免許持たない中高校生が新型車のトヨタ 86とマツダ ロードスターを運転
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:茂呂幸正
クルマ社会にとって歴史的な時間
2017年4月17日(土)、東京・お台場。毎年恒例のイベント「モータースポーツジャパン」で、歴史的な出来事があった。
それが『U-18運転予備校』だ。U-18は、アンダー18(18歳未満)のこと。運転免許の取得資格がない年齢の人に向けた、自動車の運転講習会である。 参加資格は、18歳未満の中高校生で、身長が150cm以上あること。
そして、ビックリするのが使用するクルマだ。なんと、トヨタ 86とマツダ ロードスターの新型車なのだ。トヨタ本社とマツダ本社の広報車両など5台が用意された。
こうした最新スポーツカーに、子どもたちが乗れるのだ。けっして助手席での同乗走行ではない。子どもたちが自ら運転するという、前代未聞の出来事だ。
なぜ、こんなことを行うのか?
U-18運転予備校を主催したのは、筆者も会員である『AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)』だ。AJAJでは毎年、モータースポーツジャパン会場内で、『みんなの楽ラク運転講習会』を実施している。車庫入れ、急ブレーキ体験、低速走行(アリさんブレーキ)など、一般の方に実車を使ってさまざまな体験をしていただく人気の催しだ。こうした体験で運転席に座れるのは、運転免許の保持者に限定している。
一方、今回が初開催となった「U-18運転予備校」では、参加対象者をあえて“運転免許を取れる年齢以下”に設定した。
その理由は大きく2つある。
ひとつは、自動車事故の予防だ。歩行者や自転車などの立場では、クルマがどうやって動くのかが分からない。実際にクルマを運転することで、運転者の気持ちを知ってもらい、日々の生活のなかで交通事故の危険から自らの身を守って欲しい、という点。
もうひとつは、クルマに興味を持ってもらうことだ。「若者のクルマ離れ」と言われて久しいが、子どもの頃に実車を運転した体験が「18歳になったら免許を取って、クルマを買いたい」という、日本の自動車産業への応援だ。
平均年齢は14.2歳
AJAJのホームページで申し込みを受け付け、最終的に抽選によって選ばれたのは24人。4月17日、18日の二日間開催で、1日12人が参加した。
初日の12人は、最年少が12歳、最年長が16歳で平均年齢は14.2歳。うち5人が女の子だった。
プログラムは、特設テントで約40分間の座学の後、少し前まで急ブレーキ体験を行っていたスペースに移動して実車に乗り込む。シートポジションを合わせ、シートベルトを締め、エンジンをスタート。ステアリングの回し方を練習し、アクセルを踏んでエンジン回転数を2000rpmまで上げる練習。
次に、オートマチックのシフトをDレンジに入れ、サイドブレーキを下して、ブレーキから足を離して、クリープ状態で前進。その速度をブレーキで調整する。そして、Rレンジに入れて、後退しながらブレーキの感覚をつかむ。
こうした一連の練習時間は、合計でもひとりあたり5分程度と少ないが、参加者たちは特に大きな問題はなく、確実にプログラムをこなした。
そして、次はメインイベント。パイロンを立てて作った1周100メートルほどの楕円コースを走る。助手席に私を含めたインストラクターが乗ったが、参加者たちはこちらがビックリするほど、しっかりと運転することができた。
継続することに意義がある
今回の試みについては当然、賛否両論があると思う。「無免許運転を助長するのではないか?」「もしものことがあったら、どうするのか?」といったネガティブな意見が出ることを主催者側も十分に承知している。
道路交通法では、私有地において運転免許証を所持していない、または運転免許証を取得する資格がない者が自動車を運転することを禁止する規定はない。「規定がないから何をやってもいいのか」という解釈ではなく、様々な可能性があるとポジティブな捉え方をするべきではないだろうか。
開催二日目の18日(日)も、参加12人は我々インストラクターが驚くほど、トヨタ 86と、マツダ ロードスターを操った。
『U-18運転予備校』、まずは第一歩を踏み出した。
[Text:桃田健史]
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