[試乗]スズキの新型ソリオ フルハイブリッドは、これまでと何が違うの!? ライバルのトール/ルーミーとも徹底比較!【最新情報】(1/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
新たにラインナップに追加されたフルハイブリッドに迫る!
2015年夏にデビューしたスズキの新型ソリオに新ラインナップ<ソリオ ハイブリッド>が加わった。これまでの”マイルドハイブリッド”に対し、新型はEV走行も可能な”フル”ハイブリッド。32.0km/Lの低燃費を誇る。その乗り味はどうなのか。そして同時期に登場したライバル車ダイハツ トール/トヨタ ルーミー4姉妹車との違いは。気になる新型ソリオハイブリッドの印象について、自動車評論家の渡辺陽一郎さんがレポートします。
”ハイブリッド”を2種類も用意したスズキ ソリオ
ダイハツトール/トヨタ ルーミー&タンク/スバル ジャスティの4姉妹車が発売され、注目を集めているのがライバル車のスズキ ソリオだ。全長と全幅を小さく抑えた背の高いトールワゴン型コンパクトカーで、以前はライバル車が実質的に不在だったが、ルーミー4姉妹車の登場により状況は一変した。トヨタ/ダイハツ/スバル連合が一斉に参入したことで、改めて『ソリオは実は凄いクルマだったのね』という見方がされている。
そしてトール/ルーミー4姉妹車の発売から20日を経過した2016年11月29日に、ソリオはフルハイブリッドの”ソリオ ハイブリッド”を加えた。従来のマイルドハイブリッドと併せて、今では2種類のハイブリッドを選べる。
従来のマイルドハイブリッドとフルハイブリッドの違いとは
ソリオフルハイブリッドの詳細は、発表日に新型車解説を掲載しているので、ここでは実際に試乗した印象を述べたい。
まず従来のマイルドハイブリッドとフルハイブリッドの機能的な違いだが、前者はモーター機能付き発電機”ISG”(Integrated Starter Generator)が、減速時を中心とした回生発電と充電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援(モーター駆動は最長で30秒)を行う。
これが新型ソリオ ハイブリッドのフルハイブリッドになると、マイルドハイブリッドの機能に、駆動用モーター”MGU”(Motor Generator Unit)と駆動用高電圧リチウムイオン電池などが加わる。MGUは駆動と併せて、減速時には減速エネルギーを使った回生も行い、駆動用電池に充電する。
そうなるとISGの役割も変わり、マイルドハイブリッドと違って回生発電は行わない。ただしエンジンの駆動力を使った発電は担当して、鉛電池と補助用リチウムイオン電池(駆動用電池とは異なりメーターやオーディオに電力を供給する12Vのもの/助手席座面下に配置)に充電を行う。つまりフルハイブリッドは、リチウムイオン電池が駆動用と補助用、さらにヘッドランプなどに電力を供給する12Vの鉛バッテリーも加え、3つの電池を搭載するわけだ。
いまあえて、シングルクラッチ式5速AGSを採用した理由とは
トランスミッションも異なり、マイルドハイブリッドはCVT(無段変速AT)だが、フルハイブリッドはシングルクラッチを使う5速AGS(オートギアシフト/有段式AT)となる。
フルハイブリッドが5速AGSを使う一番の理由は、フルハイブリッドではシステムが大型化されてCVTの搭載スペースを確保できなかったこと。また5速AGSでは駆動系が直結されるため、巡航時には駆動力の伝達効率が優れ、アクセルペダルの操作による速度調節も正確に行える。
その代わりにシングルクラッチ式の有段ATは変速に少し時間がかかり、加速が変速の度に途切れるシステム上の欠点がある。乗員の体が変速の度に前後に揺すられやすい。
この欠点を解消すべく、ソリオのフルハイブリッドでは、変速タイミングを見計らってモーターの駆動力を増幅するようにした。MGUはトランスミッションとは別個に配置されるから、変速中に出力を高めて加速が滑らかに繋がるように制御できる。
気になる5速AGSの変速制御はかなりスムーズ
そこで、さっそくソリオ ハイブリッドに試乗してみよう。
気になる5速AGSの変速制御はかなりスムーズだ。モーターの駆動力アップと併せて半クラッチも巧みに使い、通常の市街地走行では、シングルクラッチATにありがちなギクシャク感をほとんど生じない。ホンダ フリード ハイブリッドなどが採用する7速DCTはツインクラッチ式トランスミッションだが、ハイブリッドシステムの影響もあって少し変速ショックを伴う。これと同等かそれ以上にスムーズに感じた。少なくとも個人的には、今まで試乗したシングルクラッチAT車の中ではダントツの滑らかさだと感じた。
試しにアクセルペダルをフルに踏み込んで全力加速を行うと、さすがにモーターの出力アップが追い付かず、変速の度に体が前後に少し揺すられる。それでも許容範囲で、通常走行ではあり得ない特殊な加速をした時に限られる。
5速AGSのメリットとして、前速度の細かな調節がしやすいことも確認できた。CVTではアクセルペダルを緩く踏み増した時、エンジン回転が先行して高まり、その後に速度が上昇する感覚になりやすい。速度の変化に応じてアクセルペダルを戻す操作も必要だが、クラッチによって直結された5速AGSでは煩わしさを感じない。
フルハイブリッドのソリオ ハイブリッドでは速度計の左側にモーターパワーメーターが備わり、針が左側に振れると充電されていることを示す。減速時には左方向に針が振れ、ブレーキペダルを踏み増すと充電の度合いがさらに強まる。
開発者によると、ブレーキの協調制御とは意味が異なるが、ブレーキペダルの操作に応じて回生力を高める働きは持たせた。Lレンジは回生の度合いが下がるので、エンジンブレーキが必要な時以外はLレンジを使わず、Dレンジのエコモードでフットブレーキを緩やかに踏みながら減速すると効率が高まる。
またマルチインフォメーションディスプレイの表示で、エンジンが作動していながら駆動用電池が十分に充電された時は、一度アクセルペダルを戻して改めて踏み直すと、エンジンが停止してモーター駆動のみに切り替わることがある。
ECOモードではEV走行の頻度が高まる
エコ/標準モードの選択が可能なこともフルハイブリッドの特徴だ。エコモードでは、駆動用電池が充電された状態でブレーキペダルを離すと、モーターのみの駆動でゆっくりと発進。その後にエンジンが始動して、エアコンも燃料消費量を抑える制御になる。
時速60km以下では、走行状態に応じてエンジンが止まってモーターのみの走行になり、この時の再始動ではISGがベルトでエンジンを回すから静かだ。遮音性能もマイルドハイブリッドに比べて向上しており、コンパクトカーとしては静かで滑らかな走行が行えた。
モーター駆動のみの状態でアクセルペダルを踏み増すと、エンジンを始動させると同時にクラッチが繋がる。この時には若干の時間差があるが、違和感が生じるほどではない。
モーターの最高出力は13.6馬力、最大トルクは3.1kg-mと小さい。動力性能が大幅に高まる印象はないが、エンジン回転が下がった状態では、反応の素早いモーターの駆動力が高まり滑らかな走りを支援する。運転がしやすく感じられ、アクセル開度も抑えられるために静粛性も優れている。
ソリオ | マイルドハイブリッド | ハイブリッド |
---|---|---|
車重(kg) | 950(4WDは990) | 990 |
排気量(L) | 1.242 | 1.242 |
最高出力(kW/rpm)ネット | 67<91PS>/6,000 | 67<91PS>/6,000 |
最高トルク(N・m/rpm)ネット | 118<12.0kg・m>/4,400 | 118<12.0kg・m>/4,400 |
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