【ahead×オートックワン】-ahead 6月号- ターボに代わるハイブリッド SUBZRU XV HYBRID
- 筆者:
- カメラマン:渕本智信
スバルが同ブランド初のハイブリッド車、XVハイブリッドを発表した。発売は初夏の予定で、2012年に発売して好評を得ている小型クロスオーバー、XVのトップグレードに位置づける。
2005年10月、トヨタとスバル(富士重工業)は経営資源の活用や技術の補完などを目的に業務提携契約を結んだ。と同時にトヨタはGMが放出したスバルの株式を取得し、筆頭株主になった。トヨタとスバルが互いの持ち味を生かして作り出したのが、2012年に発売した86とBRZである。
という背景を知れば、スバル初のハイブリッドはトヨタの技術を活用するものと考えがちだ。素直に考えれば、それが経営資源の活用や技術の補完につながるからだ。だが、スバルはハイブリッドシステムを独自に開発した。スバルらしさを表現するためには、独自開発する必要があると判断したためである
では、スバルらしさとは何なのだろう。端的に表現すればそれは、ファン・トゥ・ドライブだ。水平対向エンジンやシンメトリカルAWD(メカが左右対称に配置されている四輪駆動)、ターボといった技術が、スバル独自のファン・トゥ・ドライブを支えてきた。ハイブリッドシステムもその延長線上でまとめたい。スバルはそう考えたのだ。
1997年にトヨタがプリウスに搭載することで世に送り出したハイブリッドシステムは、効率を徹底的に追求したのが特徴だ。その考えは現行プリウスやアクアにも受け継がれている。効率とはすなわち燃費だ。燃費を高めるためにモーターと電池、電気のやりとりを制御するインバーターを組み合わせたシステムを開発している。程度の話をすれば、走りよりも燃費を優先した設計だ.
一方スバルは、燃費よりもファン・トゥ・ドライブを優先した。スバルらしさを維持するためにAWDとの組み合わせにもこだわった。何よりスバルらしいのは、モーターをターボの代わりに使う発想で開発に取り組んだことだ。
ターボもハイブリッドも走行中に捨てているエネルギーを回収し、有効活用する技術であることに変わりはない。ただし、パワーアシスト時のレスポンス面ではモーターに軍配が上がる。スバルはそこに着目した。「XVハイブリッドは低速からモーターのアシストが効果的に作動。ガソリン車より頼もしい加速感を味わうことができる」と開発者は説明する。
2012年に国内で登録された乗用車のうち、ハイブリッド車は30%を占めた。もはや、ハイブリッド車は燃費に特化した特別な存在ではなく、身近にある当たり前のクルマである。であればこそ、燃費の良さだけではない魅力を持たなければ存在感は発揮できない。後発のスバルは強みであるファン・トゥ・ドライブにこだわり、新規性をアピールする。気持ちよく走るのが先。そのうえ燃費がいい。それがスバルのハイブリッドだ。
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