スバル フォレスターtS 試乗レポート／マリオ高野(4/4)

フロントグリルのチェリーレッドラインは手作業で塗られた入魂パーツ

内外装については、おおむねこれまでのtSのイメージを踏襲したものですが、注目すべきはフロントグリルのチェリーレッドラインです。これは一台ずつ、グリルに溝を掘ってマスキングを施し、それに沿って塗色しているという、非常に手間暇のかかった塗り方がされています。

これは、言われなければ誰も気がつかないことですが、知っていると、フロントマスクを見るたびに「このグリルのチェリーレッドは手作業で丁寧に塗られたのだ……」と悦に浸ることができるでしょう。

STIの歴代コンプリートカーは、乗り味については常に絶賛され続けてきたものの、内外装のスペシャル感はイマイチと評されることが多いのもまた事実。オーナーからは「元々期待してないから」といわれるほどですが、こうした地味な入魂華飾パーツは確実にオーナーの所有満足度を高めるので、どんどん増やしてほしいと願います。

豪華な革や木目を使ったり、有名ブランドのOEMなどで高級をアピールするより、よっぽどスバルらしい贅沢さだと思います。

ちなみに、フォレスターtSは車体上屋のよけいな慣性モーメントを増やさないため、SUVには必須パーツともいえるルーフレールやサンルーフの設定はありません。パワーリアゲートだけは、ギリギリ慣性モーメントや重心高への影響が許せる範囲と言うことで採用されております。

接地感や操舵フィールなど、欧州SUVと比べても遜色のない仕上がり

正直、STIコンプリートカーをガッツリとチェックするには、3時間程度の試乗では深いところまで味わいきれないというのが本音ですが、河口湖周辺にて試乗した印象を簡単にまとめると、「第一印象は期待を微塵も裏切らない甘美さに陶酔できた」という感じです。

路面の追従フィールや接地感の濃密さ、操舵レスポンスの鋭敏さと、リアタイヤから地面に太い杭を打ってるかのようなスタビリティの高さは、万民の期待に応えるものといえるでしょう。どれほど速度が高まってもステアリングに軽く手を添える状態から緊張感が高まらないホンモノの直進性は、カイエンなどの欧州スポーツ多目的車に遜色のないレベルにありました。

まぁ、もはやtSならばこの程度は当たり前といえるので、ある意味特筆ポイントではないかも知れません。 「EyeSight ver.2」も装備されることもあり、1日1000km以上の運転でも飽きたり過度に疲れたりすることはないでしょう。

ブレンボのブレーキは街乗り速度からでも踏力に比例したしっかりとした制動感が得られ、停止寸前での緻密なコントロール性も申し分なし。 制御を変えたパワートレーンは、開発者が意図した通りの自然なトルクアップ感で、3,500rpmあたりの軽快感が増していることを確認。

元々フォレスターは静粛性の高いクルマですが、車体の下からの遮音も良く効いており、高速巡航中は相対的に車体上屋の風きり音が耳についたほど、ロードノイズや駆動系ノイズは奇麗に抑えられています。ただ、リアシートの乗り心地は運転席と助手席ほど甘美ではなく、やや強めの突き上げを感じました。しかし、この操縦性と安定性を思えば十分許容できる範囲でしょう。

奥さんやお子さんには「後ろの席はちょっと堅いかも知れないから」と今のうちに根回ししておけばクレームを回避できるレベルです。 内容の詳細をほとんど知らずに注文を入れた人も、おそらく不安など感じていないと思いますが、その絶大な信頼感を微塵も揺るがすことなく、納車を待つ喜びを味わってほしいと思います。

フォレスターtSのオーダーを入れた皆さんが、うらやましくて仕方ありません！（涙）