走りの純度を高め、より“懐が深い”乗り味へ／トヨタ 86[後期モデル] 試乗レポート(4/4)

気になるBRZとの違いは！？

そして、多くの人が気になるのは“トヨタ「86」とスバル「BRZ」の違い”だろう。

実は86の試乗会の1週間前に、BRZの試乗会が同じ富士スピードウェイショートコースで開催されている。厳密に言うと、完全な同スペック同士での比較ではないが、86／BRZ共にいくつかのグレードを乗ることができたので、その印象を元に相対比較をしてみると…。

兄弟車なので多くの部分は共通だが、後期では「ダンパー」、「EPS制御」、「空力」の3点が各々独自のセットアップとなっている。

ちなみに“走りの味付け”は、トヨタ／スバル独自でセットアップを行なっているが、あるタイミングで擦り合わせを行なうと、バネ／スタビライザーの設定などはほぼ同じだったそうだ。開発途中で「それなら同じセットでいいのでは？」と言う話も出たそうだが、今回も各々のこだわりは譲れなかった。

前期では86は「FRらしさを強調」、BRZは「安定志向」と言われていたが、後期はちょっと違う。86は「FRらしさを残しながらコントロール領域の懐の深さを高める」、BRZは「安定感を維持させながらFRらしさを高める」セットアップだと語る。

ちなみに普通に乗っている限り、走りの差はほとんど解らないレベルだ。正直言ってしまうと、86／BRZと解らない状態でテストをしたら間違うかもしれない（笑）。

サーキットで追い込んでいくと違いが顔を出してくるが

ただ、サーキットのようなステージで追い込んで走らせると違いがちゃんと顔を出す。86は操舵初期からスライドに至るまでの一連の動きが滑らかで解りやすいので、安心感も高く「86も大人になったなぁ」と言う印象。

それに対して、BRZは86よりも直進性は高いが操舵初期の動き出しが若干鈍いので、それ以降のクルマの動きが相対的に唐突に感じた。もちろんコントロールは可能なレベルなので問題はないが、従来のBRZのイメージからすればやんちゃになった印象だ（笑）。

86は空力操安をより引き上げるボディデザインを採用し、空力／ボディ／サスペンションと受け持つ領域を分け、その連続性にこだわったと言うが、BRZの空力操安は前期と同等レベルで、基本的にはボディ／サスペンションでバランスを取っているそうだ。恐らく各々の目指す「理想のFRの走り」はどちらも同じだと思っているが、それを実現させる手段の違い＝走りの差となったのだろう。そう考えると「空気の力」は偉大である。

と、細かい事を色々言ってみたが、あくまでも重箱の隅を突いた時の話である。

どちらに乗っても「操る喜び」、「コントロールの楽しさ」は共通なので安心してほしい。

[レポート：山本シンヤ／Photo：和田清志]

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トヨタ 86 GT ”Limited”[FR／6速MT] 主要諸元

全長x全幅x全高：4240x1775x1320mm／ホイールベース：2570mm／車両重量：1240kg／駆動方式：後輪駆動(FR)／乗車定員：4名／エンジン種類：FA20型 水平対向4気筒「D4-S」ガソリン直噴エンジン／総排気量：1998cc／最高出力：207ps(152kW)/7000rpm／最大トルク：21.6kgf-m(212N･m)/6400-6800rpm／トランスミッション：6速マニュアルトランスミッション／使用燃料：無鉛プレミアムガソリン／燃料消費率：11.8km/L[JC08モード燃費]／タイヤサイズ：215/45R17 87W／メーカー希望小売価格：3,183,840円[消費税込み]