スズキ 新型スイフト ”フル”ハイブリッド試乗レポート|2種類のハイブリッドが併売される理由(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:島村栄二
モーターのみで静かに発進出来るスイフト フルハイブリッド
このように、低燃費と低コストの両立をめざすスイフトハイブリッドの成り立ちはいかにも実直なスズキらしい。デビュー早々、早速試乗する機会を得たので、スイフトハイブリッド SLをテストした。
スイフトのエンジンは、1.0リッターターボ搭載のRStを除けば、ハイブリッドを含めて基本的に全車共通の直列4気筒の1.2リッターを搭載する。最高出力は91馬力(6000回転)、最大トルクは12kg-m(4400回転)となる。今回追加されたスイフトハイブリッド(フルハイブリッド)は、これに13.6馬力/3.1kg-mのモーターを加えハイブリッド化させた。
モーターの作動は発進時に良く分かる。エコモードを選んでATレバーをDレンジに入れ、ブレーキの踏力を緩めると、モーターの駆動力だけで静かにスタートした。ハイブリッドでは今や当たり前の動きだが、エンジンが始動するスイフトのマイルドハイブリッドではなかった動きだ。
アクセルを穏やかに操作すると、モーター駆動だけで速度を高めた後にエンジンが始動する。この時のノイズも小さい。アイドリングストップ後のエンジン始動を行うISGは、ベルトによってエンジンを回すために金属的なノイズが生じないのだ。エンジン音も低回転域では小さく抑えられ、始動したことが分からないほど。コンパクトなハイブリッド車は全般的にエンジン始動時のノイズが大きいため、スイフトハイブリッドの大切なメリットになる。
シングルクラッチ式の不得手を帳消しにしてしまったモーターの威力
シングルクラッチトランスミッション5速AGSの変速マナーも、ソリオからさらに進化した。シングルクラッチ方式としては、フォルクスワーゲン up!などに比べると格段に滑らかだ。up!も発売直後に比べると改善されたが、それでもスイフトが大幅に勝る。
さらにステアリングのパドルシフトを使った時の変速時間はさらに短い。エンジン回転を高めて走っている時にパドルで変速すると、相応のショックを伝えるが、パドルはドライバー自身が操作するから唐突感が抑えられ、あまり気にならない。むしろ素早く反応させた方が操る感覚が強まる。
シフトダウンした時はエンジン回転が適度に高まってクラッチが繋がり、機敏な変速が行える。操作感覚とATの作動は上級のツインクラッチ方式DCTに近い。
最近はCVTにもパドルシフトが装着されるが、これはあくまでも疑似的な変速で歯切れが悪い。その点で5速AGSは本物の有段式だから、ダイレクト感が伴う。
発進・加速時のみならず、巡航時でもモーター駆動による利点が得られる
スイフト フルハイブリッドにおけるモーター駆動の効果は、発進時だけでなく巡航中にも味わえる。
スイフトの1.2リッターエンジンは、前述のように最大トルクを4400回転で発生させ、やや高回転指向だ。4000回転を超えた領域で加速が活発化する。したがってノーマルモデルでは2000~3500回転付近が少し物足りないが、そこをフルハイブリッドでは反応の素早いモーターが補ってくれる。
またエンジン回転が下がる巡航中にアクセルペダルを緩く踏み増した時は、モーターの駆動力が立ち上がって滑らかに速度が高まり、1.5リッタークラスの余裕を感じた。
いっぽう、モーターやバッテリーなどの付加物が搭載されノーマルモデルよりも重たくなる傾向にあるハイブリッドでありながら、スイフトハイブリッドは車両重量が960kg(ハイブリッド SL)と1トン以内に収まることも、強力とはいえないモーターが動力性能を高めた秘訣だ。
マイルドハイブリッド比で60kg増、走行性能に変化はあったか
走行安定性はベース車のスイフトに準じる。軽いといってもフルハイブリッドの採用でマイルドハイブリッドのML(900kg)に比べると60kg重いが、デメリットは感じない。駆動用リチウムイオン電池を荷室の下に設置したが、後輪車軸の真上あたりで、後方にオーバーハングさせてはいない。従ってカーブを曲がる時も慣性の悪影響を受けにくい。
特に峠道のカーブを曲がる時などは、ボディが舵角に応じて正確に内側を向き軽快な印象を与えてくれる。後輪も適度に粘って曲がりやすさと安定性を両立させた。ノーマルエンジンやマイルドハイブリッドを搭載したスイフトと同様の軽快感を味わえる。
乗り心地は少し硬いが粗さはなく、ボディが軽い割にしっかりした印象だ。欧州車のように軽量でも骨太感のある運転感覚を実現させた。
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