インド生まれのコンパクトハッチ「スズキ バレーノ」が日本で抱える“問題点”とは【徹底解説】(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
緊急自動ブレーキは全車標準装備
装備については安全面が注目される。
バレーノでは「レーダーブレーキサポートII」と呼ばれる緊急自動ブレーキを、全車に標準装備。ミリ波レーダー方式で、前方の車両に衝突する危険を検知すると警報を発する(移動車両が対象の時は時速100km以下/静止車両に対しては80km以下)。
それでも回避操作が行われない時は軽い自動ブレーキを作動(移動車両は時速100km以下/静止車両は作動しない)。衝突不可避になると、強い緊急自動ブレーキが働く(移動車両は時速100km以下/静止車両は時速30km以下)。
ただし、レーダーのみだから歩行者は検知できない。その代わり車間距離を自動制御できる「アダプティブクルーズコントロール」が備わる。 アダプティブクルーズコントロールで注意したいのは、作動速度が時速40~100kmで全車速追従にならないことだ。
先行車が減速して時速40kmを下まわるとクルーズコントロールの制御が解除されるから、ドライバーが自分でブレーキを操作せねばならない。
なので停止状態までカバーできるスバルのアイサイトなどを使い慣れたユーザーが、バレーノのクルーズコントロールを使用する時は、下限速度の違いに注意して欲しい。
純粋に、装備と価格を考慮するとXTが買い得なのだが・・・
価格は、1.2リッターエンジンのバレーノ XGが「141万4,800円」、1リッターターボのバレーノ XTが「161万7,840円」、バレーノ XTのセットオプション装着車は「11万160円」の上乗せになる。
この内、機能や装備と価格のバランスを単純に判断した場合、買い得なのは「バレーノ XT」だ。XGに比べて20万3040円高いが、XTにはディスチャージヘッドランプ、オートライト、16インチアルミホイール、LEDサイドターンランプ付きドアミラーなど17万円相当の実用装備が加わる。
従ってターボを装着したエンジンの換算額は約3万円になり、3気筒とはいえ性能の向上を考えれば割安だ。
セットオプション装着車には本革シート表皮が使われ、マルチインフォメーションディスプレイがカラー化されたりするので、11万円少々であればこれも割安だが、実用性はさほど向上しない。本革シート表皮が欲しければ選ぶと良い。
なのでバレーノXTをベストグレードに挙げたいところなのだが、前述の通りバレーノ XTはエコカー減税の対象外となっているうえに燃費もバレーノ XGに比べて見劣りする。
ボディが軽いので1.2リッターの自然吸気エンジンでも実用的には十分だから、ターボの必要性を感じない、ヘッドランプがハロゲンになっても良いというのであれば「バレーノ XG」のほうを検討したい。
バレーノの今後の課題としては、せめてアイドリングストップとサイド&カーテンエアバッグは用意して欲しい。
そしてバレーノを、イグニス/次期スイフト/ソリオというコンパクトカーシリーズの上級モデルに位置付けるならば、全車にレギュラーガソリン仕様のターボを搭載して、燃費の向上と減税対応を図るべきだ。
輸入車だから性能面で自由度が狭まる事情はあると思うが、現状ではグレード構成を含めて中途半端な印象を受けてしまう。
それでもミリ波レーダー方式の緊急自動ブレーキなどが標準装着されることも考えると、3ナンバーサイズのハッチバックでは買い得だ。アクセラ スポーツやオーリスに比べると、装備の水準を合わせれば30~40万円は価格を安く抑えられている。
バレーノ XGについては「ホンダ フィット13G・Fパッケージ」「日産 ノートX」「スズキ スイフト XG-DJE」などと比較しても若干割安に感じられる価格となっている。巧みなところを突いているので、燃費関連を改善させてさらに商品力を高めて欲しい。
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