なぜ、いまスズキは“軽”ではなく“小型車”にこだわるのか【イグニス 徹底解説】(5/5)

なぜ、いまスズキは“軽”ではなく“小型車”にこだわるのか【イグニス 徹底解説】
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軽自動車から小型車へ・・販売をシフトし始めているスズキ

間もなくデビュー予定のスズキ バレーノ(東京モーターショー2015にて撮影)

こうなる背景には、今のスズキが「軽自動車から小型車に販売を少しずつシフトしている」ことも挙げられる。

目標は1年間の登録車(小型+普通車)の販売台数を「10万台に引き上げること」だ。2015年は7万6,656台だったから、約30%の上乗せが必要になる。そのためにハンガリー工場製の「エスクード」を導入したり、今後は「バレーノ」と呼ばれる新型車も発売する。

イグニスは流行りのコンパクトクロスオーバーで5ナンバーサイズにも収まるから、重要な基幹車種だ。開発者によると「イグニスは後席の居住性や荷室の使い勝手に優れ、スイフトは(2016年に登場する次期型を含めて)上質な運転感覚を重視している」とのこと。

つまりイグニスとスイフトは売り分けの可能な商品で、さらに空間効率の優れたソリオも含め「3本の柱で年間10万台を目指したい」というわけである。

過熱し過ぎた、ダイハツとの販売合戦

では、どうしてスズキはそこまで小型車にこだわるのか。軽自動車だけではダメなのか。

(手前から)スズキ ワゴンRスティングレー/ダイハツ ムーヴカスタム/ホンダ N-WGNカスタム

この背景には、泥試合の様相を呈している「ダイハツとの販売合戦」がある。新聞などでは「軽自動車の売れ行きが下がった」と報道されているが、対前年比だけを見た表層的な分析だ。

確かに2015年の対前年比は83.4%にとどまったが、2014年は107.6%(登録車は100.8%)、2013年も106.7%(登録車は96.2%)に達する。

このように登録車が微増や減少する中で軽自動車だけが増え続けてきたから、2015年に10%以上減っても軽自動車のシェアは低くない。2015年も新車として売られたクルマの38%が軽自動車であった。

そして2014年まで増え続けてきた背景にあるのが、スズキとダイハツの軽自動車販売ナンバーワンを巡る争いだ。

スズキとダイハツが激しく争えば、ホンダや日産も同調しないわけにはいかない。大人しくしていたら顧客を取られてしまうからだ。だから2014年までは過熱気味で、市場環境が悪いのに軽自動車の売れ行きだけが伸びてきた。

生産ペースも高く、結果的に在庫が残り、販売店が届け出を行って中古車市場に放出する車両も少なくなかった。このムダで無理な争いを、増税もあって少し弱めたのが2015年の状況だ。

軽自動車を守るためにも、普通車や小型車へ力を注ぐべき

スズキ エスクード

スズキが登録車の年間販売10万台をねらう背景には、ダイハツとの争いを避ける効果もある。ほかのメーカーにも良い影響を与えるだろう。

販売比率が軽自動車に偏ると、登録車の開発は、ますます海外指向を強めてしまう。軽自動車が中心のスズキが小型車に力を入れているのだから、ホンダや日産は、さらに日本の市場に合った小型車を造って欲しい。

トヨタ 新型シエンタの販売が絶好調なのも、価格が割安で実用性に優れた5ナンバー車が減り、設計の古い車種ばかりになっていたからだ。

軽自動車は販売会社の受け取る粗利も限られ、決して儲かる商品ではない。軽自動車は日本に欠かせない商品だが、販売が大きく偏ると、さらなる増税も招く。また今の状況では、軽自動車の自賠責保険料が登録車を超えることも考えられる。

自賠責保険料は税金と違って軽自動車を安くしているのではない。保険収支のバランスで、結果的に軽自動車が安くなっているだけだ。軽自動車の事故が増えれば、自賠責保険料が登録車を超えることもある。軽自動車を守るためにも、小型&普通車にもっと力を注ぐべきだ。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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