神回避も見せた!これぞスバル魂!ニュル24時間レースでみせた連覇への情熱(3/3)
- 筆者: 川端 由美
- カメラマン:富士重工業
メルセデスAMG「GT3」の速さはやはり違う
午後7時30分にレースが再開する段階では、レインタイヤに履き替えてウェット路面での再スタートとなった。
着実に暗闇が迫る中、路面状況は、ウェットからセミウェット、ドライと路面が変化する中でレースが進行するという、難しい状況での戦いを各チームは強いられていた。そんな中でも、ハリボ レーシング の8号車をはじめ、メルセデスAMG「GT3」は一貫して速かった。
途中、唯一のライバルであったBMW「M6 GT3」がリタイアしたこともあって、夜が明けた後は、29号車、4号車、88号車、9号車と、4台のメルセデスAMG「GT3」での優勝争いとなった。
街灯もろくにない真っ暗なコースで、びしょ濡れの路面でも、ストレートでは250km/hくらいまでスピードが出ているのだ。こんな怖い中、走れるなんて、やっぱりプロのレーシングドライバーは違う!とあらためて感心した。
一方で、ウェット路面という厳しい条件が、スバル「WRX STI」にとってはAWDの実力を見せつける好機となった。あれれ?待ってよ!ライバルのアウディ「TT」はクワトロじゃないの?と首をかしげる人も多いだろう。
実は、AWDを装着すると、70kgも車重が重くなってしまうため、アウディはレース車両では前輪駆動を選んだのだ。アウディ「TT」を周回遅れにできるか、という段階まで詰め寄ったものの、 アウディには一人だけメチャクチャに速いドライバーがいて、彼のスティントになるとガンガンに追い上げてくる。
夜が明けて路面がドライになってくると、アウディ「TT」も追い上げを見せてきて、2日目のお昼までは緊迫した争いを続けていた。ところが、アウディ「TT」がまさかのクラッシュ。アウディ「TT」がリタイアしてしまって以降も、スバル「WRX STi」はペースを落とすことなく、周回を重ねていき、24時間の長いレースを完走して、見事にST3クラスでの2連覇を果たした。
最後の最後に緊迫した争いを見せたのは、トップカテゴリーのSP9クラスだ。
残り1時間を切った段階でも、29号車、4号車、88号車、9号車の4台が最後まで同じ周回どころか、数分の差で連なっていた。なかでも、トップと2位の争いは熾烈を極め、午後3時30分のチェッカー目前まで、1位の29号車と2位の4号車はテール・トゥ・ノーズの争いを続けた。
紳士協定でこのままゴールか?などと思っていたら、最後の最後、ファイナルラップで4号車がクラッシュすれすれで29号車を抜き去って、134周を完走しての劇的な優勝を果たしたのだ。
世界最高峰の草レース「ニュル24時間耐久レース」
ニュルブルクリンク24時間レースを初めて観戦して、これまでなんでこんな面白いレースを見に来なかったんだろう、と猛烈に反省した。
世界最高峰の草レースとの呼び名も高いだけあって、ドライバーやチームと観客の距離感が近く、レースが始まるまでの時間もレーシングドライバーにサインを貰ったり、握手を求めたりできて楽しい。
さらに、24時間の間ずっと応援していると、チームとの一体感が増して、応援するチームが勝ったときの嬉しさはひとしおだ。私など、山内選手が嬉し涙を流すのを目にして、もらい泣きしてしまったほど。
5月の最後の週末という、日本人にとっては休みを取りにくい時期ではあるけれど、そのぶん航空券もお手頃だし、レース終了後に滞在を延ばして、コースが公開されるパブリックデーにニュルブルクリンクを走るなんてこともできる。
クルマ好きなら一度は訪れたい聖地での24時間耐久レースだけに、思い切って観戦に行ってみる価値はありそうだ。
[Text:川端由美]
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