した」ことを考えると少し物足りない。4WDを搭載したから車両重量は1470kgと重く、最高出力は116馬力(5200~5600回転)、最大トルクは18.9kg-m(1500~4000回転)だ。同じエンジンを搭載するハッチバックモデルのトヨタ オーリス 120T(2WDのみ)に比べて170kg重いので、最終減速比はローギヤード化したものの、やや無理をしている印象がある。
ただしエンジンの性格は素直だ。4500回転付近から加速が少し活発化するものの、幅広い回転域で滑らかに吹き上がる。ターボのクセが抑えられ、CVT(無段変速AT)に装着された7速の疑似変速機能を使った時も、シフト操作のタイミングが分かりやすい。クルマ好きのユーザーは、ハイブリッドよりも1.2リッターターボに好感を持つと思う。
今後、ターボ+6速MTモデル導入の可能性もあり!?
C-HRの開発者は「海外仕様には1.2リッターターボの6速MT仕様があり、これはとても楽しい。将来的には日本への導入も検討したい」という。今の日本仕様になければ話にならないし、6速MTは日本の使用環境にも合わないが、エンジンの性格を考えると確かに相性は良さそうだ。少し非力で素直なエンジンを、MTで高回転域まで回す運転は楽しい。1.2リッターターボの特に2WDならそれを味わえると思う。
ただし、仮に6速MTを導入するとなると、低回転域には注意が必要になりそうだ。1400回転以下ではトルクが下がり、CVTではこの回転域を使わないように変速するが、6速MTで手動操作し巡航するとドライバーも意識せざるを得ない。その特性も含めた上で、マメなシフト操作を積極的に行いながら走る”マニア好み”な楽しさ、ということになる。
走りが楽しい良く出来たアシは乗り心地だって良い!
C-HRの走行安定性と乗り心地は優れた部類に入る。操舵に対する反応は機敏ではないが、車両の向きが正確に変わる。後輪の接地性も高く、走行安定性を確保した上で、ドライバーの感覚に合った曲がり方をする。危険を回避する場面でも、挙動の変化がゆっくりと進んで乱れにくい。
つまり良くできた足まわりだから、乗り心地も快適だ。ソフトではないが、タイヤが路上を細かく跳ねる動きを抑えた。段差を乗り越えた時も突き上げ感が弱められ、コンパクトなSUVながら気分良く走れる。
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この共通点を踏まえた上で、2種類のパワートレイン、2種類の駆動方式、2種類のタイヤサイズの違いにも触れておきたい。
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