時速200kmで接触寸前の編隊走行も!エンジニアの運転スキルを高める「スバル・ドライビング・アカデミー(SDA)」(1/3)
- 筆者: 山本 シンヤ
- カメラマン:富士重工業株式会社・オートックワン編集部
“愉しさ”や“安心感”をクルマへフィードバックするには「人」の能力が重要
現在の自動車開発は分業制である。「効率」と言う意味では大きなメリットを生んでいるが、組織が細分化されたことでクルマ全体を見ることのできる人が少なくなってしまっているのも事実だ。
いわゆる「自動車メーカーにおける“クルマ離れ”」であり、「ブレーキ屋」「エンジン屋」「制御屋」のような各アイテムのプロは数多く存在するも、「クルマ屋さん」が育ちにくい環境になっている。
スバルは中期経営計画「際立とう2020」を掲げているが、スバルブランドを高めるために様々なプランが計画されている。その一つが、新型インプレッサから投入される次世代スバルの基盤となる「スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)」だ。
理想の走りに向けて、これまでやりたくてもできなかった技術やノウハウを全て盛り込むことで基本性能を大きく引き上げ、スバルの全てのモデルのコンセプトである『安心と愉しさ』を感動レベルにまで引き上げることを目標にしている。
ただ、数値やタイムのような絶対値と違って、「何を安心と感じるのか?」「何を愉しさと感じるのか?」を具体化するためには「人」の能力が重要となってくる。
クルマが家電などと異なるのは、同じ機械でありながらも人間味を感じる部分だろう。
スバル エンジニアたちの運転スキルと評価能力を高める活動「SDA」
そんな鉄の塊に“魂”を吹き込むのが「テストドライバー」という存在。クルマ好きならば、トヨタの成瀬弘さん(故人)、日産の加藤博義さん、ホンダの古橋譲さんと言った名物テストドライバーが有名だが、実はスバルにはテストドライバーは“存在しない”。
「じゃあ、長年スバル車を鍛えてきた辰己英治さんや渋谷真さんは違うの?」
実は、彼らはテストドライバーではなくエンジニアだ。スバルの開発は「乗って(運転スキル)」「感じて(評価能力)」「考えて(理論的思考)」「物理にする(計測技術)」と分業せずに一貫してできる人材が強みだ。これは、スバルの前身となる中島飛行機時代から続く伝統なのだそう。
しかし、そのような人材育成は個々の裁量で行なわれており、スバルとして「育てる」と言う意味ではプログラムがシッカリ構築されていなかったのも事実である。
スバルには「ドライバーの評価能力以上のクルマは作れない」と言う考えがあるが、そんなエンジニアたちの運転スキルと評価能力を高める活動が、2015年9月に創設された「スバル・ドライビング・アカデミー(SDA)」なのである。
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