プリウスの弟分脱却!トヨタが新型アクアSUV投入のワケとは
- 筆者: 桃田 健史
アクア・プリウスの見込み客が日産 ノート e-POWERに流れている
「オタクのは、普通のハイブリッドでしょ。でも、向こうは”新しいEV”なんですよ」
昨年後半から、トヨタディーラーにアクアやプリウスを見に来た購入見込み客が、そういうことを言う場面が増えたという。
結果的に、こうした購入見込み客の多くが”向こう”に流れていく。
”新しいEV”とは、日産 ノート e-POWERのことである。
トヨタの販売現場からは「”新しいEV”といっても、実質的にシリーズハイブリッド車でしょ。マーケティング戦略としては見事だと思いますが、なんとも悔しいかぎりです」という声が挙がっている。
人工知能による自動運転、5G通信によるコネクテッドカー、そしてビッグデータを活用したカーシェアリングなど、異業種からの新風によって世界自動車産業界はいま、史上空前の大転換期に突入している。
だが、販売現場では、そうした時代の大流よりも”今月の売り上げ”の方が気にかかる。
現状での自動車産業は、”新車を数多く売ること”が最優先であり、日本で自動車販売シェアを半数を牛耳るトヨタにとって、国内主力車種であるアクアとプリウスが”新しいEV”に振り回されている現状を深刻に受け止めるのは当然である。
こうした中、アクアが2017年6月にマイナーチェンジを行った。
”プリウスの弟分”という立ち位置からの脱却
改めて、アクアという商品の存在意義を考えてみると、そもそもの発想はミニ・プリウスだ。その証拠に、北米仕様アクアはプリウスCという商品名で販売されている。
プリウスは、第三世代においてハイブリッドという市場を確立し、その頂点に君臨した。ハイブリッドの王者として、余裕十分の室内空間が必然となった。そこで、外観も含めてかなり大きくなった。
そのため、トヨタディーラーに第三世代プリウスを見に来た購入見込み客からは「ひとりかふたりで乗ることが多いので、これだとサイズ的にちょっと大きい気がする」という声が聞かれるようになった。
そこに登場したのが、アクアだ。
つまり、アクアの特徴は、プリウスに対する”小ささ”だ。
トヨタの狙いは奏功し、プリウス購入見込み客の一部がアクアへと流れていった。
また、「軽自動車っていうのも、取引先の手前、ちょっと…」という声があった商用車向けの需要も確保した。しかし昨今、「軽自動車でも十分」という声から新型ミライースに小型商用車の需要が流れ始めた。
こうした声も念頭に、アクアがマイナーチェンジを行う。
新生アクアにクロスオーバー系の派生モデルを投入
マイナーチェンジで最も重視するのは、”小ささに対するイメージチェンジ”だ。
そこで生まれた発想が、クロスオーバー系の派生モデル「アクア クロスオーバー」の投入だ。
端的に考えれば、プリウスに対するC-HRともいえるが、これはけっしてミニ・C-HRという発想とは言い切れない。
あくまでも、現行アクア誕生の裏にある、”プリウスに対する小ささ”から脱却し、様々な生活シーンでも活用可能な”新しいかたち”を演出することで、アクアを再生させようという考え方だ。
とはいえ、今回のマイナーチェンジは、アクア周辺の社会事情が大きく変化する中での、まさしくリリーフ投手であり、アクアを根本的に見直すまでのビックマイナーチェンジとはいえないはずだ。
消費者にとっては、燃費競争が購買動機とも言えなくなってきたいま、アクアという商品の方向性に大きな軌道修正が必要なのかもしれない。
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