スズキ スペーシア 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
お買い得は中間グレードの「X」
スペーシアのグレードはベーシックな「G」(122万8,500円)、中級の「X」(132万3,000円)、ターボを装着した最上級の「T」(141万7,500円/価格はすべて2WD仕様)の3種類を用意。先代「パレット」にあったカスタム版(パレットSW)に相当するエアロ仕様は今のところなく、遅れて今夏の登場を予定している。
XとTには、Gが装着しない左側スライドドアの電動開閉機能、リアシートのサイドウィンドウに装着されているロールサンシェード、フロントオーバーヘッドコンソールなどが備わる。
走りに関する装備では、XとTにはフロントスタビライザー(ボディの傾き方を抑える棒状のパーツ)が備わり、タイヤがGの13インチに対して14インチに変わる。
つまりGとXはエンジンは共通ながら足まわりとタイヤが異なり、XとTは足まわりとタイヤは共通だが、Tにはターボエンジンが備わる。
3グレードのうち、売れ筋でお買い得なのはスペーシア「X」。実用装備が充実していて燃費性能にも優れており、車両価格は132万3,000円だ。ライバル車の「ホンダ N BOX」G・Lパッケージ(136万円)、「ダイハツタント」X(132万円)と同様、全高が1,700mmを上まわるスライドドアを備えた軽自動車の売れ筋価格帯に収まる。
ノンターボエンジンは(平坦路なら)必要十分な性能を確保
まずはそのお買い得モデル、スペーシア Xを試乗。平坦な道を走る分には動力性能の不足を感じない。巡航状態に移ると、軽くアクセルを踏んでいる2,000回転以下では駆動力が足りないが、アクセルペダルを少し踏み増せばエンジン回転が2,300回転付近に高まり、適度にパワーが高まる。
辛く感じたのは登坂路。パレットに比べると90kgの軽量化を図っても、車両重量は850kgに達する。アクセルペダルを踏み増すことになり、走行状況によってはエンジンが4,000回転を超える。加速の伸びはいま一歩だ。もっとも、エンジンがR06A型に変わってノイズは抑えられた。
乗り心地は硬め。タイヤは14インチ(155/65R14)、13インチ(145/80R13)ともにダンロップ・エナセーブEC300を装着し、指定空気圧は転がり抵抗を抑えるために280kPaと高い(一般的には200~220kPa)。時速40~50kmで走っていると、路面のデコボコを乗員に伝えやすい。低燃費を追求した弊害だろう。
1700mm超えの車高の割に走りの総合バランスは高い
その半面、操舵感と走行安定性のバランスは良い。
スペーシアのような背の高い軽自動車は操舵感を鈍く抑え、やや曲がりにくい設定にするのが普通だ。走行安定性を高めるには後輪を踏ん張らせることが大切で、操舵感をあえて鈍く抑える。
運転していると、安定性を優先させ、曲がることを早々に諦めたような印象を受ける。ところがスペーシアは、背が高い割に良く曲がる。走り方によっては、旋回速度が高まりやすい。
少々不安になるが、曲がっている最中にアクセルを閉じたり、ブレーキを踏むような操作をしても、スペーシアは意外に安定性を損ないにくい。全高が1700mmを超える軽自動車では、走りの総合バランスは高い部類だ。
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